投資信託の相続税評価と外部税理士への依頼について
私も母も東京在住で、母は高齢で終末期にあり、医師から今日余命1週間前後と説明されています。遺産総額は約2億2,000万円で、そのうち証券資産が約1億3,600万円を占めています。主な財産は、通貨選択型投資信託、ファンドラップ内の非上場投信、株式・外貨預金、外貨MMF等、銀行預金、福岡の数次相続未了不動産2件です。
以下について教えてください。
1.通貨選択型投信、ラップ口座内投信、外貨MMF等は、財産評価基本通達199により、相続開始日に解約した場合の価額から、源泉徴収される所得税等相当額、信託財産留保額、解約手数料等を控除して相続税評価できますか。適用対象となる商品はどのようなものですか。
また、通達199による源泉税相当額控除が適用される投資信託とは、具体的にどのような商品でしょうか。例えば、以下の商品について適用可能性があるのか知りたいです。
・通貨選択型投資信託
・ファンドラップ口座内の投資信託
・外貨MMF
・マネーマーケットファンド
・外貨建て投資信託
商品名や口座区分だけでは判断できず、目論見書や解約時の課税方法を個別に確認する必要があるのでしょうか。
2.生前売却では譲渡税が発生し、相続後売却では取得費加算を利用できる可能性があると理解しています。生前売却と相続後売却は、通達199による評価減、譲渡税、取得費加算、最終手取り額まで比較して判断すべきでしょうか。
3.取得費加算は、国内株式、国内公募投信、通貨選択型投信、ラップ口座内投信、外貨MMFにも適用可能でしょうか。
4.現在、東京の弁護士事務所に遺言・遺留分等を依頼し、同事務所の税理士にも相談していますが、通達199や取得費加算の経験に不安があります。弁護士は現在の事務所のまま、相続税申告だけ別の税理士へ依頼し、直接連携してもらうことは可能でしょうか。
以上、よろしくお願いします。
税理士の回答
ご質問の件ですが、以下回答させて頂きます。
<1.通達199による評価と税額控除の可否>
ご提示の投資信託(通貨選択型、ファンドラップ内、外貨MMF等)はすべて公募投資信託に該当するため、通達199(2)の計算式に従って評価します。
その際、基準価額から「信託財産留保額」や「解約手数料」は差し引くことができます。
ただ、「源泉徴収されるべき所得税等(20.315%)」は差し引く事は出来ません。
公募投資信託の場合「特定口座」を選択されていると、口座内で源泉徴収されますが、
特定口座で引かれる税金は、口座の仕組みによる「特例的な前払い」に過ぎず、通達が想定する商品固有の源泉税には該当しないと解釈されるためです。
*通達199(2)は源泉徴収必須の配当所得扱いとなる「私募投資信託」などが対象となりますが、公募投資信託は譲渡所得扱いとなるため当てはまりません。
<2.生前売却と相続後売却の判断>
●生前売却:
利益に対して譲渡税が引かれ、確実に現預金(相続財産)が減るため、相続税そのものを圧縮できます。
●相続後売却:
「取得費加算の特例」を使って売却時の譲渡税を抑えられます。
税金面での有利不利は計算次第ですが、余命1週間前後という状況下で1億円超の証券を急いで売却することは、ご本人の確かな意思確認(認知能力の証明)の観点から実務上リスクが高いかと存じます。
<3.取得費加算の適用対象>
ご質問にある国内株式、国内公募投信、通貨選択型投信、ラップ口座内投信、外貨MMFのすべてに「取得費加算の特例」が適用可能です。
これらはすべて譲渡所得の対象となるため、相続税申告期限の翌日から3年以内の売却であれば、支払った相続税の一部を元本に加算し、譲渡税を軽減できます。
<4.弁護士と別税理士の連携>
現在の弁護士事務所に遺言や遺留分対応を任せつつ、相続税申告のみ別の税理士へ依頼することは可能です。
証券の複雑な評価や、福岡の数次相続未了不動産などは、相続税専門の税理士を新たに入れ、弁護士と直接情報共有して連携するよう依頼することで、適正な申告とご自身の負担軽減につながるかと存じます。
回答は以上となります。
ご参考になりましたら幸いです。
能登路先生
詳しいご回答をいただき、ありがとうございます。
財産評価基本通達199について、もう一点確認させてください。
国税庁の「No.4644 貸付信託・証券投資信託の評価」では、日々決算型以外の証券投資信託について、課税時期に解約請求等を行った場合に源泉徴収されるべき所得税等相当額を考慮する算式が示されており、公募投資信託を除外する旨は明記されていないように読めました。
先生からは、公募投資信託の解約益に係る20.315%は、特定口座の仕組みによる特例的な前払いであり、通達199の控除対象ではないとのご説明をいただきました。
この見解の根拠となる法令、通達、国税庁の質疑応答、裁決例等がございましたら、ご教示いただけますでしょうか。
例えば、野村證券の通貨選択型投信について、
・評価額 約6,300万円
・取得額 約510万円
・含み益 約5,800万円
とした場合、先生の見解では、相続税評価額は約6,300万円から信託財産留保額等だけを引いた金額となり、含み益に対する税相当額約1,180万円は控除しない、という理解でよいでしょうか。
また、外貨MMFについては、国税庁が日々決算型を通達199(1)、それ以外を199(2)に分けているようですが、今回の外貨MMFを199(2)とされた理由も併せて教えていただけますと幸いです。
以上、よろしくお願いします。
追加のご質問の件ですが、以下回答させて頂きます。
1.見解の根拠(法令等)について
かつて公募投資信託の解約益は「配当所得」でしたが、平成21年の税制改正により上場株式と同じ「譲渡所得(売却益)」に変更されました(租税特別措置法第37条の11)。
通達199が規定する「源泉徴収されるべき所得税等」とは、源泉分離課税されるもの(配当所得等)を指し、「口座機能による特例的な前払い(譲渡所得)」は含まれないと解釈されています。
2.野村證券の通貨選択型投信の具体例について
はい、ご認識の通りです。
*評価額約6,300万円から信託財産留保額・解約手数料等を引いた金額がそのまま相続税評価額となり、含み益に対する税金相当額(約1,180万円)は控除しません。
3.外貨MMFが通達199(2)に区分される理由
通達199(1)の「日々決算型」が想定しているのは、国内のMRF(マネー・リザーブ・ファンド)などのように「元本が1口1円で固定され、価格変動が一切ない商品」です。
一方、外貨MMFは商品分類上は日々決算型ですが、為替相場の変動によって「円換算した元本価値」が日々変動します。
そのため、「1口=1円」を前提とした199(1)の単純な算式(元本+未収分配金)には馴染まず、実務上は価格変動する一般の投資信託と同様に、時価(為替レート)を反映できる199(2)の算式を用いて評価することとされています。
回答は以上となります。
ご参考になりましたら幸いです。
能登路先生
お世話になっております。
追加のご回答をいただき、ありがとうございました。
理解や確認に時間がかかってしまい、お礼が遅くなり申し訳ございません。
先生のご説明により、公募投資信託の解約益が現在は配当所得ではなく、譲渡所得として扱われるという点は理解できました。
一方で、財産評価基本通達199における「源泉徴収されるべき所得税等」について、もう少し確認させてください。私が調べた限りでは、国税庁のタックスアンサーNo.4644では、日々決算型以外の証券投資信託について、課税時期に解約請求等をした場合に支払いを受けることができる価額を基に評価し、その際に「源泉徴収されるべき所得税額相当額」等を考慮する算式が示されているように読めました。
先生からは、この「源泉徴収されるべき所得税等」は、源泉分離課税される配当所得等を指し、公募投資信託の特定口座で源泉徴収される譲渡所得税は含まれないとのご説明をいただきました。通達199の控除対象が配当所得等に限られ、公募投信の譲渡所得に係る源泉徴収税額は除外される、という点について、国税庁の質疑応答、通達、または税務署確認事例などで具体的な説明がありますでしょうか?
国税庁No.4644では、MMF等の日々決算型の証券投資信託は199(1)、それ以外の証券投資信託は199(2)と私にはどうしてもそう整理されているように見えます。外貨MMFが具体的に199(2)で評価されるという文面が国税庁の質疑応答などで具体的にあればわかりやすいですね。
私の理解不足なので先生のご見解通りだと思いますが、公募投信について20.315%相当額の控除が認められないなら、今回の相続税申告において担当する税理士によって税額差がでないという理解で良いでしょうか?つまり、私のケースだと、どの税理士さんに依頼しても節税は変わらないということでしょうか?
よろしくお願いいたします。
追加のご質問の件ですが、以下回答させて頂きます。
1. 通達199から「特定口座の譲渡所得税」が除外される根拠
ご指摘の通り、「特定口座の公募投信については通達199の控除対象外とする」と直接的に書かれた国税庁の質疑応答事例や通達の特例規定は、存在しません。
明記されていない理由としましては、国税庁のスタンスとして「法律の基本構造から自明であるため、わざわざ例外規定を書く必要がない」からと存じます。
通達199が言う「源泉徴収されるべき所得税等」とは、所得税法に定められた本来の源泉徴収(配当等)を指します。
一方、特定口座で引かれる20.315%は「租税特別措置法」という別の法律に基づく「確定申告の便宜上の特例ルール」となります。
法解釈上、この2つは全くの別物であり、国税当局も税理士業界も「特定口座の税金は通達199の文言には該当しない」という解釈で統一されています。
過去に納税者がこれを不服として争った裁決事例が見当たらないのも、法的な根拠があり、専門家が争点にしないためとなります。
2. 外貨MMFが199(2)で評価される理由
外貨MMFに関する国税庁の個別の質疑応答事例も公表はされていませんが、実務上199(2)(またはそれに準ずる時価評価)に分類されるのには明確な理由があります。
通達199(1)は、「1口=1円」で元本が絶対に変動しない国内MRFなどを想定した特殊な計算式です。外貨MMFも「1口=1セント等」ですが、日本の相続税はすべて「円換算」で計算します。
為替変動により「円ベースでの元本価値」は日々変動して含み益(為替差益等)が生じるため、「元本が固定されている前提」の199(1)の単純な式には当てはまらず、一般の投資信託と同じく時価を反映できる199(2)で評価(為替差益に対する税金は控除不可)することになります。
3. 税理士によって税額差は出ないのか?
「証券の評価額」については、どの税理士に依頼しても同じ金額になるかと存じます。
一般的に、税理士によって評価が分かれるのは、不動産の評価であるため、当初のご質問にあった「数次相続未了不動産」の評価などは、税理士によって見解が分かれる可能性はございます。
回答は以上となります。
ご参考になりましたら幸いです。
能登路先生
追加のご回答をいただき、誠にありがとうございました。
公募投資信託の特定口座における20.315%の源泉徴収税額について、財産評価基本通達199の控除対象にはならないという先生のご見解、またその考え方について理解いたしました。
また、外貨MMFの評価や、証券評価については税理士によって大きく差が出るものではなく、むしろ不動産評価などで見解が分かれる可能性があるという点も、大変参考になりました。
細かい質問を何度もしてしまい恐縮でしたが、今回の相続では証券資産の割合が大きく、評価方法によって税額に大きな影響が出る可能性があるため、慎重に確認させていただきました。
先生には丁寧にご回答いただき、感謝しております。
以上、ご回答のお礼を申し上げます。
本投稿は、2026年07月03日 00時37分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。







