業務委託と給与の産業医業務の混在下での個人事業主化
【質問の要約】
1. メインの給与所得(健診医・産業医)がある中で、別口の業務委託での産業医報酬(年約80万円)を個人事業主化して事業所得にできるか。
職務内容が給与所得側と重複している場合、否認されるリスクはあるか。
2.少額の定額交通費の適切な処理方法。
3.売上100万円未満での青色申告特別控除適用の妥当性。
【現在の状況】
現在、常勤で健診センターで勤務しており、健診業務のほかにセンター以外での複数事業所の産業医業務も含まれています。
この常勤先と、他の外勤先から合計年間1,300万の給与所得を得ています。
これとは別に、今年から産業医事務所からの業務委託として年間約80万ほどの報酬を受け取る見込みです。企業との直接の契約はしておりません。事務所からは企業訪問日には1日1000円の交通費もいただいております。
今後産業医事務所からの報酬は拡大する見込みではありますが、最大でも200万程度と思います。
【相談したいこと】
1. 事業所得としての妥当性:
メインの給与所得(健診センター)の中でも産業医業務を行っていますが、それとは別に受託している上記報酬を事業所得として開業届を出し、青色申告することは可能でしょうか?
「給与所得に付随する雑所得」とみなされるリスクはありますか?
2. 交通費の扱い:
1日1,000円の定額交通費を頂いていますが、これは事業所得の「売上」として計上し、実際にかかった交通費を経費として差し引く処理でよろしいでしょうか。
3. 青色申告の準備:
現時点で年間売上が100万円に満たない規模ですが、青色申告特別控除(55万または65万)を目指すことは税務上のメリットや妥当性の観点から推奨されますでしょうか。
税理士の回答
給与の他に、報酬を受け取っている場合、その報酬を事業所得として扱える可能性は0ではありません。しかし、現在はハードルが高くなっています。
1. 事業所得としての妥当性と否認リスク
年間の報酬額が300万円以下の場合、事業所得として認められるためのハードルは以前より高くなっています。
国税庁の通達(所得税基本通達35-2)により、副業収入が300万円以下で、かつ「記帳・帳簿保存」がない場合は原則として雑所得に分類されます。
メインの給与所得でも産業医業務を行っている場合、税務署から「給与所得に付随するアルバイト(雑所得)」とみなされるリスクがあります。事業所得として認められるには、以下の「事業性の要件」を客観的に示す必要があります。
自己の責任と計算において独立して行われていること。
営利性・有償性があり、継続的に反復して行われていること。
相応の設備(個人事務所、専用PC等)や帳簿書類の備え付けがあること。
開業届を出し、複式簿記で記帳を継続していれば、300万円以下でも事業所得として申告すること自体は可能です。ただし、税務調査が入った際に「給与所得と明確に区分された独立した事業である」ことを説明できる準備(契約書や業務報告書の保管)が必要です。
2. 交通費の扱い
1日1,000円の定額交通費の処理方法は、ご認識の通りで問題ありません。
売上計上: 業務委託(事業所得・雑所得)の場合、支払先から受け取る交通費や実費弁償分は、原則として「総収入金額(売上)」に算入します。
実際に支払った交通費(電車賃、ガソリン代等)を「旅費交通費」として経費計上します。
支給額(1,000円)と実費に差額があっても、そのまま収益・費用として処理して差し支えありません。
3. 売上100万円未満での青色申告の妥当性
売上100万円未満(利益も同程度)の規模で、55万・65万円の青色申告特別控除を受けることについては、以下の観点から検討してください。
例えば利益80万円に対し65万円の控除を適用すれば、課税対象額が15万円まで圧縮され、高い所得税率(給与所得1,300万円の場合、所得税率は33%程度)が適用される先生にとっては大きな節税になります。
利益に対して控除額の割合が大きすぎる場合、税務署の「お尋ね」や調査の対象になりやすい傾向はあります。特に「事業実態が乏しいのに控除だけ受けている」と判断されると、事業所得自体を否定される(雑所得へ更正される)リスクがあります。
将来的に売上200万円程度まで拡大する計画があるなら、今のうちに青色申告の体制(複式簿記)を整えることは妥当です。
ただし、国税庁:事業所得と雑所得の区分に関する通達を念頭に、帳簿の作成・保存を徹底してください。
まとめ
事業所得化: 可能ですが、売上300万円以下かつ給与業務との重複があるため、記帳を完璧に行い「事業」としての体裁を整えることが必須です。
交通費: 「売上」に含めて、実費を「経費」にする処理で正解です。
青色申告: 節税効果は高いですが、否認リスクを最小限にするため、専用の銀行口座や会計ソフト(マネーフォワード クラウド確定申告やfreeeなど)を利用して、客観的な証拠を残すことを強く推奨します。
なお、給与と報酬の共通経費については、明確に区分し按分しなければなりません。
ご回答ありがとうございます。
給与所得側との重複リスクなど非常に具体的で分かりやすい解説をいただき感謝しております。先生のアドバイス通り、まずは事業としての体裁を整えることが先決だと痛感いたしました。否認リスクを最小限にするため、専用の銀行口座の活用や会計ソフトの導入を行い、客観的な証拠(複式簿記での記帳、契約書や業務報告書の保管)を徹底する準備に入りたいと思います。
自分一人では判断に迷う部分も多かったのですが、専門的な視点から指針をいただけて大変助かりました。また具体的にお力添えをいただく機会がございましたら、その際はぜひよろしくお願い申し上げます。
参考になって良かったです。よろしくお願いいたします。
本投稿は、2026年01月07日 17時58分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。







