分社化した事業の株価について
親族で事業を展開しているのですが、この度、私の一族に事業の一部を分社化することになりました。
その事業は私が長年担当してきた事業なのですが、本業ではなく年間の営業利益は1000万円程度です。本業の方は毎年数億の営業利益が出ていますし、現預金も10億円以上持っています。
私の家族は本業の方の株を30%程度持っており、これも同時に親族(本家)に売却する予定なのですが、これが相続税評価額で5億円程度です。親から贈与されてきた株なので取得価額はほぼ0円なので、これを相続税評価額で売ってしまうと5億円に対して20%の課税が発生していまいます。
そこで、私が担当している事業に運転資金として4億円程度現金を付けてもらったうえで、会社分割して子会社化し、その子会社株を1億円程度で私の息子が買い受けて、親会社の株式30%は、1億円程度で安く売ってあげるという案が出ました。
こうすることで、相続税評価額5億円の株式のところを、現金は4億円にはなってしまいますが、長年担当してきた事業が手に入りますし、課税も1億円×20%で2000万円になるかと存じます。本家としても、多額の現金を借り入れる必要がなくなるので、助かるといっています。
私の担当している事業は、利益が出ているものの、競争が激しい分野なのでそれほどの高値が付くような事業ではありません。ただし、多額の運転資金がいるという訳ではありません。
ここで疑問は下記です。
①4億円の現金がある会社を1億円で買い受けることは税務的に問題がないか?(売り手、買い手双方)
②30%とはいえ、株を持っている会社との取引は否認されないか?(問題があるのであれば、株を売ったに実施すればよいと思いますが、問題ないでしょうか?)
③株を相続税評価額より大幅に安く売ることに問題はありませんか?
ご意見をお願い致します。
税理士の回答
御社の決算書等とそのスキームの前提になっている株価計算方法を確認しないと適切な回答ができませんが、一般論としてお答えします。①の4億円のある会社を1億円で買い受けることは問題ないかという質問ですが、その株価が適正であれば問題ありません。分社した会社が現金4億円をもっていても負債3億円を持っていれば1億円が適正と言える場合があります。単純に現金4億円だけの会社ではないかと推測します。②の30%とはいえ株式を持っている会社との取引は否認されないか?という質問ですが、会社法に基づく法的手続きを適正にとっていただければ行為そのものの否認はありません。③株を相続税評価額よりも大幅に安く売ることに問題はありませんかという質問については、売る行為は会社法に基づき適正な手続きを行えば適法ですが、税務上は法人(売手)個人(買手)間の売買であれば時価と譲渡価額の差額が、寄付金と売却益で同時に計上され、寄付金は法人税法において損金算入規定の算定が必要です。一方買手の個人は法人からの贈与として一時所得が生じます。個人株主間の売買であれば適正とされる株価よりも低い価額で売買を行えば買手は安く手に入れることができたその経済的価値に贈与税が課税されます。個人(売手)法人(買手)間株主での売買においてはその価額が著しく低い価額の場合は売手は時価で売買があったものとして譲渡所得が課税されますので譲渡所得に対する税額は増えます。著しく低廉でない場合はその売買価額で譲渡所得が算定されます。また、法人は受贈益部分を法人税において課税されますのでご注意ください。いずれにしましてもこのスキームで何故記載の金額が算出され、その価額が本当に適正であるのか否かのチェックに注力していただく必要があるかと思います。
本投稿は、2020年03月29日 03時37分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。