確定拠出年金の利用により結果的に税負担が増えてしまう可能性について
iDeCoの掛金引き上げが議論されているようですが、iDeCoで多額の資産を運用した場合には逆に税金が増えるような事態となってしまうかと考えています。
以下のとおり条件を想定して計算してみたのですが、認識の誤りはありますでしょうか。
また、税金を減らすための手段がありましたら教えてください。
【前提】
・現在30歳、既にiDeCo(個人型)に2.3万円/月拠出しており、現在260万円運用中(拠出元金150万円)。
→拠出金上限額が引き上げられたと仮定して、今後は拠出額を6.2万円/月に増額して30年間運用するものとする。
・運用の想定利回りは年8%とする。(S&P500の過去の平均利回りが10%を超えていることから考えると十分に実現可能な利回りと考えます。)
・現在の職場は60歳定年。定年まで勤めた場合、2500万円ほどの退職金を60歳で受け取ることになると思われる。
→19年ルールの存在から、iDeCoの受取を数年ずらしたところでそちらには退職所得控除の利用はできない?
→退職所得にかかる税率を少しでも低くするために、1年ずらして61歳時に一時金で受取する想定とする。
【運用結果等(想定)】
30歳時点運用額260万円、毎月6.2万円拠出、想定利回り年8%、30年間運用
→30年後の総額120,835,183円
拠出金総額:150+(6.2×12×30)=2,382万円
運用益:120,835,183-23,820,000=97,015,183円
①【所得控除による減税効果】約700万円
※所得税率20%と仮定し、住民税含めて拠出金額に対する3割程度の減税効果を想定
②【運用益に対する減税効果】約1,940万円
※運用益の20%
③【一時金受取時の課税金額】約2,890万円
※120,835,183円を退職所得として一時金で受取、前提条件に記載のとおり退職所得控除は利用できない想定で計算
【結論】
通常の課税口座で運用した場合と比較して、③-(①+②)=約250万円多く税金が発生する。
税理士の回答

石割由紀人
iDeCoの掛金引き上げと運用益に対する税負担について、いくつかのポイントがあります。
まず、iDeCoでの運用は、掛金が所得控除対象となり、運用益も非課税で積み立てられます。そのため、運用益に対する減税効果が期待されますが、受け取り時に一時金として受け取る場合には、退職所得として課税されるため、退職所得控除が適用されます。この控除を使わない場合(例えば、定年後にiDeCoを受け取る場合)には、税負担が増える可能性があります。
あなたの計算では、iDeCo運用益に対する税負担が増える理由として、退職所得控除を使えない点が挙げられています。退職所得控除は、退職金を受け取る年に適用され、iDeCoの一時金受け取りには退職所得控除が使えることが一般的です。しかし、iDeCoの受取タイミングをずらすと、その影響を受ける可能性があることは認識しておくべきです。
税負担を減らすための方法としては、iDeCo受取時のタイミングや退職金の受け取り方法を見直すことが考えられます。退職金を60歳時に受け取るのではなく、定年後すぐに受け取らないことで、退職所得控除を有効活用する方法や、少額ずつ分割して受け取ることを検討することも有効です。
本投稿は、2024年12月16日 16時52分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。