自己資本比率をわかりやすく解説!計算式や目安を知って会社の安全性を見極めよう

「自己資本比率」は会社の財政基盤が安定しているかどうかを見るための経営指標です。自己資本は返済の必要がない資本のことで、自己資本比率が高いほど会社の資金力が強く財政が安定しているといえます。
そこでこの記事では、自己資本比率の計算方法や適正といわれる目安、自己資本比率を高めるための改善策などについて詳しく解説します。
目次
自己資本比率とは
自己資本比率とは、総資本(自己資本と他人資本の合計額)のうち、自己資本が占める割合のことをいいます。
会社の安全性を見る指標のひとつで、財政基盤が安定しているかどうかを見るための経営指標です。
自己資本と他人資本
貸借対照表(B/S)の右側の貸方を構成する要素には、「自己資本」と「他人資本」があります。
自己資本とは純資産の部に入る、返済の必要がない資本です。一方で他人資本とは負債の部に入る、返済の必要がある資本のことです。

自己資本比率の計算方法
自己資本比率は、自己資本と総資本をもとに以下のように算出します。
自己資本比率 = 自己資本(純資産)÷ 総資本(負債+純資産)× 100
たとえば、総資本が1億円で自己資本が5,000万円の場合は、自己資本比率は「50%(5,000万円 ÷ 1億円 × 100)」となります。
自己資本比率の目安
自己資本比率は高ければ高いほど財政が安定していることを表し、低いほど借入金への依存度が高いことを表します。
自己資本比率が表す数値は、それぞれ以下のように段階的に評価することができます。
自己資本比率「50%以上」
自己資本比率が50%以上の場合は、一般的に優良企業という評価がされます。
中小企業よりも株式発行による資金調達がしやすい上場企業でも、自己資本比率50%以上の企業は半数程度と言われており、60%以上であれば超優良企業と判断することができます。
自己資本比率「20%~49%」
自己資本比率が20%~49%の場合は、標準的な資金力であるといえます。
経済産業省が発表した「令和元年中小企業実態基本調査速報」によると、中小企業の経営指標における自己資本比率は40.92%となっています。自己資本比率が40%以上あれば財務は比較的安定していると考えられ、倒産リスクは低いと判断できるでしょう。
自己資本比率「19%以下」
自己資本比率が19%以下の場合は、資金力が低い状態とみなされます。すぐに経営状態が悪化するとは言い切れないものの、業種や事業内容によっては負債総額が資産総額を上回る「債務超過」のリスクも考えられます。
なお、自己資本比率がマイナスの場合はすでに債務超過の状態にあるため、すべての資産を売却しても負債を返済することはできません。直ちに会社再建を行う必要があるといえます。
ただし、仮に貸借対照表上は自己資本比率がプラスの状態であっても、資産の部に回収不能な売掛金や不良在庫などが含まれる場合は、実際の資産は少なくなります。そのため、実際はこのような価値の無い資産を差し引いて、自己資本比率を計算・評価します。
業界別の平均値
自己資本比率の平均値は業種ごとに大きく異なります。
そのため上記の比率はひとつの目安とし、自社の経営指標を見るときは業界ごとの自己資本比率をベンチマークするとよいでしょう。
経済産業省による「2019年企業活動基本調査速報-平成30年度実績-」では、業種ごとの平均値は以下のようになっています。
- 製造業:51.4%
- 電気、ガス業:23.5%
- 情報通信業:50.7%
- 卸売業:38.3%
- 小売業:42.8%
- クレジットカード業、割賦金融業:10.1%
- 飲食サービス業:45.3%
このように自己資本比率の差が出る理由は、業種によって店舗、工場、倉庫、機械類といった設備投資の要否が異なるからです。また利益率が低い業種は、自己資本比率も低くなりやすい傾向にあります。
そのほかにも、預金者の預金で事業を運営している金融業の場合は、預金を他人資本として扱うので自己資本比率は低くなります。
(参考)身近な企業の自己資本比率
通信業界であれば、NTT(日本電信電話)は39.4%、ソフトバンクは10.2%です。自動車業界であれば、トヨタは39.0%、日産は23.9%です。
そのほか、金融業であるゆうちょ銀行は4.2%、飲食サービス業である串カツ田中ホールディングスは50.2%、 製造販売業であるニトリホールディングスは82.0% 、小売業であるセブン&アイ・ホールディングスは43.4% となっています。
自己資本比率を高めるには
自己資本比率が目標(適正基準)に達していない場合は、自己資本比率を高める必要があると考えられます。
自己資本比率の改善には大きく「自己資本を増やす方法」と「他人資本を減らす方法」があります。
自己資本を増やす
当然ですが、利益を増やし内部留保(利益剰余金)を増やせば自己資本が増加するので、自己資本比率も高くなります。
また、固定費を削減することも利益の増加に繋がるため、自己資本比率の改善になります。固定費には人件費、賃料、水道光熱費、宣伝広告費、保険料など、さまざまな項目がありますので無駄な出費を削減するようにしましょう。
他人資本を減らす
貸借対照表(B/S)の借方の項目である、固定資産や流動資産を見直すことも大切です。
他人資本を減らすためには、たとえば遊休資産の売却、不採算事業からの撤退などがあります。そして不要な資産を売却して得た資金を借入金の返済に充てれば、他人資本を減らすことができます。その結果、自己資本比率は高くなります。
デットエクイティスワップ(DES)で自己資本比率を高める
デットエクイティスワップ(DES)とは負債(デット)と資本(エクイティ)を交換(スワップ)する方法で、「債務の株式化」とも呼ばれます。
一般的には、金融機関への返済が滞った際に、金融機関が取引先を支援する目的で行うことが多く、企業の負債を株式に転換するため、借入金を返済する必要がなくなります。
なお、DESは金融機関からの借入金だけでなく、役員借入金(役員から会社に貸しているお金)に対しても使用できます。負債を減らし資本を増やすことができるので、役員借入金を資本金に振り替えるというのもひとつの手段となります。
決算書(財務諸表)を読み解く経営指標
自己資本比率以外にも、企業の財務の安全性や業務の効率化を分析できる経営指標があります。
ここでは、経営者なら最低限知っておきたい経営指標とその計算方法を紹介します。
流動比率
流動比率とは、短期的な支払能力を分析する際に使用する経営指標です。「流動資産が流動負債をどの程度上回っているのか」を示す指標であり、経営の安全性や資金の流動性を判断できます。
流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100%

流動資産は現金、売掛金などの1年以内に換金可能な資産などのことで、流動負債は買掛金、支払手形、短期借入金といった1年以内に支払期限が訪れる負債のことを指します。
流動比率は一般的に120%以上が望ましいとされ、200%以上で理想的とされています。
固定比率
固定比率とは、長期的な支払能力を分析する際に使用する、財務の安定性を示す経営指標です。「固定資本のうち、どの程度自己資本でまかなわれているのか」を表す指標であり、経営の長期的な安全性を判断できます。
固定比率 = 固定資産 ÷ 自己資本 × 100

固定資産とは、土地、建物、機械設備、工具備品といった1年超にわたって現金化されず、長期的に使用される資産のことです。
固定比率は流動資産と違い、その数値が低ければ「固定資産よりも自己資本の方が多い」ということを表します。一般的に固定比率は100%を下回っていれば、「長期的に経営が安定している」といえます。
ROE(自己資本利益率)
ROE(自己資本利益率)とは、事業の効率性を分析する際に用いる指標です。「自己資本を活用して、どれだけ利益を生み出したのか」を表すので、この指標からは企業の収益性などを判断できます。
ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100

一般的にROEが10%以上であれば優良企業だといわれています。
ただし大規模な設備投資が必要な製造業などの場合は、自己資本が大きくなるためROEは低くなります。それとは逆に、設備投資が最小限で済むIT関連などの事業は高くなる傾向があります。
なお、自己資本比率とROEは相反する関係にあり、自己資本が増えれば自己資本比率は高まりますが、ROEは低くなります。
おわりに
自己資本比率は会社の財務基盤が安定しているかを見るために欠かせない経営指数であり、適正基準は企業の経営環境や業種などによって異なります。
会社の経営分析を行う際には、同業他社と比較するほか、それ以外の経営指標や資金繰りなどもあわせて見る必要があります。
自社の財務状況を詳しく分析したい、そもそも決算書の読み方が良くわからないという場合は、経理・決算に強い税理士や顧問税理士に相談することをおすすめします。
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