【質問】副業の所得は、事業所得と雑所得のどちらになりますか
会社員をしながら、個人事業主として業務を請け負っています。条件は次のとおりです。
・取引先は1社のみ
・契約は準委任で、報酬は時間単価
・業務の進め方について、取引先から指示を受ける
・年間の売上は300万円未満
・開業届と青色申告承認申請書は提出済み
この場合、所得区分は事業所得と雑所得のどちらになる可能性が高いでしょうか。判断のポイントと、区分によって変わる点(65万円控除、損益通算、少額減価償却資産の特例など)を教えてください。
判断を補強するために、取引先や契約の実態について整理しておくべきことがあれば、あわせて教えてください。
税理士の回答
山本快夫
お世話になります。
ご質問に対する回答)
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質問者さまの前提の場合、その副業について、「事業所得か雑所得、どちらに該当するか?」だけでなく、「給与に該当するか否か?」の判定も必要と考えます。
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■ 事業所得か雑所得、どちらに該当するか?
前提から、記帳・帳簿書類の保存をすることにより、事業所得に該当しやすくなります。
数年前の改正により、「収入300万円以下」で「記帳・帳簿書類の保存なし」の組み合わせの場合だけ、「雑所得」に該当するのが原則とされました。https://www.nta.go.jp/about/organization/kumamoto/release/r04/kakutei/pdf/07.pdf
それ以外の組み合わせは、あくまでも目安のままであり、従来どおり、最高裁の基準を元に総合的に勘案して、事業所得に該当するのか、雑所得に該当するのか、判定することになります。
ある所得が所得税法27条1項にいう事業所得に該当するか否かは、「自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得」であるか否かによって判断すべきである(最高裁昭和56年4月24日)・・・という考え方が基準とされています。
また、同法27条1項にいう事業(同法施行令63条12号にいう「対価を得て継続的に行う事業」)に該当するかどうかを社会通念に従って判定する場合には、①営利性、有償性の有無、②継続性・反復性の有無、③自己の危険と計算による企画遂行性の有無、④その取引に費やした精神的あるいは肉体的労力の程度、⑤人的・物的設備の有無、⑥その取引の目的、⑦その者の職業・社会的地位・生活状況などの諸要素を総合的に検討し、社会通念に照らして判断するのが相当である・・・と補足されています。
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■ 給与に該当するか否か?
給与に該当しますと、そもそも事業所得にも雑所得にも該当しませんので、慎重な判定が必要と考えます。税務上は、契約などの形式だけではなく、実質で判定されます。
給与か否(外注費等)かの判定について次の5項目が「基本的な」ポイントになります。
・他人が代替して業務を遂行することが可能か?
・時間的拘束、空間的拘束は有るか?
・指揮監督命令下にあるか?
・納品前の商品やサービスが滅失した場合に金銭の要求をできるか?
・作業に必要な物品の提供は有るか?
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/shinkoku/091217/01.htm
しかし、この5項目だけでは判定しづらいため、東京国税局の内部資料が有名ですが、web上に判定チェックシートも多数ありますので、まずはそれらを用いて判定することになります。
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青色でしか適用されない特例(65万円控除、少額減価償却資産の特例など)や、事業所得でしか適用されない特例(損益通算など)がありますので、まずは、上記の2つの判定を慎重にされることをおすすめ致します。
他の方のアドバイスも参考になさってください。少しでもご参考になりましたら幸いです。
結論から言うと、事業所得として認められる余地はあるものの、ご提示の条件では「雑所得」と判定される可能性がかなり高いと考えられます。さらに、条件の②と③は「そもそも給与所得ではないか」という論点にもつながります。以下、順番に説明します。
判断のポイント
1. 事業所得と雑所得の線引き(所得税基本通達35-2)
2022年の通達改正で、目安が次のように整理されました。
「社会通念上、事業と称するに至る程度」かどうかで判定する
帳簿書類を保存していない場合は、原則として雑所得とする(収入300万円超で事業所得と認められる事実がある場合を除く)
帳簿書類を保存していても、事業所得と認められないことがある。例として、①収入金額が僅少な場合(例えば、例年、給与収入の10%未満)、②営利性が認められない場合(例年赤字で、赤字を解消する取組みもない)が挙げられている
この通達のとおり、「売上300万円以下ならすべて雑所得」というわけではありません。ご質問のケースでは、次の点が分かれ目になります。
帳簿をきちんと付けて保存しているか(最低条件です)
副業の売上が給与収入の10%以上あるか(例えば給与が600万円なら、60万円以上あるか)
投下している時間や労力、継続性、黒字かどうか
開業届や青色申告承認申請書を出していることは、事業所得と判定される決め手にはなりません。あくまで実態で判断されます。
2. ①〜③の条件が示す「独立性の弱さ」
事業所得の典型は、「自己の計算と危険において独立して営む」業務です。ところが今回は次の条件がそろっています。
・取引先が1社のみ
・報酬が成果ではなく時間単価
・業務の進め方について指示を受ける
これらはいずれも独立性が弱いことを示す要素です。事業所得から遠ざかるだけでなく、実態によっては「雇用に類する関係での労務提供=給与所得」と判断されるリスクもあります。
判例(最高裁昭和56年)では、給与所得かどうかを次の点から判断しています。
・指揮命令に服しているか
・時間的・場所的に拘束されているか
・自己の計算と危険で業務を行っているか
ご自身で次の点を確認すると、判断材料になります。
・勤務時間や作業場所が指定されているか
・機材や経費を自分で負担しているか
・他の業務を受けることが制限されていないか
・再委託ができるか
仮に給与所得と判断されると、源泉徴収や年末調整の問題が生じます。また、取引先側では、その報酬について消費税の仕入税額控除ができなくなります。影響は小さくありません。
所得区分によって変わる点は下記の通りです。
青色申告特別控除は事業所得では適用されますが、雑所得になると適用はありません。
損益通算は事業所得では赤字と給与所得を通算できますが、雑所得ではできません。
純損失の繰越控除は事業所得では3年間繰越可能ですが、雑所得では繰越不可です。
少額減価償却資産の特例は事業所得では適用可ですが、雑所得では適用不可です。
10万円未満の資産の即時償却と20万円未満の一括償却は事業所得でも雑所得でも適用可です。
青色事業専従者給与は事業所得では適用可ですが、雑所得では適用不可です。
「特定の者に継続的に役務を提供する」人には、必要経費を最低55万円まで認める特例があり、取引先1社のケースは形式的には該当しえます。
ただし、給与所得がある場合は、55万円から給与所得控除額を差し引いた残額しか使えません。会社員として給与を受けている場合、給与所得控除は最低でも55万円なので、実際にはこの特例のメリットはほぼありません。
開業届の提出や売上300万円未満という条件だけで、所得区分は決まらないと考えられます。事業に当たる規模・継続性・独立性、帳簿保存等を実態から検討します。また、時間単価で指示を受けるとのことなので、給与所得に当たる関係かも確認が必要です。契約書に加え、勤務場所・時間の拘束、業務を断る自由、機材や損失の負担、代替の可否を整理してください。青色控除等は所得区分と各制度の要件で変わるため、実態資料を近隣の税理士へ示して確認されるとよいでしょう。
※本回答は一般的な情報提供を目的としたものです。詳細な判断は管轄の税務署への確認や、税理士への個別相談をお願いいたします。
本投稿は、2026年11月04日 10時50分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。







