子供設立の資産運用会社へ私からの貸付
娘が株主で代表社員の合同会社を設立し、私と妻が社員になり、私からこの法人に貸付を行い(金利1%程度)、その資金を株式他金融商品で運用することを考えています。相応の社員への報酬も支払い、会社の所得はなるべく少なくしたいと思います。貸付金は3億円ほどを想定。こういう法人が税務面で大丈夫なのかを教えて欲しいです。
税理士の回答
宮本大樹
ご質問のように、ご家族が出資する法人を設立し、その法人へ資金を貸し付け、株式などの金融商品で運用すること自体が、直ちに税務上問題となるものではありません。
ただし、今回のケースでは貸付金が3億円と大きいため、貸付条件、ご家族への報酬、法人の出資関係、将来の相続まで含めて検討する必要があります。
◆3億円の貸付と1%の金利について
法人へ3億円を貸し付けた場合、その3億円自体が法人の収益になることはありません。
法人では、その資金を運用して得た配当や売却益などから、支払利息その他の経費を差し引いて所得を計算します。
一方、相談者様が法人から受け取る利息は、原則として相談者様の雑所得となります。
ここで注意したいのが、金利を1%とすることに合理性があるかです。
令和7年3月7日の国税不服審判所の裁決では、個人が同族会社へ多額の資金を無利息で貸し付けていた事例について、所得税法157条の規定により、本来受け取るべき利息相当額を個人の雑所得として計算した課税処分が認められています。
今回の場合は無利息ではなく1%ですので、この裁決と同じ結論になるということではありません。
ただし、
・貸付期間
・返済期限、返済方法
・担保の有無
・法人の財務状況
・貸付けを行う目的
・第三者間で同じ条件の貸付けを行う場合の金利
などを踏まえて、なぜ1%という金利にしたのかを説明できるようにしておくことが重要です。
金銭消費貸借契約書を作成し、貸付金額、利率、返済期限、返済方法なども明確にしておいた方がよいでしょう。
◆ご家族への報酬について
法人で実際に仕事をしているご家族へ報酬を支払うことも可能です。
ただし、「法人の所得をなるべく少なくするために報酬を支払う」という考え方には注意が必要です。
合同会社の業務執行社員など税務上の役員に該当する方への報酬は、定期同額給与などの役員給与のルールを満たす必要があります。
また、そのルールを満たしていても、不相当に高額な部分は法人の損金として認められません。
特に、株式などの資産運用を中心とする会社であれば、
・誰が投資判断をするのか
・誰が経理や資金管理をするのか
・それぞれがどの程度業務を行うのか
・その仕事内容に対して報酬額が妥当か
といった実態も重要になります。
そのため、最初に法人の利益をいくらまで減らすかを決めて報酬額を逆算するよりも、実際の業務内容に応じて適正な報酬を決め、その結果として法人にいくら利益が残るかという順番で考えるのがよいでしょう。
また、ご家族へ報酬を支払えば、ご家族側では給与所得となりますので、法人税だけではなく、所得税・住民税や社会保険料も含めて全体の負担を比較する必要があります。
宮本大樹
◆相続と出資関係について
もう一つ重要なのが、3億円を法人へ貸し付けても、相談者様の財産から3億円がなくなるものではないという点です。
現金3億円が、原則として「法人に対する貸付金3億円」に変わります。
この貸付金も相続財産となりますので、法人へ3億円を移して運用すれば、その3億円自体を相続財産から外せるという仕組みではありません。
一方、法人がその資金を運用して利益を蓄積していけば、その利益は法人側に残り、出資持分の価値にも影響します。
そのため、誰がどの割合で法人へ出資するのかは、将来の相続を考えるうえでも重要です。
また、将来、相談者様が法人に対して財産を無償で提供したり、貸付金を免除したりすることで法人の価値が増加した場合には、その法人の出資者への贈与として取り扱われることがないかについても検討が必要になります。
なお、今回の1%での貸付け自体が、直ちに娘様への贈与になるという意味ではありません。
◆合同会社の「社員」について
なお、合同会社では、株式会社の「株主」に相当する出資者を「社員」と呼びます。
そのため、ご質問にある「娘様が株主で代表社員、相談者様と奥様が社員」という部分については、
・娘様だけが出資者なのか
・3名とも出資者なのか
・誰が業務執行社員になるのか
を確認する必要があります。
これによって、役員報酬の取扱いや将来の出資持分の評価も変わってきます。
今回のように3億円規模の資金を親族の法人へ貸し付けて運用する場合、「法人をつくれば大丈夫」「1%の利息を取っておけば大丈夫」と一律に判断することはできません。
貸付金利、返済条件、出資割合、実際の業務内容と報酬額、将来の相続まで具体的に数字を置いたうえで、実行前に税理士へ相談されることをおすすめします。
本投稿は、2026年10月05日 06時29分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。





