事業計画書の書き方を伝授!審査に通るためのポイントも[サンプル付き]

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融資につながる「事業計画書(創業計画書)」の書き方【サンプル付き】

監修: 井上 大輔 税理士

「事業計画書」とは

事業計画書とは、経営者の頭の中にあるビジョンを誰にでもわかるようにまとめた書面のことで、融資を受けるために重要な「プレゼンテーション資料」といったイメージになります。

また、立ち上げた事業を中長期的に安定して経営していくためには、綿密な計画性がとても重要です。そこで事業計画書に将来的なビジョンをアウトプットすることで、事業を成功に導くセルフチェックとしての効果も期待できます。

事業資金の融資を受ける際にも事業計画書を作成し、経営者がどのようなビジョンを持って今後の事業を計画しているのかについて、金融機関や出資者に対して明確に示す必要があります。

書き方とポイント

事業計画書には決められた書式はありませんが、基本的な項目としては以下の通りです。

  • 経営者の経歴
  • 会社概要、組織体制
  • 業界動向
  • 事業内容や今後の展望
  • 取扱商品・サービス
  • 収支計画
  • 問題点とその対策

これらの項目を通じて、経営者の返済能力や将来性を示すことになります。

日本政策金融公庫の「創業計画書」

創業計画書

事業計画書を作成する上で、ひとつの目安となるのが、日本政策金融公庫の「創業計画書」です。ここでは、日本政策金融公庫の新創業融資制度に申し込む際に必要となる創業計画書の書式に沿って、内容とポイントについて解説していきたいと思います。

創業の動機

創業の動機

創業に至った理由や目的などについて簡潔に記載します。動機のみで融資の可否を判断されるわけではありませんが、明確にすることで自分自身の理念や熱意について、相手に対して伝えることができるでしょう。

経営者の略歴等

経営者の略歴等

経営者自身の経歴も融資実行の判断材料となり得ます。これから開業する事業の目的にふさわしい職務経験や関連する事業の経験があるか、経営者としてのスキルがあるかなど、事業が今後成功していけるかどうかを判断する上で重要な要素となるのです。

Point1:略歴は仕事内容なども細かく書く

事業計画書は履歴書ではなく、金融機関に対して事業の成功や将来性をアピールするためのものなので、略歴についても単に過去の勤務先などを記載するだけでは不十分です。

略歴には過去の勤務先と、担当業務やその時の役職、保有している資格や技能などについて、誰が見ても理解できるよう丁寧に書きましょう。転職経験者であれば、職務経歴書などを参考にして作成すると良いでしょう。

過去の経験や保有している資格、技能が、これから始める事業に活かせそうであれば、融資審査が通りやすくなります。たとえば、不動産会社を開業するにあたり、経営者自身が不動産会社での勤務経験があったり、必要資格である宅地建物取引士を保持していたりするなどのアピールポイントがあれば記載しましょう。

Point2:過去の事業経験

過去にも事業を立ち上げた経験がある場合は、その時の事業内容と現在の状況について記載します。すでにその事業は辞めていたとしても、必ずしもマイナスイメージになるとは限りません。

一度事業に失敗していたとしても、失敗から学んだことを具体的にアピールできれば、失敗を経験していない経営者よりも信用されやすくなる場合もあるでしょう。

取扱商品・サービス

取扱商品・サービス

取り扱う予定の商品やサービス内容について具体的に記載します。事業計画書はその業界の人がチェックするとは限らないため、できる限り専門用語は避け、だれが見てもわかるように記載しましょう。

Point1:特徴のアピール

商品やサービスが同業他社と比較してどのような特徴があるのか、どのようなメリットがあるのかなど、できる限り具体的に示すことが重要です。特徴がはっきりとアピールができれば、他社との差別化につながり印象がよくなります。

Point2:顧客のニーズを捉えているのか

商品やサービスに対する顧客のニーズについて、具体的に記載します。説得力を持たせるためには、法令等の改正による市場ニーズの変化を説明したり、政府統計局の統計データなどを引用して、市場環境のニーズ変化などの主張を裏付けたりすることも有効です。

取引先・取引関係等

取引先・取引関係等

既存の取引先や取引予定先の情報について具体的に記載します。創業計画書作成時にすでに事業を開始しているのであれば、実際に取引があることを証明できる注文書や契約書、請求書控えなどを添付するとよいでしょう。

Point:入出金サイクルが重要

取引先に商品やサービスを提供してから、実際に費用が支払われるまでのサイクルは、会社のキャッシュフローの安定性を判断する上で重要な要素となります。

「末日〆 翌月末支払」は、毎月末日までの取引について、翌月末までに支払う条件であることを表します。

たとえば従業員などの人件費について、締め日・支払日から回収サイトを考慮し、無理なく支払いが行えるかどうかシミュレーションしてみましょう。

従業員数

従業員数

現時点での従業員数について記載します。新創業融資制度については、事業を行う上で「雇用の創出」という前提条件があるため、たとえ自分ひとりで事業を始める場合でも、将来的にどの程度雇用する可能性があるのか、現時点での見解を示唆しておくとよいでしょう。

借入の状況

借入の状況

経営者に借り入れがある場合は、私的なものも含めてすべて記載する必要があります。

住宅ローンやマイカーローン、教育ローンなどについては、さほど事業融資の審査に大きく影響はしませんが、カードローンやキャッシングで高額な借り入れをしている場合については、事業資金の融資枠が制限される可能性もあります。

Point:借入状況は隠してもばれる

借入状況については、あまり事業計画書には書きたくない内容ではあるものの、借入があることを隠しても必ずばれます。

金融機関や日本政策金融公庫は、個人信用情報機関に加盟しており、借入を希望する個人のローン情報(ローンの利用状況や過去の延滞など)について照会することができるので、ローンがあることを隠すと虚偽であるとすぐにばれてしまうのです。

必要な資金と調達方法

必要な資金と調達方法

開業に必要な資金の内訳と、調達方法について詳しく記載します。事業立ち上げ当初の資金繰りをシミュレーションする上で、最も重要な部分であり、融資をする側も重点的に見る項目ですので、できる限り詳細に記載しましょう。

また、これらを記載した結果、左右の合計欄は一致しなくてはならない点も注意が必要です。

Point1:設備資金と運転資金

事業を立ち上げる際に必要となる資金は、大きく分けると店舗やオフィスなどを開業するために必要な「設備資金」と、商品の仕入れや当面の経費に充てるための「運転資金」があります。

設備資金については、内装業者や不動産業者、オフィス機器メーカーなどの見積書も添付して、できる限り正確な金額がわかるようにするとよいでしょう。

運転資金については、開業当初の資金繰りに余裕を持たせるために、一般的には最低でも3か月分くらいの運転資金を準備する必要があります。ただし、何か月分が必要かは、「4.取引先・取引関係等」に記載の入出金サイクルによっても変わってくることもあります。

従業員の給与や賃料、仕入れ代金など使途を細かく記載することで、経営者の見通しが甘くないことを融資担当者に理解してもらいましょう。

Point2:調達方法

最低でも必要資金全体の1割以上の自己資金が必要とされており、自己資金の比率が高ければ高いほど、融資も受けやすい傾向にあり、一般的には3割以上はあることが望まれます。

また、身内などから資金を借り入れる場合については、自己資金ではなく身内から融資を受ける旨と、具体的な返済方法などについても記載する必要があります。

事業の見通し

事業の見通し

創業当初から事業が軌道に乗るまでの具体的な見通しについて記載します。売上高、売上原価、経費を実際にシミュレーションし、どれくらいの利益が見込めるのか具体的な根拠を示せるようにしましょう。

たとえば、小売店であれば「客単価 × 客数 × 営業日数」など業種に合わせて具体的な計算式も示した上で、原価率や利益額を求めます。

Point1:支払利息は経費に参入

借入をした場合に発生する支払利息については、「借入額 × 年利率 ÷ 12か月」の計算式によって、経費として計上して正確な利益額を計算することが大切です。支払利息を差し引いてもキャッシュフローが問題なく回るようシミュレーションしましょう。

Point2:損益計算書を添付する

創業計画書には、売上高や原価、経費などごく基本的なことしか記載できないため、創業当初のキャッシュフローがわかるよう、向こう1年間の損益計算書(毎月の利益をシミュレーションしたもの)を別途添付するとよいでしょう。

特に、繁忙期や閑散期など時期によって売上が変動する可能性がある業種については、そのあたりも踏まえて見通しを立てましょう。

事業計画書のテンプレート

日本政策金融公庫の創業計画書のほかにも、金融機関などで事業計画書のテンプレートを用意していますが、基本的にはどれを使用しても問題はありません。

融資制度の一例

事業資金の融資を受ける場合、どのような選択肢があるのでしょうか。ここでは、利用できる制度や資金調達方法について解説します。

新創業融資制度

政府系金融機関である、日本政策金融公庫が行っている中小企業向け融資制度で、担保や保証人が原則不要で、信用保証協会の保証も原則不要である点が特長です。

要件・事業開始時、又は、事業開始して2期未満
・自己資金が1割以上あること
・以下のいずれかに該当すること
1.雇用の創出を伴う事業を始める方
2.技術やサービス等に工夫を加え多様なニーズに対応する事業を始める方
3.現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方で、次のいずれかに該当する方
 (ア)現在の企業に継続して6年以上お勤めの方
 (イ)現在の企業と同じ業種に通算して6年以上お勤めの方
4.大学等で修得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上お勤めの方で、その職種と密接に関連した業種の事業を始める方
5.産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援事業を受けて事業を始める方
6.地域創業促進支援事業による支援を受けて事業を始める方
7.公庫が参加する地域の創業支援ネットワークから支援を受けて事業を始める方
8.民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方
9.既に事業を始めている場合は、事業開始時に(1)~(8)のいずれかに該当した方
利率(年利)2.26〜2.85%(2018年12月12日時点)
※担保や保証人の提供で、金利低減も可能
融資限度額3,000万円(うち運転資金1,500万円)

東京都の他にも、都道府県・市区町村などでも独自に制度を設けている自治体もあるので、お住まいの自治体・本店所在地の自治体のHPなどをチェックしてみましょう。

制度融資

自治体が中小企業の資金調達を支援するために、信用保証協会や金融機関と連携して設けている融資制度で、自治体が保証料や金利の一部を負担することで、創業して間もない会社でも融資が受けやすくしています。

制度融資の具体的な内容については、提供している自治体によって違いますが、ここでは東京都の制度融資を例に要件などをまとめてみました。

要件1ヶ月以内に個人、または2ヶ月以内に法人設立をして、都内で新たに開業することを計画している人
利率
(融資期間7年超10年未満で固定金利の場合)
責任共有制度の対象:年2.5%以内
責任共有制度の対象外:年2.0%以内
融資限度額3,500万円(ただし自己資金+2,000万円が上限)

融資以外の資金調達方法

融資以外の資金調達方法として、補助金や助成金、クラウドファンディング、ベンチャーキャピタルといった手段があります。

補助金・助成金

補助金・助成金は、国や地方公共団体などが事業者に対して、返済が不要なお金を支給する制度です。誰でも受給できるわけではなく、「申請に必要な要件を満たすこと」や「審査に通ること」が必要になります。

補助金・助成金は、制度ごとに受給要件などが異なるため、受給可能なものがないかチェックしておくとよいでしょう。

ただしいずれの場合も、基本的には費用を支出した後のあと払いとなるため、融資のように事前に資金が調達できるわけではありません。また、受給が確定した段階で雑収入として計上する必要があり、個人事業主であれば所得税、法人であれば法人税の課税対象となります。

クラウドファンディング

インターネットを活用して不特定多数の人から資金を集めるクラウドファンディングという方法もあります。クラウドファンディングのサイトに、自身のアイディアやプロジェクト、事業内容などを記載して出資を募ります。

クラウドファンディングには、投資に対して配当を割り当てる投資型と、寄付やサービスを購入する非投資型があります。

会社の創業に関わらず、1つのプロジェクトやイベントに対しても比較的簡単に資金調達できる点が魅力的ですが、目標金額に達しなければ不成立となるという不確定な要素もあります。

ベンチャーキャピタル

将来的に上場を目指すのであれば、ベンチャーキャピタルを利用するという選択肢もあります。ベンチャーキャピタルとは、上場を目的としたベンチャー企業に対して投資をするファンドのことで、将来的に上場した後の株式の売却益を目的とした投資です。

あくまで融資ではなく出資なので、返済をする必要はありませんが、出資者が株式を保有することになるため、会社の意思決定にも一定の影響力を持つことになり、場合によってはベンチャーキャピタルから役員を送り込まれることもあります。

ベンチャーキャピタルから出資を受けるためには、事業の将来性やビジネスモデルの重要性など、損益計算書の数字以外の部分も審査時に重要視される点が特徴です。

おわりに

事業資金を金融機関などから調達するためには、相手を納得させられるだけの「事業計画書」が必要不可欠です。事業計画書は一定の記載事項や書式がありますが、ただ項目に当てはめて形式的に作成しても、説得力はありません。

また、事業計画書を初めて作成することは決して簡単ではありませんが、税理士などの専門家に丸投げするのではなく、あくまで経営者自身が主体となって相談しながら作成していく必要があります。事業開始後の税務顧問の依頼も視野に入れて、資金調達に強い税理士にアドバイスを受けるとよいでしょう。

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