母の生前に父の遺産分割をした場合、空き家3,000万円特別控除は使えないのでしょうか?
父が約14年前に亡くなりました。
父の相続人は、母・姉・私の3人でした。
父名義の自宅(土地・建物)は、父の死亡後も相続登記をせず、母がそのまま一人で住み続けていました。母は2年前にサ高住に入居しましたが、家財道具等は残したままで、昨年9月に母が亡くなるまで空き家の状態でした。
父が亡くなった当時、母・姉・私の3人で遺産分割協議をせず、長期間父親名義になっていました。
母は生前、父より自分が死んだら土地建物は息子であるわたしに譲ると話していたことから母が高齢になり、認知症等で判断できなくなったり亡くなったりする前に、父の遺産をきちんと整理しておく必要があると考え、昨年5月に母・姉・私の3人で正式な遺産分割協議を行い私名義に相続登記しました。
その約4か月後の昨年9月に母が亡くなり、私は今年の5月にその土地・建物を取り壊して更地にし、売却しました。
ここで疑問があります。
父の遺産分割協議を母の生前に行ったため、民法909条の遺産分割の遡及効によって、父の死亡時に私がその不動産を取得したことになるのでしょうか。
もしそうだとすると、
「母が亡くなった時点では、私は母からその不動産を相続していないため、空き家特例の『被相続人から相続または遺贈により取得した』という要件を満たさない」ことになるのでしょうか?
質問をあらためて整理しますと。
① 母の生前に父の遺産分割協議を成立させたことにより、母を被相続人とする空き家3,000万円特別控除が適用できなくなるのでしょうか?
② もし適用できないのであれば、「母の生前に遺産分割した場合」と「母の死亡後に遺産分割した場合」で空き家特例の適用が変わる根拠となる法令・通達等はありますでしょうか?
③ このようなケースについて、税務実務上の取扱いや国税庁の質疑応答・裁判例等をご存じでしたら教えてください。
なお、父が亡くなったのは約14年前であり、当時は現在の空き家3,000万円特別控除自体が存在していませんでした。
また、母がその家に居住していた期間やサ高住入所後の状況など、空き家特例のその他の要件について確認できる資料はすべて揃っています。
問題は、「父の遺産分割を母の生前に行ったことによって、母から相続した不動産ではないと扱われるのか」という一点かと思われます
何卒よろしくお願い致します。
税理士の回答
結論として、今回の事実関係では、母を被相続人とする空き家3,000万円特別控除の適用は難しいと考えます。
父の遺産分割には民法909条の遡及効があるため、ご質問者は父から土地建物を相続したことになります。父を被相続人とすれば、相続から譲渡までの期限等を満たしません。一方、母を被相続人とすると、母の生前に父の遺産分割が成立しているため、母の死亡時には母は当該不動産について持分を有しておらず、ご質問者も母から土地建物を相続していません。このため、措法35条3項の「相続又は遺贈により取得した」という要件を満たさないと考えます。
なお、父の遺産が未分割のまま母が死亡した場合は事情が異なります。最高裁平成17年10月11日決定では、第一次相続で母が取得した遺産共有持分権は実体上の権利として母の遺産を構成するとされています。また、国税庁も民法909条の遡及効は分割前の共有状態の存在まで否定するものではないとの取扱いを示しています。
したがって、生前分割と死亡後分割の違いは、母の死亡時にこの共有持分権が母の遺産として存在していたかにあると考えます。なお、死亡後の分割の場合に空き家特例をどこまで適用できるかを直接示した公表事例は、私が確認した範囲では見当たりませんでした。
山本快夫
お世話になります。
ご質問に対する回答)
↓
①
空き家特例は、要件を満たさず、適用はできないものと考えます。
空き家特例について、簡略的な説明として「一人暮らしだった被相続人から相続する」ことが要件となります。
お父さまからの相続ですと、期限の要件と同居人(お母さま)有りのため要件を満たしません。
②
お母さまの生前分割か相続発生後の分割か、いずれの場合も、お父さま→お母さまの分割が必要となります。
その後、お母さまからの相続となるため、期限の要件や、同居人の要件を満たすものと考えます。
ただし、サ高住への入居について要介護認定等の特定事由に該当する必要があります。自立できる一般型のサ高住の場合は要件を満たなさいと考えます。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
③
下記の事例(東京地裁令和6年9月2日)が少し参考になるものと考えます。
―――――――――――
補足)
父の死亡時に私がその不動産を取得したことになるのでしょうか。
↓
前提から、「昨年5月に母・姉・私の3人で正式な遺産分割協議を行い私名義に相続登記しました」とのことですので、分割協議だけでなく相続登記まで適正になされていると考えます。
仮に、お母さまの死亡後分割であった場合、サ高住への入居について要介護認定等の特定事由に該当する前提で、お父さま→お母さま→質問者さまとすることで空き家特例を適用できたものと考えます。
被相続人の母を飛ばして、父→子という分割協議および登記をしたことで空き家特例を適用できなくなったことにつき、税理士に損害賠償責任があるとされた事例(東京地裁令和6年9月2日)があります。質問者さまのケースに当てはめますと、お父さまの分割協議がなされいない状況で、お母さまの相続発生後、税理士関与があり、父→子として分割協議および登記をしてしまい、相続税の手続後の受任していない譲渡所得につき、税理士の説明・助言義務を認めた内容です。
従いまして、仮に、生前分割でも死亡後分割でも、お父さま→質問者さまの分割協議および登記してしまった場合、ハードルは高いものの分割協議のやり直しが税務上も例外的に認められる(東京地裁平成21年2月27日)前提として、売却前に「抹消・再登記」を完了させ、お父さま→お母さま→質問者さまとすることができれば、空き家特例の適用の余地があるとも考えられますが、仮に協議をやり直したとしても、新たな処分行為扱いとなり特例適用は受けられない(東京地裁令和6年9月2日)と示されています。
他の方のアドバイスも参考になさってください。少しでもご参考になりましたら幸いです。
早速丁寧なご回答をいただきありがとうございます。
多分難しいとは思っていましたがやはりかなり厳しそうですね。
こちらにはなんの悪意もなくただ少しでも揉め事を少なくしたいとの思いからやったことでこれだけの差が出ることに理不尽な思いを禁じ得ませんが法律的には認められないんでしょうね。
大変勉強になりました。
ありがとうございました。
山本快夫
ご丁寧にありがとうございます。
しかし、質問者さまに不利益はございませんので、税務署に事情を説明し、確認・相談されることも、おすすめ致します。
少しでもご参考になりましたら幸いです。
ありがとうございます。
山本先生のおっしゃる「不利益がない」というのは「相談するだけなら私に不利益になることはない」という解釈でよろしいんですよね?
控除が認められなければ長期譲渡所得税を支払わなければならないという悲しい現実は当然ながら変わりようがないですからね。
税務署に相談して控除が認められる可能性は少しでもあるのでしょうか?
山本快夫
言葉足らずで失礼いたしました。
はい。恐縮な表現となりますが、"ダメ元"で確認・相談されても、ご納得できるものと考えました。
特例の要件を満たさないと考えますし、調べた限りでは宥恕規定も見当たらず、難しいとは考えます。
宜しくお願い致します。
了解致しました。
何度もご丁寧にありがとうございました。
何度も恐れ入ります。
確認ですが3,000万控除の対象外となった場合、支払いべき譲渡所得の税率は長期譲渡所得の税率で間違いありませんか?
昨年5月に父親から私名義に変更してからは1年4カ月しか経過していないから短期譲渡に当たるということはないですよね?
これを最後の質問にしますので何卒よろしくお願い致します。
山本快夫
はい。質問者さまのお考えのとおり長期となります。
相続や贈与によって取得したときは、被相続人や贈与者の取得の時期がそのまま取得した相続人や受贈者に引き継がれます。
したがって、被相続人や贈与者が取得した時から、相続や贈与で取得した相続人や受贈者が譲渡した年の1月1日までの所有期間で長期譲渡所得か短期譲渡所得かを判定することになります。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3270.htm
宜しくお願い致します。
本投稿は、2026年09月26日 20時44分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。







