タイでノマドビザ(DTVビザ)で個人事業主として業務委託する場合の税務
タイに駐在するパートナーに帯同し移住することとなりました。
今の仕事を続けたいため、現在所属する会社の業務を、個人事業主として受託します。
質問が多くて恐縮ですが、答えられるところだけでもご教示頂けますと幸いです。
①この場合は、タイ国内源泉所得となりますか?
②DTVビザの場合、タイに口座を作れないのですが、日本の口座に売上が入る場合、日本側で居住者と判定される可能性はありますか?
③日本の口座に売上が入る場合、タイはどのように所得を把握するのでしょうか?
④原則タイ源泉所得の認識ですが、PITが40(2)と判定されるか、40(8)と判定されるかはどう決まりますか?
⑤タイのVATは日本への役務提供であれば0%ですか?
⑥経費を控除にすることはできるのでしょうか?
⑦ タイ源泉所得としてPITで課税された報酬を、後日、日本口座からタイへ送金した場合、二重に課税されることはありますか?
⑧ 出国後、日本で納税や確定申告が必要な場合は、タイからオンライン(e-Tax)で行うのでしょうか?納税管理人の選任は必要でしょうか?
税理士の回答
ご質問の件ですが、以下回答させて頂きます。
① タイ国内源泉所得になるか
タイ国内源泉所得となります。
売上(報酬)の支払地が日本の口座であっても、実際に労働・役務を提供する場所(勤務地)がタイ国内であるため、タイの税法上はタイ国内源泉所得と判定され、タイでの個人所得税(PIT)の課税対象となります。
② 日本側での居住者判定リスク
口座の場所や売上の入金先だけで居住者と判定されることはありません。
日本の税法上、1年以上の予定で海外に移住し、生活の本拠がタイに移る場合は原則として日本の「非居住者」となります。
ただし、日本への短期滞在を繰り返すなど、生活の実態が日本に残っているとみなされる場合は居住者と判定されるリスクがございます。
③ タイ当局による所得の把握方法
日本の口座情報をタイ税務当局がリアルタイムで把握することは困難です。
しかし、CRS(共通報告基準)に基づく日タイ間の金融口座情報の自動交換や、DTVビザの更新・就労実態の審査、タイ国内での生活費の出所(送金やカード利用)の調査などを通じて把握されるリスクはございます。
基本的には自主申告(確定申告)の義務が生じます。
④ 40(2)と40(8)の判定基準
元所属企業の1社のみから専属的に受託し、実質的に時間拘束や指揮命令を受ける場合は40(2)(役務提供報酬)とみなされやすくなります。
一方、独立した事業者として設備を持ち、自己の責任とリスクで複数の顧客から幅広く受注する実態があれば40(8)(事業所得)に該当する可能性が高いかと存じます。
⑤ 日本への役務提供に対するVAT
タイ国内から提供する役務の成果が、日本国内で完全に消費される「役務の輸出」の要件を満たす場合は、タイのVAT(付加価値税)は0%の対象となります。
⑥ 経費控除の可否
所得区分によります。
40(2)の場合は上限のある標準控除(最大10万バーツ等)しか認められません。
40(8)であれば、原則として実際の必要経費(実費)または業種ごとの概算控除を選択して差し引くことが可能です。
⑦ タイへの送金時の二重課税
すでにタイ国内源泉所得としてタイで適切にPITが課税(申告)されているのであれば、その報酬の残り(原資)を日本の口座からタイへ送金した際に、同一の所得に対して二重に課税されることはありません。
⑧ 日本の確定申告と納税管理人の選任
非居住者となり、かつ役務の提供地がタイであれば、その報酬は日本の国内源泉所得にあたらないため、原則として日本での確定申告は不要です。
ただし、日本国内にある不動産の賃貸収入など他の理由で申告が必要な場合は、出国前に「納税管理人」を選任し、管理人を通じてオンライン(e-Tax等)で申告・納税を行う必要がございます。
回答は以上となります。
ご参考になりましたら幸いです。
ご回答いただき誠にありがとうございます。
非常に明快な回答で解決いたしました。
(他の税理士さんには難しい話なのでと初回の有料相談で断られた内容でしたので、大変助かりました。)
改めてありがとうございます。
追加で質問よろしいでしょうか?
・「独立した事業者として設備を持ち、自己の責任とリスクで複数の顧客から幅広く受注する実態があれば40(8)(事業所得)に該当する可能性が高いかと存じます。」
この設備とはどんなものであれば認められる可能性が高いでしょうか?業種はコンサルティングのため、あるとするならば仕事部屋を作って環境を整える、くらいしか想像ができないため質問いたしました。
更に追加で失礼いたします。
⑤-2 日本への役務提供に対するVAT
コンサルティングのような無形サービスについて、「タイ国内で提供されたサービスが日本ですべて消費された」と判断する際、実務上は、契約相手が日本法人であること、成果物の納品先が日本法人であること、成果物が日本法人の日本側業務で利用されること、契約書・請求書上に国外利用の旨を記載すること等で足りますでしょうか?
また、VAT 0%を主張するために、契約書・請求書・納品物・メール等で残すべき証憑があれば教えてください。
追加のご質問の件ですが、以下回答させて頂きます。
1. 40(8)の設備要件について
コンサル業における「自宅の仕事部屋とPC」といった設備では、タイ実務上40(8)と認められる可能性は低く、個人の頭脳や労働力に依存する40(2)(役務提供報酬)と判定されるのが一般的かと存じます。
40(8)を主張するには、独立した商業オフィスの賃貸や従業員の雇用、事業用機材の保有といった「組織的・客観的な資本投下の実態」が求められるのが一般的です。
そのため、標準控除の上限(10万バーツ)がある40(2)を前提とした税額試算を推奨致します。
2. VAT 0%(役務の輸出)の立証と注意点
ご認識の通りで問題ございません。
税務調査に備え、以下の証憑を揃えることが重要かと存じます。
●契約書: 「成果物は日本国内でのみ消費される」旨の明記
●請求書: 「Export of Service」等の記載
●銀行明細: 日本からの外貨入金記録
●納品記録: 成果物や提出時のメール履歴
【補足】 タイのVATは年間売上180万バーツ超で登録義務が生じます。
DTVビザのまま個人でVAT事業者登録を行うのは制度上困難(通常は就労ビザとワークパミットが必要)かと存じます。
そのため、売上が基準を超える見込みの場合は、個人事業主として直接受託するのではなく、ご自身が代表等を務める日本の法人で業務を受託し、ご自身はその「日本法人から給与(役員報酬等)を受け取る」という契約・資金フローに変更するか、雇用契約に基づく給与所得(PIT 40(1))であれば、金額にかかわらずVATの対象外となるため、そういったスキームの再検討が必要かと存じます。
回答は以上となります。
ご参考になりましたら幸いです。
ご丁寧に誤解とあるいただき誠にありがとうございます。
大変明確になりました。いただいたご回答をもとに日本法人の立ち上げまたは年間180万バーツ以下に売上を抑えるよう検討いたします。
どうぞよろしくお願いいたします。
本投稿は、2026年06月26日 15時03分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。







