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個人版事業承継税制とは?対象資産や適用要件を解説

わが国では人口の高齢化とともに、産業を支える中小企業経営者の高齢化が急速に進み、後継者への引継ぎが円滑に進まないという問題が顕在化しています。

このため国は、10年ほど前から中小企業法人を対象とした事業承継支援策を、税制面、金融面から整備してきました。しかし、個人事業主に対しての事業承継支援策には、これまで柱となるようなものがありませんでした。そんな中、平成31年度の税制改正で導入されたのが、「個人版事業承継税制」です。

目次

「個人版事業承継税制」とは

法人版の事業承継税制は、先代が保有する会社の株式を、後継者にスムーズに引き継ぐための支援策でしたが、個人版では、先代個人が保有する事業用の資産を後継者がスムーズに引き継ぐための支援策となっています。

先代の個人事業主が亡くなり、その後継者が会社の資産を相続する場合、多額の相続税が課されると、経営の円滑な承継が難しくなるものです。そのような問題の解決に向けて、この税制が導入されました。

個人版事業承継税制では、個人事業主の資産の相続にかかる相続税の納税が100%猶予されます。基本的には相続税の納税が一定の間、猶予してもらえるだけですが、納税猶予によって個人事業を承継し続けることができれば、経営の安定化につながります。そして、後継者が亡くなるまで事業が継続されれば、猶予は「免除」に変わるのです。

10年間の時限措置

個人版の事業承継税制は、2019年1月1日から2028年12月31日の間に行われる相続・贈与が対象です。国としてはこの期間に集中して支援しようという方針なのです。

相続税の納税猶予を受けるメリットとデメリット

相続税の納税猶予を受けるメリットは、ずばり、相続税を大幅に軽減できる

先代経営者が事業で使っていた土地や建物、固定資産などに相続税が課せられると、相続税の負担で、事業の承継が難しくなることもあります。

そんなとき、相続税の納税猶予を受けられれば、事業承継を円滑に行いたい後継者にとっては大きなメリットとなるのです。

デメリットは、ないと思ってかまいません。ただし一定の場合には、納税猶予が取り消されることもあります。取り消されると、猶予を受けていた相続税を利子付きで納めなくてはなりませんので、この点には注意ください。

対象となる資産

納税猶予を受けられる対象資産(特定事業用資産と呼ばれます)は以下のようなものが対象となります。

  • 土地・建物(土地は400平米、建物は800平米まで)
  • 機械器具備品(工作機械、パワーシャベル、ガソリン給油機、冷蔵庫、診療機器など)
  • 車両運搬具
  • 生物(乳業、果樹など)
  • 無形固定資産(特許権など)

猶予税額の免除

後継者である相続人が、死亡するときまで対象資産を保有したまま事業を継続していた場合には、猶予された税額の支払いが全額免除されます。

納税猶予を受けるための主な要件

納税猶予を受けるためには、以下に述べるような要件を満たすことが条件となっています。これらの要件を満たさないと、納税猶予を受けることはできません。

事前に「個人事業承継計画」の提出・確認が必要

後継者は事前に、都道府県庁へ「個人事業承継計画」の提出をし、確認を受けなければなりません。

個人事業承継計画とは、税理士などの「認定経営革新支援機関」の指導助言を受けて作成するもので、先代経営者が誰か、後継者が誰か、承継までの経営見通しはどうか、承継後の事業計画などが記載されます。

認定を受けるにあたっては、相続開始から8ヶ月以内に申請をしなければなりません。相続税の申告期限である10か月よりも、時期が早いので要注意です。

なお、この計画の提出期限は2019年4月1日から2024年3月31日までとなっています。また、認定には有効期限があり、都道府県知事の認定を受けてから2年となっています。こちらも注意しておきましょう。

先代経営者となる被相続人の要件

先代経営者である被相続人は、次のような要件を満たしていなければなりません。

  • 青色申告書を提出していたこと
  • 承継する事業が資産管理型事業でないこと
  • 承継する事業が性風俗関連営業でないこと
  • 承継する事業の売上がゼロでないこと など

後継者となる相続人の要件

経営を承継する相続人(後継者)は、次のような要件を満たしていなければなりません。

  • 相続により承継する事業の特定事業用資産のすべてを取得していること
  • 相続するとき、承継する事業かそれと同種の事業に従事していること
  • 相続開始の日の翌日から5か月を経過する日まで、特定事業用資産のすべてを保有し、自己の事業の用に供していること
  • 性風俗関連の事業でないこと
  • 所得税法上の開業の届出書を提出していること
  • 青色申告の承認を受けていること
  • 個人事業承継計画の確認を受けていること など

担保の提供が必要

猶予される相続税の金額および利子税の金額に見合う担保を、税務署に提供する必要があります。

「継続届出書」を3年毎に提出すること

この制度を利用したときは、3年ごとに「継続届出書」を税務署に提出する必要があります。

猶予が取り消されることも

納税猶予は、後継者に次のような事情が生じた場合、取り消されます。このような事情が生じたときは、一定の時期(死亡・破産は4か月、その他は1か月以内)までに、都道府県知事に報告しないといけません。

  • 死亡した場合
  • 破産した場合
  • 承継事業の特定事業用資産を全て譲渡して手放した場合
  • 承継事業を廃止した場合
  • 青色申告の承認が取り消された場合
  • 承継する事業が性風俗関連営業に当たることになった場合
  • 承継する事業が資産管理型事業(※1)に当たることになった場合
  • 承継する事業の総収入金額がゼロとなった場合
  • 認定の取り消しの申請があった場合 など

※1

資産管理型事業には、資産保有型事業と資産運用型事業があります。

資産保有型事業とは、貸借対照表の総資産の70%以上が現預金、有価証券、自分で使用していない不動産など(特定資産)である事業で、資産運用型事業とは、総収入の75%以上が特定資産の運用収入である事業をいいます。

贈与も事業承継税制の対象

個人版の事業承継税制では、相続を待つことなく、生前贈与によって、早め早めに事業承継が進むような取り計らいがされています。後継者の要件として相続税における後継者の要件に加え、次の要件が加わります。

  • 贈与の日に18歳以上(2022年4月以前は20歳以上)であること
  • 贈与の日に承継する事業か、それと同種の事業に3年以上従事していること

また、承継する事業の廃業届出書の提出も必要となります。認定の申請期限は、贈与の日の属する年の翌年3月15日です。

相続時精算課税と併用可能

個人版の事業承継税制は、贈与者がその年の1月1日において60歳以上であるときは、相続時精算課税の適用を受けることができます。

相続時精算課税とは、贈与額の総額から2500万円までが非課税となり、それを超えた部分には、一律で20%の贈与税が課税されるという、制度です。

この制度を利用して贈与を受けた場合、認定が取り消されると、暦年単位で計算される多額の贈与税を払うことになる恐れがあります。

そうなると事業承継が進まないことも考えられますが、取り消されても、相続税以上の課税はされないことになります。このため、贈与者も受贈者も安心してこの制度を利用することができます。

おわりに

個人事業者にとって、事業承継に係る相続税の負担は、非常に重たい場合があります。今回創設された個人版事業承継税制をうまく活用することで、その負担が大幅に軽減できます。事前に、制度の適用ができるような条件作りから進めるとよいでしょう。相続や事業承継は、税理士でも専門家の少ない分野です。知識と経験のある税理士をうまく探して、相談するとよいと思います。

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