時間差で個人事業を法人事業へ統合したいとき
個人事業と1人社長法人両方を運営しています。
面倒になってきたので個人事業を法人事業と一緒にしたいと考えています。個人事業の事業主が私で従業員はいませんし、法人の代表者も私ですので、営業権だのM&Aだのの話は出てこず、単に、
①個人事業に属する資産などを法人に譲渡などする
②個人事業を廃業する、最後の所得税申告を済ませる
③個人事業時代の活動を法人名義で活動開始する(取引先には伝えますが、それ以外には特に手続きなし?)
という理解であっていますでしょうか?
何か注意事項があればご教授頂ければ幸いです。
税理士の回答

石割由紀人
ご提示いただいた手順は基本的に正しいですが、いくつか注意点や補足を挙げます。
① 個人事業に属する資産などを法人に譲渡する
譲渡の方法ですが、個人事業の資産(備品、設備、在庫など)を法人に譲渡する際、市場価値に基づいて適正な価格で売買を行う必要があります。これを「みなし譲渡」といい、個人事業主側では譲渡所得が発生する可能性があります。
簿価での譲渡についてですが、市場価値でなく簿価で譲渡する場合もありますが、この場合でも税務上の注意が必要です。不当に安い価格で譲渡すると税務調査の対象になる可能性があります。
契約書の作成ですが、法人との間で資産譲渡契約書を作成しておくことをおすすめします。税務上の証拠資料となり、後々のトラブル防止にもなります。
負債の取り扱いですが、個人事業に属する負債(借入金など)がある場合、それを法人に引き継ぐことも検討してください。ただし、法人がその負債を引き継ぐには金融機関の承認が必要です。
② 個人事業を廃業し、最後の所得税申告を済ませる
廃業届の提出
所管の税務署に「個人事業の廃業届」を提出します。また、必要に応じて都道府県税事務所や市区町村にも同様の届出が必要です。
所得税の申告
最後の確定申告で、廃業時点までの収入・費用を報告します。資産の譲渡が発生している場合、その所得も申告します。
青色申告特別控除
青色申告をしている場合、廃業年も適用されるため、控除を忘れずに申告に含めます。
③ 個人事業時代の活動を法人名義で活動開始する
取引先への通知
取引先に対して、法人化に伴う名義変更を速やかに通知します。契約書や請求書の名義変更が必要です。
銀行口座の変更
法人名義の口座に取引を切り替える手続きが必要です。
各種登録の更新
必要に応じて、事業に関わる許認可や届出が個人名義から法人名義に変更する必要があります(例: 古物商許可、食品営業許可など)。
その他の注意点
法人設立時の「営業権」
法人が個人事業の活動をそのまま引き継ぐ場合、営業権(のれん)を法人の資産として計上する選択肢もあります。ただし、これを計上すると法人側での償却が必要になるため、会計処理を慎重に行う必要があります。
社会保険の対応
個人事業主から法人化すると、代表者であるあなたが社会保険(健康保険・厚生年金)の加入義務が発生します。
法人税の開始
法人としての事業開始に伴い、法人税や消費税の申告が発生します(特に消費税の課税事業者かどうかを確認してください)。
これらを勘案すると、ご提示の流れは概ね問題ありません。
本投稿は、2024年11月30日 13時45分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。