土地の生前贈与
余命が短い別居している父がおります。
現在父と母が居住している土地・建物がありますが、2人とも施設に入所予定です。
相続人は重度の認知症の母と自分の2人です。
母が認知症のため、先に不動産を自分に生前贈与してから売却を考えています。
その場合に贈与時と相続時かかる税金を教えてください。
その他の預貯金等はほぼありません。(30万円程度)
不動産情報
固定資産税評価額:1,400万円(建物は築41年のため価値なし)
路線価:約1,770万円(145,000円/1平米 122平米の土地)
父が購入した際の価格:2,000万円〜4,000万円(現在確認中)
売却査定額:2,000万円
以上となります。ご教授願います。
税理士の回答

竹中公剛
早めに相続税精算課税制度を行って贈与ください。
或いは遺言書の作成か。
下記参照。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103.htm
お母様の認知症の場合の、遺産分割協議は難しくなるでしょう。弁護士に聞いてください。
ご回答ありがとうございます。
遺言書の作成は現在進めております。ただ、公正証書遺言を作成するのに父の余命が間に合うかどうかといったところだったので、同時に生前贈与をした方がいいのではと考えました。
その場合、その後すぐに売却をしたいのでその場合に譲渡取得税等がかかるかなどを確認したかったところでございます。登記税等は承知しております。

米森まつ美
お父様が元気なうちは
1 お父様が不動産を売却する
2 お父様から貴方に不動産を贈与し、貴方が不動産を売却する
3 お父様が委託者、貴方を受託者とした当該不動産を対象とした「信託契約」を結び、最終的には貴方に対する相続財産とする。
などの方法があります。
1の場合(お尋ねではなかったですが、念のため)
お父様が居住していた自宅ですので「居住用資産の特別控除3000万円」の特例が利用できますので、仮に購入価格に等がわからず、取得価格を売却額の5%とした場合であっても、税金は算出されません。
売却代金はお父様の「資産」になるため、その資産を貴方に贈与するも、今後の入所費用にすることもできます。
お父様が亡くなられた際には、残った金員は相続財産になります。
認知症になったときに「後見人」が定まっているときには、後見人が貴方と遺産分割協議を行います。
「後見人」が定まっていない場合は、裁判所の申請し後見人を定めてもらいます。(報酬が必要になります)
2の場合
① 贈与の時点
贈与税の対象となります。
暦年の贈与の非課税枠(110万円)を超える場合は、10%~55%の高い税率になりますので、相続税の計算の際に当該贈与を含める「相続税精算課税」を活用されると、税負担は軽くなります。
相続には、当該贈与した不動産の価格も含めて相続税の計算を行うことになります。(相続時精算課税でない場合も、死亡前7年分の贈与も含めて相続税の計算は行います)
相続の際には控除額が、
基礎控除3000万円 + 法定相続人数×600万円となっていますので、相続財産が、ご質問の内容だけですと、税額は発生しないと考えます。
② 譲渡の時点
譲与を受けた資産を譲渡した場合は、譲渡所得となり所得税が課税されます。(所得税15.32% 地方税5%)
貴方が居住していた不動産ではないため、「居住用資産の特別控除3000万円」は利用することはできません。
また、無償で取得した資産であるため、資産の購入金額を「取得費」とすることはできませんので、譲渡価格の5%を取得費とすることになるため、所得税等の負担が増加すると考えます。
3の場合
信託された不動産は、一旦あなたの名義になりますが、その時点で贈与税などは課税されません。
当該不動産にかかる「利益」は委託者であるお父様に帰属しますので、「居住用資産の3000万円控除」を受けられるうちに譲渡するか、賃貸などに転用するか(3000万円控除は受けられなくなります)あなたの判断とし、かつ、委託者であるお父様がお亡くなりになったときは、貴方が相続するとした信託契約を締結する方法があります。
具体的に売買の手続きが進んでいない時などは、活用されるのも一つの方法となります。
米森先生
ご丁寧な説明ありがとうございます。
父の余命が1ヶ月程の診断を受けているため、遺言書の作成は早急に進めているところではあります。
先日遺言相続相談をした際に、相続をした土地を売却した場合は、被相続人が取得した際の取得費が適用になるので、相続後に売却した後でも税金はかからないだろうと説明を受けたのですが、そちらは間違えでしょうか?
現時点では土地の売却については不動産会社に査定依頼をしただけですので、家族信託については早急に検討してみようと思います。

米森まつ美
相続をした土地を売却した場合は、被相続人が取得した際の取得費が適用になるので、相続後に売却した後でも税金はかからないだろうと説明を受けたのですが、そちらは間違えでしょうか?
⇒ 間違いではありません。
相続の時はそのような考え方になりますが、「生前贈与」となると、贈与税のほかに、譲渡所得の税金がかかってしまいます。
「余命1カ月」との話であっても、「遺言書」の作成が可能であるならば、お父様の意思があるのであれば、お父様が売却するのもよいと考えます。(居住用住宅等の3000万円特別控除を利用できるため)
私の父も癌で余命が宣告された時に、不要な土地建物を父が判断できるうちに売却し、現金化した関係で相続が楽になったことがあります。父のおかげで、残された母の生活費にすべて充てることができました。
米森先生
再度のご回答感謝いたします。
大変分かりやすく理解できました。
当方も膵臓の末期癌で、母が認知症のため、今後の母の施設代や医療費のためにもできるだけ節税をしたいと考えて動いております。
とりあえず自筆遺言を作成して、現在公正証書遺言を行政書士さんに依頼をしました。
同時にもし出来れば売却して現金化した上で相続できないかと、不動産業者にも掛け合っているところです。
なんとかいい方向に向かうよう尽力しようと思います。
先生ご自身のお話までして頂いて気力が湧いてきました。ありがとうございました。

米森まつ美
お父様のご病気、心配ですね。お母さまのことが心残りにならないよう、大変でしょうが頑張ってください。
相続の後の売却の場合、購入金額が不明の場合であっても「空き家特例」なども利用することができます。
ただし、相続の場合、配偶者やお子様は「遺留分請求権」があります。
お母さまが認知症の場合は、後見人がつく可能性があり、後見人の目的は「財産の保全」となるため、遺留分相当の金銭がないと遺言書で仮にあなたに不動産を相続させると記載しても、不動産が共有財産とされる可能性があります。
そうなりますと「売却」も難しくなるため、なるべく早く不動産屋さんに譲渡先を見つけていただき、お父様が直接売却できるようにした方がいいかもしれません。
とはいえ、あまり無理をなさいませんように。
本投稿は、2024年05月07日 05時58分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。