合同会社のメリットは低コストなだけじゃない!注意すべきデメリットは?

現在の日本における企業形態のうち、「合同会社」は最近の有名企業でも採用されており、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
株式会社に比べて低コストで法人化できるなど、さまざまな設立メリットがある一方、業種によっては合同会社に不向きな場合もあります。
そこでこの記事では、合同会社を設立するメリット、デメリットについてわかりやすく解説します。
目次
合同会社とは
合同会社は、2006年5月の会社法施行以降、有限会社に代わって新しく認められた企業形態のひとつです。
法人格があり、有限責任がある点では株式会社と同様ですが、決算公告の義務や役員の任期がないなどの特徴があります。
まだまだ歴史が浅い企業形態ではありますが、近年では合同会社を選択する会社も増加している傾向にあります。
合同会社の7つのメリット
法人設立時に合同会社を選択するメリットについて、具体的に解説していきます。
1.設立費用が安い
株式会社の設立には、登録免許税(最低15万円)、公証人手数料(5万円)のほか、定款の謄本作成料が定款1枚に付き250円発生するため(通常は8枚程度)、少なくても20万円以上が必要になります。
一方、合同会社の設立の場合は、登録免許税が最低6万円と株式会社の半分以下となります。また、合同会社は公証役場での定款認証手続きが不要なため、株式会社では3万〜5万円かかる認証手数料が0円となります。
会社設立時にはさまざまな費用がかさむため、株式会社と比べて設立費用が半額程度に抑えられるのは、大きなメリットといえるでしょう。
なお、合同会社と株式会社のどちらの場合も、定款を作成する際には定款印紙代が4万円かかりますが、こちらは電子定款の制度を利用すれば印紙代はかかりません。
2.決算公告の義務がない
株式会社の場合は、毎年決算書を公表する必要があり、官報掲載費として毎年7万円程度かかります(電子公告であれば無料)。
一方、合同会社には決算公告の義務がありません。そのため官報掲載費もかからず、決算公告にかかる手間も省くことができます。
3.役員の任期がない
株式会社の場合、取締役は原則2年(最長10年)に一度、役員変更登記の申請をする必要があり、その都度登記費用として登録免許税が1万円(資本金1億円超の場合は3万円)発生します。
合同会社には役員の任期がないため、任期満了に伴う登記変更は発生しません。手間がかからない上、コストもカットできます。
4.経営の自由度が高い
株式会社を設立する際には、会社の重要な意思決定を行う取締役や株主総会といった機関の設置が必要になり、どのような機関を設置しなければならないかは会社法に定められています。
合同会社の場合は出資者=経営者となるため、株式会社のように機関を設置する必要はありません。必要に応じて社員総会を設置するなど、定款により自由に組織設計をすることができます。つまり、事業運営をスムーズに行うために最適な組織を作ることが可能なため、経営の自由度が高くなります。
特に外資系企業にとっては本社に機関を置いておくことができるため、日本法人に機関がなくても十分に機能できる合同会社を選択するケースが多いのです。
5.利益の分配を自由に決められる
株式会社は出資比率に応じて利益を分配するのに対して、合同会社では定款に定めることで自由に利益配分を決めることができます。
たとえば合同会社の場合は、出資金は少なくても事業を成長させるための技術やノウハウを持った人への利益配分を、事業への貢献度を考慮して決めることができます。つまり、出資比率が高い人と実務で貢献した人とが、対等に利益分配を受けることが可能となります。
6.有限責任である
合同会社は株式会社と同様に、会社に負債がある場合でも、出資額の範囲内で責任を負う「有限責任」となります。
もし会社が倒産してしまっても、出資額の範囲で責任を負えばそれ以上の支払い義務は伴わないため、万が一の事態が発生した際にリスクが軽減されるというメリットがあります。
7.意思決定が迅速
株式会社は、会社の規模によっては株主と経営者が必ずしも同じではなく、外部の投資家から出資を受けている場合は、意思決定の際に株主との調整が必要になることがあります。
一方合同会社の社員は、出資者と取締役の両方を兼ねており、株主総会の開催も必要ないため、早い意思決定が可能となります。
合同会社の3つのデメリット
一方で合同会社を選ぶデメリットとしては、以下の3つが挙げられます。
1.認知度が低い
前述したように、合同会社は2006年から制定された新しい会社形態のため、日本においては株式会社よりもまだ認知度が低いといえます。
加えて比較的小規模な会社が多く、取引先によっては信用度が低いと認識されてしまう可能性もあります。
この点、法人格にこだわらない業種であればとくに問題はなく、融資においても合同会社だから不利になるということはありません。
2.上場できない
合同会社は株式会社ではないので、株式上場することができません。多額の資金を株式市場で調達したい場合や、上場により信用度や知名度を大幅に向上したい場合などは、株式会社に組織変更する必要があります。
3.事業承継で問題が生じる場合も
株式会社は株式を保有する経営者が死亡した場合、相続人が株式を相続することで跡を継ぎ、事業を承継することができます。
ところが合同会社の場合、出資者である社員が死亡した際は退社扱いとなり(会社法第607条三)、持分は相続人に払い戻されます。また社員が一人しかいない場合、その人が亡くなると会社は解散となってしまうため(会社法第641条四)、事業を続けていくことが事実上不可能となってしまいます。
そのため、定款に「社員が亡くなった場合には相続人が持分を承継し社員になる」旨をあらかじめ定めておくなど、生前中の対応が必要となります。
おわりに
上記を踏まえると、合同会社を選択する場合は、法人格にこだわらない業種が向いているといえます。
たとえば「会社名の影響が少ない事業(商品名やサービス名を売りにしているBtoCビジネス)」や「個人の能力を中心としている事業(デザイナー、プログラマー等)」、「低コストで法人化したい許認可が必要な事業(飲食店、美容院、介護施設等)」、「投資や不動産業など副業での起業」などにおすすめです。
起業の相談は設立後の税務相談も含めて、専門家である税理士のアドバイスを受けることをおすすめします。法人設立を考えている人は、どの形態にするかメリットとデメリットをしっかり把握して選択しましょう。