個人事業主に税理士は必要?税理士をつけるタイミングやメリットを解説

個人事業主の方の多くが「税務」について頭を悩ませたことがあるのではないでしょうか。そこで頼りにしたいのが税務のプロフェッショナルである税理士ですが、「個人事業主に税理士は必要なのか」と、お悩みの方も少なくないでしょう。
実際のところ、税理士の必要性はどこにあり、税理士をつけることでどのようなメリットがあるのでしょうか。また、依頼費用はどのくらいかかるのでしょうか。税理士をつけるべきタイミングとあわせて解説します。
目次
個人事業主に税理士は必要?依頼を検討すべきタイミングとは
税理士にサポートを依頼するには、一定の費用がかかります。また、依頼することで税理士とのやり取りが発生するため、手間が増えることを懸念する方もいるでしょう。
費用や手間はかかるものの、税理士をつけることにはさまざまなメリットがあり、かけたコスト以上の効果を得ることが可能です。
では、どういったときに税理士をつけるとよいのでしょうか。
インボイス制度に登録をしたとき
インボイスの登録事業者になる際は、税理士をつけてサポートしてもらうことをおすすめします。
2023年(令和5年)10月1日から「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」が始まりました。インボイス制度とは、複数税率に対応した消費税額の仕入税額控除の方式です。仕入税額控除ができる要件として、適格請求書発行事業者が発行する「適格請求書」または「適格簡易請求書」が必要となります。
インボイス制度は、登録するかどうかを事業者自身が選択できます。ただし登録することで得られるメリットが多いことから、登録している個人事業主は少なくありません。
インボイス制度に登録すると、消費税の課税事業者になることから、未登録(免税事業者)の場合とは異なる税務処理が発生します。
インボイス制度への登録で発生する税務処理の例
・適格請求書保存方式(インボイス制度)に対応した適格請求書の作成
・適格請求書の規定期間(7年間)の保存
・消費税の申告
特に消費税申告は所得税の確定申告よりも処理が複雑なため、自力での対応は難しいものです。そのため、インボイスに登録した(または登録を検討している)タイミングで、税理士への依頼を検討した方がよいでしょう。
確定申告をミスなく進めたいとき
確定申告を正確に行うことに不安がある場合も、税理士への依頼を検討しましょう。
売上が少ないうちは自力で対応することも可能ですが、ある程度の税務知識は不可欠ですし、売上が上がってくるにつれより複雑な処理が求められます。また、基本的に年に1回しか発生しない作業であるため「やり方を覚えられない」「毎年のように苦戦する」という方もいるでしょう。
申告内容に不備があると、追徴課税などさまざまなペナルティが発生することも考えられます。このような事態を防ぐためにも、確定申告に不安を感じる方は税理士をつけるとよいでしょう。
税理士との契約はスポット(単発)でもOK
「確定申告のためだけに毎月の顧問料を税理士に支払う余裕がない」という方は、スポット(単発)での契約も可能です。スポット契約であれば、依頼したい業務をピンポイントで税理士に任せられるため、依頼費用を抑えながら税理士のサポートを受けられます。
- 確定申告の税理士費用はいくら?依頼内容別に料金相場を詳しく解説
- 確定申告を代行できる専門家は誰?依頼時のポイントやメリット・デメリット
- 【徹底解説】追徴課税とは?加算税の種類や延滞税の税率・計算方法、納付手続き
新規開業するとき
これから事業を始める方は、まさに今が税理士をつけるタイミングです。
必要な税務手続きをはじめ、開業後の日々の仕訳(記帳代行)、確定申告まで税理士にまかせることで、ご自身は事業を軌道に乗せることだけに集中できます。
個人事業主が税理士をつける6つのメリット
個人事業主が税理士をつけるメリットには、以下の6つが挙げられます。
- 正確な税務申告ができる
- 経理事務の負担が減る
- 効果的な節税対策ができる
- 経営アドバイスが受けられる
- 資金調達、融資で有利になる可能性がある
- 税務調査の対応も任せられる
以下では、これらのメリットについて詳しく紹介します。
メリット1.正確な税務申告ができる
税理士に業務を依頼する最大のメリットは、税額計算や書類作成の正確さです。
税務の知識がある程度あれば、自身で確定申告等の税務作業を完了させることは難しくありません。
しかし、計算ミスや不備により、本来の税額より少ない額で申告・納税してしまった場合や、申告・納税期限に間に合わない場合、税務署から指摘を受けるだけでなく加算税や延滞税などのペナルティも追徴される恐れがあります。
その点、税理士に依頼することでこうした不要な懸念が払拭されます。
メリット2.経理事務の負担が減る
記帳や確定申告を税理士に代行してもらえば、請求書や領収書をまとめて渡すだけでいいので、その分の作業負担を軽減することができます。
記帳や申告業務に割く時間が減り、事業成長のための時間が確保できれば、結果的に売上増加にもつながります。
メリット3.効果的な節税対策ができる
効果的な節税のためには、会計税務の正しい知識を身につけておく必要があります。
あいまいな知識や確実ではない方法で税負担を減らそうとすると、知らずに脱税行為をしてしまっていたという事態にもなりかねません。
税理士であれば正しく確実な節税対策ができるうえ、顧問契約していれば最新の経営状態を常に把握することができるため、状況に応じた効果的な対策が期待できるでしょう。
中でも節税対策が得意な税理士に依頼すれば、費用以上の効果が見込めることもあります。
- 節税(税金対策)に強い税理士の選び方 - 知っておくべき5つの特徴
- 個人事業主の節税方法10選|正しい税金対策で無理なく手元にキャッシュを残す方法
- 節税のつもりだったのに!「脱税」や「租税回避」とみなされる可能性がある行為とは
メリット4.経営アドバイスを受けられる
税理士の中には、経営アドバイスやコンサルティングをサービスの一環として行っている方もいます。
税理士は、業種問わず数多くの経営者と日々接し、さまざまな事業や財務状況を把握しています。そのため、経営上の悩みや問題を抱えてしまったときでも、顧問としてよき相談相手になってもらえます。
メリット5.資金調達、融資で有利になる可能性がある
今は「売上規模が小さいから税理士は必要ない」と考えている方も、いつか事業を拡大したくなる日が来るかもしれません。事業拡大の際には、資金調達が必要になることもあります。資金調達をスムーズに行うためにも、借入先との面談や事業計画書の作成はとても重要です。
税理士は、資金調達を行ううえで強化すべきポイントにも知見があります。計画書や申請書の作成においても「審査に通りやすいかどうか」を見据えたアドバイスを受けられるため、事業が小さいうちから税理士との信頼関係を築いておくとよいでしょう。
メリット6.税務調査の対応も任せられる
個人事業主であっても、売上が少なくても、税務調査の対象となる可能性はゼロではありません。そして税務調査は、調査官への対応によって結果が大きく変わることもあり得ます。
たとえば、申告内容の正当性を主張できず、調査官に言われるがまま追徴課税を納めることになるケースが考えられます。また、税務調査が長引くと精神的に疲弊し、コア業務に支障をきたしかねません。
税理士に税務調査の事前準備から当日の立ち会いまで対応してもらうことで、税務調査にかかる時間的・心理的負担を軽減できます。
税理士ができることとは?
そもそも税理士が担う役割やサービス内容がわからない方もいるのではないでしょうか。
税理士は、税務を独占業務として営み、専門家として納税者をサポートし申告納税制度を推進する役割を担っています。
税理士が行う業務 | |
---|---|
独占業務 | ・税務代理(税金に関わる申告や申請などの業務、税務調査の立ち会い、税務署への対応など、税務に関連する対応の代行) ・税務書類の作成(確定申告書類など、税務に関連する書類を作成) ・税務相談(確定申告書類の作成方法、所得税や相続税の節税対策など、具体的な税務に関連する相談) |
その他業務 | ・起業、会社設立支援 ・資金調達支援、融資対策 ・経営コンサルティング など |
このように、税理士は事業者のよきアドバイザーとして、経営の助力となっているのです。
なお、「独占業務」とは資格を持っている人しか行えない業務のことで、税理士の独占業務は「税理士法」にて定められています。そのため有償・無償に関わらず、上記の独占業務は税理士しか行うことができません。
税金に関しての相談や業務を依頼したい場合は、必ず税理士会に登録のある税理士に依頼しましょう。
個人事業主の税理士費用相場
個人事業主の顧問料の相場は月額1.5万〜2万円程度からで、売上高や会社規模、訪問の回数によって報酬額が変わってきます。
それとは別に確定申告料として月額顧問料の6か月分程度がかかります。また、記帳代行・年末調整・資金調達・税務調査など、依頼する業務が多ければその分料金が加算されます。
実際に税理士との顧問契約でどのくらいの費用がかかるのかについては、実例の紹介を含めて以下の記事で解説しています。
税理士を見つけるための方法5選|自分に合った税理士を探そう
税理士を探す手段としては主に以下の5通りがあります。
知人や取引先から紹介してもらう | メリット ・自分で探す手間がかからない デメリット ・知人との関係性によっては契約解消の申し出がしにくい |
近隣の税理士事務所へ直接連絡する | メリット ・地域のコミュニティとつながりができる デメリット ・自分で探す手間がかかる |
税理士会や商工会議所から紹介してもらう | メリット ・税務相談や勉強を兼ねて税理士を探せる デメリット ・複数の候補から探せない |
インターネットで検索する | メリット ・希望の条件をもとに複数の候補から探せる デメリット ・自分で探す手間がかかる |
税理士紹介サービスを使う | メリット ・自分で探す手間がかからず、複数の候補から探せる デメリット ・紹介会社によってサービスの質が異なる |
いずれの方法にせよ、「どのような税理士を選べばいいかわからない」ということであれば、複数の税理士と面談し、比較してみましょう。
その際気をつけたいのが、「報酬金額の安さ」だけを重視しないことです。
中には月額顧問料1万円以下で契約できる税理士事務所もあります。しかし、安い顧問料では対応してもらえる業務範囲も限られるため、十分なサポートを得られない可能性があります。
契約前の面談で料金の内訳や税理士の人柄、自身との相性を確認し、ベストな税理士を見つけましょう。
もっと記事を読みたい方はこちら
無料会員登録でメルマガをお届け!