【ITツールを最大50万円補助】IT導入補助金とは?申請のポイントを解説

最近では、中小企業を中心として人手不足が問題になっていることから、「生産性の向上」が経営の課題となっています。
そんな中、業務の効率化を図る手段の1つとして考えられるのが、ITツールの導入です。しかし、ITツールの導入には初期費用がかかるため、取り入れることに二の足を踏んでしまいがちです。
そこでこの記事では、ITツールの導入費用を補助してくれる「IT導入補助金」について紹介します。
目次
「IT導入補助金」とは
IT導入補助金とは、2017年度から経済産業省が主体となり進めている、中小企業・小規模事業者の生産性向上のために設けられた補助金制度です。
それぞれの企業の課題やニーズにあったITツールの導入費用を補助することにより、業務の効率化や売上アップにつなげ、中小企業・小規模事業者の経営力の強化を図ることが目的です。
補助金の対象となるのは、POSや在庫管理、顧客管理システム、経理・会計システムなどのITツールや、ホームページの制作などが挙げられます。
なお、補助金として交付される上限額は50万円となります。
IT導入補助金の近況と気になる採択率
IT導入補助金事業が開始された2017年には、約1万5000社の企業がこの制度を利用しています。そのうち6割近くが従業員数10人以下の小規模事業者でした。
ニーズが高かったことを踏まえ、2018年には利用者数を13万5000社と見込み、予算を100億円から500億円に拡充しました。年3回の公募が行われましたが、一次・二次公募実績で、採択率は9割を超える高い水準となっています(三次公募は12月18日締め切り)。
公式サイトで経営診断を行い、その結果をもとにITツールを選定できたり、この事業に登録されたIT導入支援事業者(ITベンダー・サービス会社)が代理申請を行ってくれるなど、申請手続きが比較的簡単な点が魅力です。そのため、2019年の実施についても期待されています。
利用できる事業者
IT導入補助金を利用するには、大きく4つの要件を満たす必要があります。
日本国内で事業を行う中小企業・小規模事業者等であること
具体的には以下の表にあてはまる必要があります。
業種・組織形態 | 資本金 | 従業員(常勤) |
---|---|---|
製造業・建設業・運輸業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業(ソフトウエア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 5000万円 | 100人 |
小売業 | 5000万円 | 50人 |
ゴム製品製造業(自動車・航空機用タイヤ及びチューブ製造業、工業用ベルト製造業を除く) | 3億円 | 900人 |
ソフトウェア業・情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5000万円 | 200人 |
その他の業種(上記以外) | 3億円 | 300人 |
医療法人・社会福祉法人 | − | 100人 |
NPO法人 | その主たる業種に記載の資本金・従業員規模以下のもの |
ITツール導入による生産性の向上を目標とした計画を作成すること
具体的には、3年後の生産性の伸び率が1%以上、4年後には1.5%以上、5年後には2%以上となる計画を作成することが求められています。
「SECURITY ACTION」の「★1つ星」または「★★2つ星」で宣言すること
「SECURITY ACTION」とは独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する、中小企業・小規模事業等自らが情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度です。
IT導入支援事業者を含む第三者に補助金交付申請内容の確認を受けること
補助金の交付申請内容の見込みについて、第三者が総括的な観点で担保する目的で行うものです。
そのほかにも、IT導入支援事業者を通じて、生産性向上に関する情報の報告義務などがあります。
このように、IT導入補助金を受ける際にはIT導入支援事業者の選定が重要になります。なお選定後は、IT導入支援事業者が申請・手続きをサポートしてくれます。
具体的な補助内容
2018年の「IT導入補助金」の補助内容は、以下の表のとおりです。なお、2017年は補助金の上限額は100万円で、補助率は3分の2以下でした。そのため、2019年についても内容は変更になる可能性があります。
対象となる経費 | ソフトウェア、クラウド利用費、導入関連費等 |
---|---|
補助金の対象 | IT導入事業者により、あらかじめIT導入補助金事務局に登録されたITツール |
補助額 | 15〜50万円 |
補助率 | 2分の1以下 |
申請スケジュール (2018年度実績) | 4月20日~6月7日(一次交付申請期間) 6月20日~8月3日(二次交付申請期間) 9月12日~12月18日(三次交付申請期間) |
導入するITツールの要件
補助金を受け取るためには、自社のフロント業務、ミドル業務、バックオフィス業務のうち、2つ以上の業務で効率化・売上アップにつながる機能のあるITツールを導入することが必要です。
- フロント業務/顧客と対面し、注文を受けて売上を伸ばす機能
- ミドル業務/原価・納期・在庫等を管理し、フロント業務を支える機能
- バックオフィス業務/2つの業務を支え、売上とコストから利益を管理する機能
補助対象となるITツールの種類
補助対象となるITツールは以下の3種類です。このうち「ソフトウェア製品・クラウドサービス」の導入は必須で、それに付随するオプション、役務は任意となります。
- ソフトウェア製品・クラウドサービス
ソフトウェア、クラウドサービス、ホームページ制作など - オプション
機能拡張やデータ連携ソフト、HP利用料、アカウントID追加、クラウド年間利用料の追加料金など - 役務
保守・サポート費(最大1年分)、導入設定、導入時のマニュアル作成費、導入研修費、業務コンサルタントへの依頼費用など
ハードウェア購入費などは補助対象外
ハードウェア購入費や、ソフトウェア導入に係るレンタル・リース費用、OS費用、既存のホームページの一部機能強化及びコンテンツの追加等、バナー広告購入費用などは、補助金の対象外となります。
申請の流れ
IT導入補助金の申請の場面では、IT導入補助金事務局、補助事業者(補助金を受ける中小企業など)、IT導入支援事業者の3者でやり取りを行うことで、補助金を受け取る仕組みになっています。
この3者の役割については、以下の図になります。

具体的な申請の流れについては以下の通りです。
(1)経営課題の分析
公式サイトの「経営診断ツール」を利用し、自社の経営課題を把握します。
(2)導入したいITツール・IT導入支援事業者の検討
「経営診断ツール」の結果や「ITツール選定ナビ」などから、自社の課題に即したITツールやIT導入支援事業者を選定します。
IT導入支援事業者は、「IT導入支援事業者検索」から調べられるほか、IT導入支援事業者が出展する「プラスITフェア」でも情報を得ることができます。
(3)IT導入支援事業者に相談
具体的なITツールの導入や事業計画の策定などを、IT導入支援事業者に相談。申請手続きや書類作成のサポートを受けます。
(4)補助金の申し込み
公式サイトで「申請マイページ」を開設し、IT導入支援事業者と協力しながら申請内容を入力します。内容に問題ないことが確認したら、IT導入支援事業者が補助金の代理申請を行います。
(5)交付決定
申請内容について審査が行われ、交付決定となった場合、事務局より「交付決定通知」が通知されます。
(6)ITツールの導入
「交付決定」が通知されたら、ITツールの発注・契約・支払いなどを行います。なお、交付決定を受ける前に契約や支払いを行った分は、補助金を受けとることができないので注意しましょう。
(7)ITツールの導入を報告
事業の完了後、ITツールの発注や納品、支払いをしたことがわかる書類等を提出します。提出はIT導入支援事業者が代理で行います。
(8)補助金を受け取る
報告完了後、補助金額が確定し、補助金が交付されます。
(9)事業実施の成果を報告
事業終了後は一定期間、ITツールを導入してからどれくらい生産性が向上したかなどを事務局に報告。こちらもIT導入支援事業者が行います。
IT導入支援事業者の選び方がポイントに
IT導入補助金は、ITツールの販売元であるIT導入支援事業者が、代理申請を行うことで、補助金が支給されます。申請には、生産性向上のための計画が必須であるため、自社の課題や業務について、IT導入支援事業者が適切に理解している必要があります。そのため、IT導入支援事業者を選ぶ際は、自社の業務への理解が十分か、申請サポートが充実しているかなど、重要なビジネスパートナーを選ぶ気持ちで臨みましょう。
採択率を上げる「加点項目」
交付申請を審査する際には、交付決定へ有利に働く「加点項目」があります。補助金の利用を検討している人は、以下の取り組み、関連事業に当てはまるかチェックしましょう。
- 固定資産税ゼロの措置を講じた自治体に所属
生産性向上特別措置法では、中小企業が生産性向上のために行った設備投資について、市町村の判断で固定資産税を最大3年間ゼロにすることができます。この固定資産税ゼロの自治体に所属していることが要件となります。該当するかは公式サイトで確認することができます。 - 「地域経済牽引事業計画」の承認を得ている
地域未来投資促進法において、事業者が地域の特性を活用し、地域へ経済効果を生み出す事業を行うための計画のことです。過去に「地域経済牽引事業計画」を作成し、都道府県から承認を取得していることが要件です。 - 「地域未来牽引企業」に選定されている
2017年に経済産業省が選定した、地域経済への影響力が大きく、成長性が見込まれる企業のことです。 - 「おもてなし規格認証」を取得している
事業者が消費者に提供する接客サービスなどを評価し、高品質なものについては、認証を行う制度です。認証ランクによらず取得することで審査の加点となります。
おわりに
IT導入補助金は、多くの企業が利用できる、とてもポピュラーで使いやすい補助金です。しかし、補助金の利用には、自社の課題とITツールの導入がどう結びつくかを検討する必要があります。
その結果、場合によっては、ほかの補助金や助成金を利用したほうがいい場合もあります。
これらの制度の利用を考えている人は、中小企業支援や補助金に詳しい税理士に相談してみるとよいでしょう。
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