給与取得者の不動産賃貸借経営(副業)における経費処理の考え方について
■前提:現在給与取得者で現住居から片道飛行機で2時間弱の実家の近くに
不動産を購入し、賃貸経営を始めました。「物件管理のために要した交通費」
を経費処理し確定申告しようと、念のため税務署に問い合わせたところ、物件
が実家の近くにあり、私的帰省の可能性があることから、経費処理は全額認め
られないが、客観的な記録があれば、私的時間を考慮(除外)し、家事按分で
きる部分は経費処理できる可能性はある(自主申告とはそういうもの)という
回答でした。
■お尋ね:私的時間、事業的時間算定について、基本ルールはありますか?
物件が実家の近くにあるかないかで損金処理可能額が変わるとのことでしたが、
基準が曖昧で釈然としません。客観性のある記録としては何をどのようにすれ
ばよいのか項目事例などがあればご教示いただけないでしょうか。
仮に、物件管理のための作業時間が6時間、分母を一般(サラリーマン)的に
8hとして、これを分母に割合を算出(6h/8h)すると、事業割合75%、
交通費1万円だとすると、経費算入額は7500円とすればよいでしょうか。
24hを分母にするのも違うように思います。ご教示よろしくお願いいたします。
税理士の回答
「私的時間、事業的時間算定についての基本的ルールはあるのか」とのお尋ねですが、これはありません。「客観性のある記録」というのも、実際には難しかろうと思います。
要するにこのポイントは、税務署が抱いているであろう「わざわざ大金を投じてまでして飛行機で賃貸管理に出向く必要があるとは思えない。本来の目的は私的な帰省ではないのか」という疑問にどう対処するか、という問題であろうと思います。
確かに物件管理のための作業時間が6時間であれば、事業割合75%というやり方でいいと思います(分母を24時間にする必要はありません)。しかし「物件管理に本当に6時間を要するのか」という疑問があります。ですから管理業務の必要性やその状況等を国税側が納得できるように説明できるかどうかです。
なお私見ですが、家主自身が賃貸管理に絶対に出向く必要があるという特殊事情があるのであれば、その時間がさして多くなくとも、大半の割合を経費に算入してもいいように思います。用事が済んだ後に、ついでに実家に顔を出すというのは、ある意味当然だからです。
結論的には、わざわざ飛行機で出向く必要性や、その業務に要する量(時間)と質(重要性)しだいであると思います。これが納得できるように説明できるのであれば、そのほとんどを経費に算入していいのではないかと考えます。
森田先生
ご回答ありがとうございました。お礼のご連絡が遅くなりまして申し訳ありませんでした。結論的にとして、ご教示いただいた内容、その前提となる論点について理解いたしました。中でも、『税務署が抱いているであろう「わざわざ大金を投じてまでして飛行機で賃貸管理に出向く必要があるとは思えない。本来の目的は私的な帰省ではないのか」』という点につきましては、税務署は、いわゆる「人を見たらドロボー」の感性なのだということも知ることができました。都会で働く者にとって田舎の実家は、終の棲家の選択肢の一つではないかと思います。その近辺に管理物件を所有することは、父母知人等の有無にかかわらず、逆に、そうした人々がいるからこそ管理物件の経済的有利性を引き出すことができると考えます。確かに「大枚をはたき」ますが、すべて税金がついて回りますし、世の中の経済に負の影響を与えているとも思えません。とどのつまり「税務署の疑問」は「持たざる者の僻み」的な感性と感じます(人をドロボーと思う感性よりも矮小かもしれません)。
愚痴っぽくなり申し訳ありません。これまで、源泉徴収だけの呑気なサラリーマンで、税務署とは縁遠かったのですが、先生にご教示いただいたおかげで、税務署に対する、物件管理に関する心構えがわかったような気がします。矮小性への反論ではなく事実の客観的な証明が重要であることを肝に銘じその時に向け準備したいと思います。ありがとうございました。
本投稿は、2017年05月26日 17時20分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。