合同会社の決算は自力でできる?書類の作成から確定申告までの流れをわかりやすく解説

最近は、会社設立の際に合同会社という形態が選択されるケースが増えてきています。合同会社であっても、株式会社など他法人と同様に決算・確定申告は実施しなければなりません。このページでは、合同会社における決算について、株式会社との違いを含めて解説します。
目次
合同会社の決算はどうなる?
会社(営利法人)を設立する場合、「合名会社・合資会社・合同会社・株式会社」のいずれかから会社形態を選択します。
それぞれに特徴がありますが、最近は株式会社だけではなく合同会社を選択するケースが増えてきています。合同会社は比較的設立費用が安く、役員任期の更新が不要であるため、手間と費用が削減できるというようなメリットがあるからと考えられるでしょう。
しかし、合同会社であっても法人であることは変わりません。株式会社と同じく決算を行い、決算書の作成や法人税等の確定申告を実施する必要があります。
これらの決算手続きについては、概ね株式会社と同じですが、合同会社と株式会社で異なる点もあります。具体的には以下のような点です。
決算公告の必要がない
株式会社では、「決算公告」を毎年行うように定められています。決算公告とは会社の財務情報について、株主総会の承認後に官報や日刊新聞紙への掲載、電子公告といった方法で一般に開示する手続きのことです。
合同会社はこの決算公告をする必要がありません。そのため、掲載費用や掲載原稿の作成の手間といったものを節約することができます。
必要な決算書(計算書類)
会社の財務状況を表した書類を一般的に「決算書」といいます。会社法では「計算書類」という名称を使い、どの書類を作成しなければならないかが決められています。
株式会社の場合は、会社法により各事業年度に係る計算書類・事業報告・附属明細書を作成する必要があると定められています。
一方で合同会社は、各事業年度に係る計算書類は作成しなければなりませんが、事業報告や附属明細書の作成については法令で求められていません。
計算書類の承認方法
株式会社の場合は株主総会にて、決算書(計算書類)を承認・確定させます。
合同会社の場合は、計算書類の承認機関に関する規定が特にないため、原則的には社員の過半数の合意によって、計算書類を確定させることになります。
なお、合同会社の社員というのは合同会社に出資した人のことであり、一般的な株式会社の社員のように、雇用されて働いている人ではありません。
合同会社の決算から確定申告までの流れ
法人形態に関わらず、原則的には決算日から2か月以内に法人税等の確定申告と納税を行う必要があります。
決算作業としては、決算書・法人税等の申告書を作成し、納税を行うという流れです。具体的な手続きは以下のとおりです。
(1)帳簿書類の確認・整理
決算書を作成する上で、日々発生する取引について、抜け・漏れ・誤りなく適正に帳簿に反映しなければなりません。
そのため、年間の帳簿書類の確認・整理を行い、期中の取引が正常に帳簿に反映されているのかどうかを確認していきます。また、現金・預金の残高・売掛金・買掛金といった残高も適正であるか、請求書・領収書といった帳票類から確認していきます。
(2)決算整理
次に決算整理として、取引の中に未処理・未確定となっているものがないかを確認し、あるべき残高に修正・追加していきます。この際に発生する仕訳を「決算整理仕訳」といいます。
たとえば在庫などの棚卸資産については、実際の商品・製品・材料等をカウントし、決算日現在の在高を算出します。そのほか固定資産であれば、新規取得や廃棄・売却を確認した上で、減価償却費を計算し帳簿上の固定資産の残高を確定させるといった処理を行います。この決算整理仕訳を通じて、数値を確定させるのが目的です。
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(3)決算書の作成
決算数値が確定したのち、会社の財務情報をまとめた決算書を作成します。
前述の通り会社法上は計算書類という名称が使われますが、合同会社の場合は、具体的に以下の書類を作ることが求められます。
書類名 | 概要 |
---|---|
貸借対照表 | 決算日時点における会社の資産・負債・純資産を表示しているもの |
損益計算書 | その事業年度中における会社の収益・費用を表示しているもの |
社員資本等変動計算書 | その事業年度中の貸借対照表の純資産の部の増減を表示しているもの |
個別注記表 | 重要な会計方針に関する注記など、計算書類の各書類に関する注記をまとめて一覧表示しているもの |
なお、株式会社の場合は、計算書類に関する附属明細書や事業報告書、要件を満たせばキャッシュフロー計算書も作成する必要がありますが、合同会社の場合それらは求められておりません。
少々細かい点になりますが、合同会社の場合は注記表も適用される項目が限られています。会社計算規則によると、個別注記表は20項目の規定からなっていますが、合同会社の場合は、重要な会計方針に係る事項に関する注記や収益認識に関する注記といった項目のみ適用されます。
(4)計算書類の承認
先述のとおり、合同会社については、計算書類の承認に関する規定がおかれていません。そのため、原則的に社員の過半数承認をもって計算書類を決定していきます。
合同会社の場合は、株式会社でいう株主総会といった承認機関が法令で定められてはいませんが、やはりなんらかの形でその決定の記録を残す対応が必要になります。
社員総会にて承認をしたのであればその議事録を、総会という形に寄らず業務執行社員の過半数により決定した場合でも、その議事録や決定内容を書面として残すことが重要です。
(5)法人税等の確定申告と納税
決算書ができれば、次は法人税等の確定申告・納付を実施します。
この点については作成書類や提出先・提出期限も株式会社と合同会社で特に違いはありません。法人税と消費税については所轄の税務署に、法人事業税や法人住民税については該当する地方自治体の税事務所に提出します。
合同会社の決算は自力でできる?
ある程度の経理知識があれば、自力でやることも不可能ではありません。
自力で行うメリットとしては、外部に頼むよりも費用が抑えられる点や、自分で決算書を作成することで自社の財務状況に対する理解も深まるということが挙げられます。
しかしその一方で、独力では決算作業に時間がかかり、コア業務が疎かになってしまう懸念があります。
合同会社は株式会社に比べて、情報公開する場面が比較的少ないとはいえ、それなりの労力がかかるという点では変わらないのです。
また、提出期限までに申告・納税が終わらなければ、加算税等の追徴や青色申告が取り消されるなどのペナルティが発生する可能性もあります。期日内に申告・納税できたとしても、内容に誤りがあり後日税務調査で指摘されてしまった場合にも同様です。
取引内容が単純で経費も多くなく、複雑な処理がないのであれば、自分で作成するのも選択のひとつです。事業規模が大きくなれば、税理士等の専門家に依頼するのが無難でしょう。
なお、依頼した場合の相場については、事業規模や業務内容・依頼する内容によってケースバイケースであるため、まずは一度相談するのがよいでしょう。
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