クリエイターの法人成り。ライブ演出(法人)と振付(個人事業)の切り分けにおける税務リスクについて
はじめまして。身内がフリーランスの振付師・ライブ演出家として活動しており、私が経理や事務をサポートしております。
年間売上が3,000万円規模になったため、10月に合同会社を設立し、法人と個人の二刀流を検討しています。
その際の業務の切り分け方が、不当な売上分散(租税回避)とみなされないか、先生方のご意見を伺いたく投稿いたしました。
【検討している切り分けスキーム】
現在、以下の2軸で事業を行っており、契約や口座を明確に分ける予定です。
① 法人で行う業務(大規模なライブ演出、制作進行管理など)
本人単独ではなく、アシスタントやバックダンサー、他クリエイター等を手配してチームで動く業務。外注費の支払いハブになるため法人化する。
② 個人事業主として残す業務(新規の振付制作、プレイヤーとしての活動)
チームを使わず、本人の職人としての「個人のスキル・身体」に直接依存する業務。
【最も懸念しているグレーゾーン(ご相談したい点)】
実務上、一番の懸念点は「①のライブ演出(法人案件)の中に、本人が直接行う振付の作業が含まれるケースが多々ある」という点です。
この場合、以下のような処理を想定していますが、税務上問題ないでしょうか。
想定している処理:
法人がクライアントから「ライブ演出一式(振付含む)」として一括で受注し、そのうちの「振付部分」だけを、法人の外注費として本人(個人事業主)へ支払う。
【ご質問まとめ】
・このように「チームで動く演出は法人」「属人的な振付は個人」と実態を分けて並行稼働させること自体は、否認リスクは高いでしょうか?
・法人案件の中に個人の振付が含まれる場合、上記のように「法人から本人個人への外注費」として処理する形は、客観的に見て合理性があるものでしょうか。
実態を証明するために気をつけておくべきポイントがあれば、ご教示いただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。
税理士の回答
山本快夫
お世話になります。
ご質問に対する回答)
↓
できる余地もあるももの、税務上の否認リスクは高いと考えます。
振付業務部分を客観的に合理的に区分して個人に業務委託できるのか否か、個人的にはかなり困難かと考えます。
―――――――――――
補足)
ご質問の前提からは不明瞭ですが、身内のフリーランスの振付師・ライブ演出家が設立法人の役員や従業員となる場合、質問者さまのご懸念のとおり、税務上において検討を要する点は、「ライブ演出一式(振付含む)」として一括で受注」「ライブ演出(法人案件)の中に、本人が直接行う振付の作業が含まれるケースが多々ある」という点です。
なお、身内のフリーランスの振付師・ライブ演出家が、設立法人に一切関与しない場合は、法人と個人との取引に税務上のリスクは相当小さくなるものと考えます。
大阪地裁( 平成7年11月29日判決)
X会社は、予め開発費の総支給額を定めた上、その範囲内で業務に有益な企画等を行った役員及び使用人に対し、その功績に応じて開発費を支給しており、雇用契約に基づく労務の対価として支給された賞与としての性質を有するものと認められ、給与等に該当する。
会社から役員への業務委託費が否認された事例(会社と同じ事業の例)です。
法人がその役員個人との業務委託契約に基づきその業務の対価として役員に支払った金員を役員賞与に該当するとした事例(昭和55年12月24日裁決)
https://www.kfs.go.jp/service/MP/03/0204070402.html#y03
しかし、他方では、税務訴訟を担当する役職:訟務官などを歴任された伊倉博氏の著書:「逆転裁決から読み解く 国税不服審判所が引いた判断基準」(中央経済社,2022年12月)においては、東京高裁(昭和51年5月24日判決)を根拠に、株主総会の決議があれば、会社から代表取締役への経営指導料として損金算入の可能性があるとの言及もあります。個人的には合点がいかないところはあるものの、経営が本業の代表取締役に対する経営指導料であっても損金算入の余地があるわけですので、技術が属人的な振付料も可能性はゼロではないとも考えます。
あとは、税務上の否認リスクと、得られるメリットを比較して、どう評価するか、ということになると考えます。
他の方のアドバイスも参考になさってください。少しでもご参考になりましたら幸いです。
山本先生
ご丁寧な回答と、過去の判例までのご提示、誠にありがとうございます。
法人から代表個人への業務委託は役員賞与とみなされるリスクが非常に高い旨、大変勉強になりました。
リスクを回避するために、スキームの変更を検討しています。
追加で1点、ご質問させてください。
法人から個人へ外注するのではなく、クライアントに対して、最初から請求書を2つに分けるという方法を取った場合はいかがでしょうか。
(例:1つのライブ案件であっても、クライアントに対して、『演出費』は法人名義で請求し、『振付費』は個人事業主名義で請求して、それぞれ直接入金してもらう形です)
先生が懸念されている業務区分の客観的合理性について、補足させていただきます。
既存曲のフォーメーション変更のための振付アレンジなどは「ライブ演出」の範疇ですが、まっさらな新曲に対するゼロからの振付制作は、演出とは異なる作曲家がゼロからメロディを作るのと同じような、個人の才能による全く別の業務であるという認識があります。
ただ、このように実態を主張して請求先を分けたとしても、客観的合理性としては、やはり少し苦しい言い訳と捉えられてしまうものでしょうか?
ちなみに、設立する法人はその身内が代表1名のみで、従業員はゼロ(外部スタッフへの外注はあり)という前提になります。
このように、法人と個人の間で資金移動を発生させず、それぞれクライアントと直接取引を行う形であれば、否認リスクはクリアできると考えてよろしいでしょうか。
お手数ですが、先生の客観的な見解を再度お伺いできますと幸いです。
山本快夫
最初から請求書を2つに分けるという方法を取った場合はいかがでしょうか。
それぞれクライアントと直接取引を行う形であれば、否認リスクはクリアできると考えてよろしいでしょうか。
↓
それぞれ第三者のクライアントとの契約となりますので、税務上の問題はほとんど無くなると考えます。
個人の才能による全く別の業務であるという認識
↓
当初のご質問の前提においては、振付料が属人的なことも考慮しても、設立法人の役員となる場合は、なお税務上のリスクは変わらないと個人的には考えます。
また、先ほどご紹介いたしました伊倉博氏の著書での言及についても、代表ひとり会社とのことですので、代表個人の才能に依拠する会社となり、そこから振付制作部分と振付アレンジ部分と客観的に合理的に区分して代表個人に業務委託できるのか否か、また、株主もひとりでしょうから株主総会の決議がたとえあったとしても、合理的に客観的に疎明・説明することがかなり苦しいと考え、個人的には税務上のリスクは大きいと考えます。
宜しくお願い致します。
山本快夫
整理させていただきます。
基本的には、会社から役員への外注費は、明らかに取締役としての職務に含まれない、特殊なものであることを合理的に客観的に疎明・説明できれば、外注費として損金算入できると考えます。
しかし、会社から代表役員への外注費は、税務上かなり厳しいものと整理しています。さらに社長ひとり会社となると余計に厳しくなり、役員給与または役員賞与と扱われるリスクが高かまると考えます。
宜しくお願い致します。
山本先生
再度のご回答、そして大変わかりやすい解説を誠にありがとうございます。
やはり、法人から個人への外注という形にすることは、税務署から見るとリスクが高いということですね。よく理解できました。
クライアントと別々に直接契約する形であれば問題ないとのことですので、法人と個人でお金を動かすのはやめて、発注元に契約を分けてもらう方向で進めようと思います。
判例なども踏まえて、専門的でとても現実的なアドバイスをいただけて本当に助かりました。
一人で悩んで考えてずっと答えがでなかったので、本当に助かりました!ありがとうございました!
山本快夫
少しでもご参考になりましたら幸いです。
本投稿は、2026年09月20日 19時50分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。







