「受動喫煙防止対策助成金」とは?申請できる対象者や手続方法を解説

受動喫煙による健康への害が叫ばれ、分煙の風潮が強くなってきました。さらに、健康増進法の改正により、2020年4月からは分煙の対策がない場合、屋内での喫煙が原則禁止となります。飲食店をはじめ、宿泊業などでも分煙の対策を取らなければいけなくなりました。
しかし、こうした分煙の設備には、設置にも管理にも多くの資金が必要です。予算の関係から分煙を諦め、全面禁煙にせざるを得ない事業主もいるかもしれません。
そのような場合、「受動喫煙防止対策助成金」の受給を検討してみてはいかがでしょうか。
目次
受動喫煙対策助成金とは
「受動喫煙対策助成金」とは、中小企業事業主が喫煙室等の分煙対策を講じる際に受けられる助成金です。
この助成金制度の目的は、屋内の喫煙場所を分煙が完璧な空間のみに限定し、労働者の受動喫煙を防止することです。そのため、喫煙室等以外の場所では禁煙にすることが必須条件となります。
助成対象となる事業主
助成の対象となるのは、労働者災害補償保険に加入している中小企業事業主です。以下のような「労働者数」あるいは「資本金」のどちらか一方の条件を満たせば、中小企業事業主となります。
業種 | 常時雇用する労働者数 | 資本金 | |
---|---|---|---|
小売業 | 小売業、飲食店、配達飲食サービス業 | 50人以下 | 5,000万円以下 |
サービス業 | 物品賃貸業、宿泊業、娯楽業、医療・福祉、複合サービス(例:協同組合)など | 100人以下 | 5,000万円以下 |
卸売業 | 卸売業 | 100人以下 | 1億円以下 |
その他の業種 | 農業、林業、漁業、建設業、製造業、運輸業、金融業、保険業など | 300人以下 | 3億円以下 |
助成対象となる処置
助成対象となる措置には、「喫煙室の設置・改修」「屋外喫煙室の設置・改修」「その他の換気等の措置」の3種類が存在します。
喫煙室の設置・改修の場合
- 対象となる事業場の業種:すべて
- 要件:入り口における風速が0.2m/s以上であり、かつ非喫煙区域と隔離されている
- 措置を講じた区域で喫煙以外(飲食等)が可能か:不可
屋外喫煙室の設置・改修の場合
- 対象となる事業場の業種:すべて
- 要件:屋外喫煙所における喫煙により、当該喫煙所の直近の建物の出入口等におけるたばこ煙の濃度が増加しない
- 措置を講じた区域で喫煙以外(飲食等)が可能か:不可
その他の換気等の措置・改修の場合
- 対象となる事業場の業種:宿泊業、飲食業のみ
- 要件:措置を講じた区域において次の(1)(2)どちらかを満たすこと
(1)「喫煙空間の換気量」が「必要換気量」を下回る
(2)粉じん濃度(たばこ煙の濃度)が申請前0.15mg/m³以上の時、措置を講じて 0.15mg/m³以下とする - 措置を講じた区域で喫煙以外(飲食等)が可能か:可能
なお、「喫煙空間の換気量」「必要換気量」の求め方は以下の通りです。
換気量(m³/時間)=開口部の断面積(m²)×風速の実測値(m/秒)×3,600 (秒/時間)
必要換気量(m³/時間)=70.3×席数
喫煙室と屋外喫煙室の違い
出入口と給排気口以外には非喫煙区域に対する開口面がほとんどないことについては、喫煙室と屋外喫煙所で共通です。
出入口等の主となる開口面が屋内の非喫煙区域に面している場合は喫煙室に該当します。対して、開口面が屋外の非喫煙区域にのみ面している場合は、屋外喫煙所に該当します。

助成対象となる経費
助成対象となる経費は、喫煙室等の設置費や工費、換気装置といった機械装置費などとなります。受動喫煙防止対策に直接的には関わらない、デザイン料や机などの家具の設置費は対象外です。ただし、特例として助成対象になるものもあります。参考までにいくつか例をあげます。
- 建物の増設費用(喫煙室等の設置のために建物の増設が必要な場合に限る)
- 既存施設の解体、移設に係る経費
- 建物と屋外喫煙所をつなぐ渡り廊下
- 空気調和設備(エアコン等)
- 要件の確認のための測定の費用(厚生労働省が実施する委託事業で貸与を受けられなかったなど、特段考慮すべき事情がある場合に限る)
助成金額の上限
受動喫煙防止対策助成金の上限額は100万円です。交付される助成額は助成対象経費のうち、飲食店のみ3分の2、その他の事業場は2分の1となっています。
助成金交付に関する注意点
助成金の交付は1事業場あたり1回に限られます。また、単位面積あたりの助成対象経費が下の表を超える場合、合理的な理由があると認められる場合を除き、単位面積あたりの助成対象経費の上限額が設定されます。
例としては、飲食店以外の事業場が3m²の喫煙室を設置する場合、合理的な理由が認められない限り、助成対象経費の上限額は、3m²×60万円/m²=180万円となります。よって、交付される助成金額は180万円の2分の1である90万円です。
交付対象 | 設置を行おうとする喫煙室等の単位面積当たりの助成対象経費上限額 |
---|---|
喫煙室の設置・改修 屋外喫煙室の設置・改修 | 60万円/m² |
その他の換気等の措置・改修の場合 | 40万円/m² |
助成金を受領するまでの流れ
この助成金は工事実施後に振り込まれる形態となっています。助成金を受け取るまでの流れは以下の通りです。
- 申請書類の作成、提出
受動喫煙防止対策助成金の募集要項を確認し、制度の内容を把握します。その後、申請書の作成、関係書類を準備し、所轄の都道府県労働局に提出します。
- 工事の発注・施行
助成金の交付が認められると、交付決定通知書が送られます。これを受領したのち、交付内容に従って工事を実施します。事業内容に変更が生じた場合、「交付決定内容変更承認申請書」を提出し、再度認定を受ける必要があります。
- 工事の終了を報告
工事が完了したら費用を支払い、報告書類を2部ずつ提出します。この報告は、交付決定の際に指定された期日までに行わなければなりません。
- 支払請求書の提出をして助成金を受領
最終的に助成金の交付が認められたのち、支払請求書の提出を行います。その後、支払請求書にて指定した口座に助成金が振り込まれます。
おわりに
しっかりとした分煙設備は喫煙者・非喫煙者両方に快適な空間を提供することに繋がります。
喫煙対策を資金面で悩んでいる中小企業事業主にとって、この助成金の活用はとても有効でしょう。また、新規に事業を開始する場合や事業場を新築にする場合であっても、喫煙室の設置といった受動喫煙防止対策を行った場合には、それににかかる費用は助成対象となります。
申請書の作成に不安を抱いている方は、税理士といった専門家の力を借りることを推奨します。
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