借地権の相続税評価について
土地を所有しており、建物は第三者が保有して居住用として賃貸している場合、土地の相続税評価は更地価格に1-借地権割合(30%〜90%)を引いて計算すると思いますが、
土地の上に約20年前に法人を設立して居住用建物を建て、権利金を支払っています。その物件を第三者に賃貸し、法人から個人に地代を支払っている場合の借地権の計算をする場合には普通に路線価図に掲載されている借地権割合(30%〜90%)を用いて計算するのではなく、相当の地代、通常の地代の大小にもよりますが、それらを用いて下記の複雑な?計算する場合があることを調べました。
借地権設定当時がどうだったかわからないのですが、現状は通常の地代<実際の地代<相当の地代の場合 自用地×借地権割合×(1-(実際の地代-通常の地代)/(相当の地代-通常の地代))で求めるのは正しいのでしょうか?
税理士の回答

石割由紀人
1. 借地権の相続税評価の基本
土地を所有し、建物が第三者所有の場合、原則として土地の相続税評価額は、自用地評価額から借地権割合を差し引いて計算します。
自用地評価額:土地が更地であるとした場合の評価額で、路線価方式や倍率方式で計算します。
借地権割合:路線価図に記載されており、一般的に30%~90%の範囲で設定されています。
借地権の評価額: 自用地評価額 × 借地権割合
貸宅地(底地)の評価額: 自用地評価額 - 借地権評価額
2. ご質問のケース:法人設立と地代の関係
以下の点が通常の借地権評価と異なります。
借地権設定時に法人を設立し、権利金を支払っている
法人が建物を所有し、第三者に賃貸している
法人から個人に地代が支払われている
この場合、借地権の評価は、通常の借地権割合を用いるだけでなく、地代の状況も考慮する必要があります。「相当の地代」、「通常の地代」、「実際の地代」の3つの地代の関係が重要になります。
3. 3つの地代
相当の地代: 権利金を授受しない場合に、土地の利用対価として支払うべき地代で、一般的には、その土地の自用地評価額の年6%程度とされています。
通常の地代:権利金を支払った場合に、土地の利用対価として支払うべき地代で、一般的には、自用地評価額 × (1 - 借地権割合) × 6%で計算されます。
実際の地代: 実際に支払われている地代です。
4. 計算式について
借地権評価額: 自用地評価額 × 借地権割合 × (1 - (実際の地代 - 通常の地代) / (相当の地代 - 通常の地代))
この計算式は、実際の地代が通常の地代よりも高く、相当の地代よりも低い場合に適用されます。この式は、実際の地代が通常の地代と相当の地代の中間のどこにあるかによって、借地権の評価額を調整するものです。
5. 計算式の適用条件
この計算式が適用されるのは、以下の条件を満たす場合です。
借地権設定時に権利金の授受がない
実際の地代が通常の地代よりも高く、相当の地代よりも低い
6. ご質問のケースへの適用
20年前に法人を設立し、権利金を支払っているとのことですので、原則として、上記の計算式は適用されません。
7. 借地権の評価額の計算方法
以下の手順で借地権の評価額を計算します。
1. 自用地評価額の計算: 路線価方式または倍率方式で計算します。
2. 借地権割合の確認:路線価図で確認。
3. 通常の地代の計算:自用地評価額 × (1 - 借地権割合) × 6%で計算。
4. 相当の地代の計算: 自用地評価額 × 6%で計算。
5. 実際の地代の確認: 実際に支払われている地代を確認。
6. 借地権評価額の計算
権利金を支払っている場合: 原則として、自用地評価額 × 借地権割合で計算。
権利金を支払っていない場合で、実際の地代が通常の地代よりも高く、相当の地代よりも低い場合:上記の計算式(自用地評価額 × 借地権割合 × (1 - (実際の地代 - 通常の地代) / (相当の地代 - 通常の地代)))を適用。
権利金を支払っていない場合で、実際の地代が通常の地代以下の場合: 自用地評価額 × 借地権割合で計算。
権利金を支払っていない場合で、実際の地代が相当の地代以上の場合: 借地権の評価額は0となります。
非常に丁寧な解説ありがとうございます。
概ね、理解できました。あと1点だけ、上記の式が適用されるのは実際の地代が通常の地代より高く、相当の地代より低い場合であることはわかったのですが、権利金を支払っているかどうかで計算方法が異なるのは何か理由ってあるのでしょうか?それとも意味を考えずにそうゆうものだと認識していれば良いのでしょうか?
本投稿は、2024年12月16日 00時20分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。