小規模事業者持続化補助金とは?採択率アップや補助内容のポイントを解説

新しい販路の開拓をしたり、Webマーケティングに取り組んでみたくても、特に中小企業の場合は、予算の関係で二の足を踏んでしまいがちです。そんなときに検討したいのが、販路開拓や業務効率化に取り組む際に補助が受けられる「小規模事業者持続化補助金」という制度です。
平成30年度分の詳細は現時点で未定ですが、今年も募集は想定されています。
目次
小規模事業者持続化補助金とは
「小規模事業者持続化補助金」とは、小規模事業者の事業継続と発展、そして経営の活性化を図ることを目的とした補助金制度です。
小規模事業者が商工会議所・商工会のサポートを受けて経営計画を作成し、その計画に沿って取り組む事業に関して、補助金が支給されるというしくみになっています。実施主体は日本商工会議所と全国商工会連合会となっています。
平成29年度の公募要領には「常時使用する従業員数が5人以下の小企業者が全体の5割以上となるよう優先的に採択する」と記載されているなど、規模の小さな企業や個人事業主へのバックアップを優先する制度となっています。
2019年分については「ものづくり補助金」「IT導入補助金」と一緒になった「中小企業生産性革命推進事業」の1つに位置づけられる形で、平成30年度第2次補正予算に組み込まれています。
平成30年度分の募集について
平成29年度分は2018年3月9日から5月18日までの期間で募集が行われました。平成30年度分については、まだ応募要領は発表されていませんが、平成25年度から毎年実施されている制度であること、すでに平成30年度第2次補正予算に組まれていることが経済産業省から発表されていますので、例年どおりであれば2019年3月以降に公募が行われる可能性が高いと考えられます。
※最新情報は日本商工会議所・全国商工会連合会のホームページで確認しましょう
対象となる人
ここからは平成29年度の募集要項について見ていきます。
まず、小規模事業者持続化補助金の対象となるのは、以下の条件を満たす日本国内の小規模事業者となります。
- 常時使用する従業員数が20名以下の事業者(卸売業、小売業、宿泊業・娯楽業以外のサービス業は5名以下)
具体的には以下の表のとおりです。なお、常時使用する従業員数には、会社役員、個人事業主本人、雇用期間や所定労働時間の短いパート労働者などは含まれません。
業種 | 常時使用する従業員数 |
---|---|
卸売業・小売業 | 5人以下 |
サービス業(宿泊業・娯楽業以外) | 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
製造業その他 | 20人以下 |
また、補助対象となるのは、株式会社や合名会社、個人事業主などです。一般社団法人や公益社団法人、NPO法人などは対象外となっています。
補助対象となりうる者 | 補助対象にならない者 |
---|---|
・会社および会社に準ずる営利法人 (株式会社、合名会社、合資会社、合同会社、特例有限会社、企業組合、協業組合) ・個人事業主 | ・医師、歯科医師 ・助産師 ・組合(企業組合、協業組合を除く) ・一般社団法人、公益社団法人 ・一般財団法人、公益財団法人 ・医療法人 ・宗教法人 ・NPO法人 ・学校法人 ・農事組合法人 ・社会福祉法人 ・申請時点で事業を行っていない創業予定者 ・任意団体 等 |
- 商工会議所、商工会の管轄地域内で事業を営んでいること
商工会議所の管轄地区で事業を営んでいる場合は日本商工会議所に、商工会管轄地区で事業を営んでいる場合は全国商工会連合会に応募することが可能です。
どちらの場合も、商工会議所・商工会の会員、非会員を問わず応募が可能です。なお、申請の時点で事業を行なっていない人は対象外となっています。
対象となる事業
補助金の対象となるのは、販路開拓や業務効率化(生産性向上)のための取り組みです。例えば、新たに販路を開拓するためのホームページ作成なども対象になります。いずれの場合も商工会議所・商工会の助言や指導などの支援を受けて、事業を実施することが必要になります。
販路開拓
小規模事業者の地道な販路開拓や売上拡大の取り組みで、概ね1年以内に売上につながることが見込まれる事業活動が対象となります。なお、日本国内に限らず海外市場の販路開拓も含まれます。
(例)
- 新たな販促用チラシの作成、送付
- ネット販売システムの構築
- 販路開拓のためのホームページ作成
- 国内外の展示会、見本市への出展、商談会への参加
- ブランディングの専門家から新商品開発に向けた指導・助言
業務効率化
販路開拓などの取り組みとあわせて、「サービス提供などプロセスの改善」および「IT利活用」による業務効率化(生産性向上)の取り組みを行う場合に、補助の対象となります。
(例)
- 従業員の作業動線の確保や整理スペースの導入のための店舗改装
- 業務改善の専門家からの指導、助言による長時間労働の削減
- 新たに経理・会計、労務管理、POS等のソフトウェアを導入し、業務を効率化する
補助率・補助金額

補助金の対象となる具体的な経費は以下のとおりです。また、補助率は対象経費の3分の2以内まで、補助額の上限額は原則50万円となっています。
対象となる経費 | 1.機械装置等費 2.広報費 3.展示会等出展費 4.旅費 5.開発費 6.資料購入費 7.雑役務費 8.借料 9.専門家謝金 10.専門家旅費 11.車両購入費 (買物弱者対策事業の場合に限る) 12.設備処分費(補助対象経費総額の2分の1が上限) 13.委託費 14.外注費 ※以下の条件をすべて満たすものが補助対象経費となります。 ・使用目的が本事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費 ・交付決定日以降に発生し対象期間中に支払いが完了した経費 ・証拠資料等によって支払金額が確認できる経費 |
---|---|
補助率 | 補助対象経費の3分の2以内 |
補助額 | 上限額50万円 75万円以上の補助対象となる事業費に対し、50万円を補助 ※ただし以下の取り組みは、補助上限額が100万円となります。 ・従業員の賃金を引き上げる取り組み ・買物弱者対策に取り組む事業 ・海外展開に取り組む事業 上記のいずれか1つを選択。150万円以上の補助対象となる事業費に対し、100万円を補助 |
申請スケジュール (平成29年度実績) | 2018年3月9日〜5月18日締切日 |
申請までの流れ
申請までの流れは、大きく次のとおりです。
(1)経営計画書・補助事業計画書の作成
「経営計画書」「補助事業計画書」を作成します。さらに、採択審査時に事業承継計画加点の適用を希望する場合は、「事業承継計画書」もあわせて作成します。「事業承継計画書」は、採択審査の際、経営計画書の一部として採点評価の対象となります。
(2)書類の作成・交付依頼
経営計画書、補助事業計画書の写しなどを地域の商工会議所・商工会窓口に提出し、「事業支援計画書」の作成・交付を依頼します。代表者の年齢が満60歳以上の場合は「事業承継診断表」の作成・交付依頼も必要となります。代表者の生年月日を確認できる公的書類(写しでも可)も提示します。
(3)書類受け取り
商工会議所・商工会から交付された事業支援計画書・事業承継診断票を受け取ります。
(4)必要提出物の提出
締切までに必要な提出物を補助金事務局に郵送などで提出します。持参は不可ですので注意しましょう。
必要提出物
応募者全員に共通する書類は、以下になります。
- 小規模事業者持続化補助金事業に係る申請書
- 経営計画書
- 補助事業計画書
- 小規模事業者持続化補助金交付申請書
- 代表者の生年月日が確認できる公的書類(写し)
- 事業支援計画書
- 事業承継診断票
なお、1〜4の書類フォーマットは、ホームページよりダウンロードが可能です。6と7は、商工会議所が作成・交付した書類を添付します。そのほか補助を申請する事業内容や、代表者の年齢が満60歳以上の場合など、条件によって追加で書類が必要となります。
採択審査のポイント

審査に関しては、提出書類を元に「基礎審査」と「加点審査」が行われ、採択が決定します。
基礎審査では、以下の項目を満たしているかが審査されます。
- 必要な提出資料がすべて提出されているか
- 「補助対象者」と「補助対象事業」の要件に合致するか
- 補助事業を遂行するために必要な能力を有するか
- 小規模事業者が主体的に活動し、その技術やノウハウ等を基にした取り組みであるか
加点審査では、経営計画書・補助事業計画書をもとに、以下の項目にしたがって加点審査を行い、総合評価が高いものから順に採択されます。
- 自社の経営状況分析が妥当か
自社の製品・サービスや自社の強みを適切に把握できているかを審査します。 - 経営方針・目標と今後のプランは適切か
自社の強みを踏まえていたり、対象とするマーケットの特性を踏まえたものになっているかなどを審査します。 - 補助事業計画は有効か
計画は具体的で実現性が高いものか、地道な販路開拓を目指すものとして必要かつ有効なものか、小規模事業者ならではの創意工夫があるか、ITを有効活用する取り組みかといったことを審査します。 - 積算は透明・適切か
事業費の計上・積算が正確・明確で、事業実施に必要なものとなっているかを審査します。
おわりに
小規模事業者持続化補助金を利用することで、小規模事業者が今まで取り組みたくてもできなかったマーケティング施策を行うことができたり、業務の効率化を図ることで、販売促進や事業拡大の助けとなることが期待できます。
なお、採択審査では、ヒアリングなどは行われず、書類のみによる審査となります。そのため、提出書類の作成がなにより重要になってきます。正確で妥当な経費の計上が必要になるほか、採択されたあとは、所定の期間までに実績報告書や支出内容のわかる関係書類等の提出が必要になります。
申請の書類作成や採択後の手続きなども含め、必要に応じて資金調達に強い税理士に相談してみるといいでしょう。
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