挑戦者たちの結末はどうなる?「非上場株」の値付け方法

会社のオーナー(多くは創業者)と話をすると、「税務上でよくいわれる『中小企業』という言葉をあまり好んではいない」という意見が目立ちます。この言葉は税務上の意味合いが強く、税制適用において「大企業」と区別するために使われる言葉なのですが、国や地方自治体から「あなたの会社は規模が小さい」と言われている気がするという方も多いようです。
実際に筆者も会社のオーナー兼創業者ですが、自分から中小企業と称することはほとんどありません。
その一方で、10年前には業界内で風を切って歩いていた会社が、10年後にはとって代わられたという話もあります。また、業界そのものが過去のものになってしまったという話などは数え切れません。
少し前から「ベンチャー企業」という言葉を耳にするようになり、その風潮がより確固たるものとなっています。かつて有望ベンチャー企業として世の中に認識されていた会社が、今では日本有数の時価総額を誇り、プロ野球チームを所有するほどの会社になっています。このケースは、まさにベンチャー企業の代表的な成功例といえるでしょう。
ベンチャー企業の株式評価
「ベンチャー企業」という言葉は和製英語です。他にも似たような言葉では「スタートアップ」という言葉もあります。いずれにせよ、創業後、短期間で会社を成長させるという目的に違いはありません。この「成長」は当然、売上を指す場合が多いのですが、もう一つ大きな意味があります。それは「株価」です。
ベンチャー企業は、事業拡大と同時に自社株の価格を上昇させることに邁進します。投資家はその株価を見て投資判断しますが、現行の企業価値については「バリュエーション(Valuation)」という言い方をします。ただ、その株が非上場株である場合、株式相場において公開性を以って値付けされるものではありません。
いずれ上場(IPO)を迎えたとき、もしくは大企業に経営権を買収(M&A)されるとき、その時点での株価が基準値となり、創業者や投資家に利益をもたらします。これを「出口(Exit)戦略」といいます。
もちろん、すべての企業がこの「出口」を迎えるわけではありません。毎年多くの会社が誕生しますが、IPOとM&Aを合わせても確率は1~2割という、まさに少数勝者の世界なのです。
相続時、非上場株の「値付け」はどうなる?
会社を経営していると、様々な結末があります。事業展開の途中で創業者が倒れてしまった、ということもあるでしょう。その場合、創業者が所有していた自社株はどうなるのでしょうか。
会社経営者に限らず、個人が所有している資産を次世代に承継する手続きを「相続」といいます。自社株も資産のひとつです。
とはいえ、非上場企業の自社株は値付けをされていないため、税理士などの専門家が「株価の値付け」をしたうえで相続財産として承継します。算出方法はいくつかありますが、この自社株の評価が円滑な承継・相続を決めるといわれています。
いずれにしても、自社株を受け継いだ家族は、資産額に合わせた相続税を支払う義務が生じます。非上場株といえども世間的に期待値の高い企業だと、十分な売上を維持する前に株価が上昇している 場合も多く、そのような自社株を相続する家族にとっては大きな負担にもなりかねません。そのため、実務経験の豊富な税理士などは、このときの株価を様々な根拠で低く算定することによって、家族の負担を減らすようにしています。
「挑戦者」を守る施策
前提としてベンチャー企業は、いずれ自社株の価格が跳ね上がることで自身に対し、そして成長フェーズのときから信じてくれた投資家に対しお返しをする時間軸で成り立っています。とはいえ、夢半ばで創業者が倒れた場合でも価格修正をする機能を併せ持っています。
こと相続においては様々な生前対策が浸透し、ビジネスとなっている部分があります。その一例が「法人保険」です。
創業者に対して会社(法人)が保険をかけることで、会社の現金を増やしたうえで相続時における事業承継を円滑に進めることができます。特に子世代が複数いて、その内のひとりに経営権を承継する場合、経営権を与えられなかったほかの相続人に対しては保険金を相続させられるとあって、この方法が長く評価されています。
このほかにも、国や地方自治体は「起業家」を育成すべく、様々な施策を打ち出しています。起業力を国の活力にしようとする目的です。
起業の際に主役となる創業者は、まさに挑戦者といえるでしょう。この挑戦者たちが、万が一志半ばで挑戦を止めざるを得なくなったとしても、遺された家族が「自社株」で悩まされない世の中が到来することを願います。 そしてそれは、次なる挑戦者が生まれる最大の要因にもなり得るのではないでしょうか。
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