支払調書の提出範囲について
法人間取引における源泉徴収と支払調書の関係について確認させてください。
国税庁のこちらのページ(https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hotei/2/01.htm)を拝見したのですが、法人に対して源泉徴収をしていない報酬についても支払調書の提出が必要になる点について教えてください。
1. 内国法人への報酬は原則として源泉徴収不要であるが、その場合でも支払調書提出が必要になるケースがある、という認識でよいか。
2. 源泉徴収してないもので、支払調書を提出すべき具体的な報酬の内容(例:業務委託料、コンサル料、顧問料など)について、どう判断すればいいか教えてください。
3.この認識をまとめた簡単な実務上の注意点があれば併せてご教示ください。
以上、よろしくお願いいたします。
税理士の回答
結論
相談者様の認識で正しいです。内国法人に対して源泉徴収をしていない報酬であっても、支払調書の提出が必要になるケースはあります。
判断基準は「源泉の有無」ではなく、「所得税法225条で支払調書の提出対象とされている“報酬・料金の性質かどうか”」です。
したがって、法人宛でも“人の役務提供の対価”であれば提出対象になることがあります。
実務では「誰に払ったか」より「何に対して払ったか」で判定するのが鉄則です。
理由
① 支払調書の提出義務の根拠
支払調書の提出義務は、「源泉徴収をしたかどうか」ではなく所得税法225条・施行令322条 に基づいて決まります。
つまり、
源泉徴収 → 源泉徴収義務(204条)
支払調書 → 提出義務(225条)
であり、別制度です。
よって「源泉していない=支払調書不要」ではありません。
1. 内国法人への支払いでも提出が必要なケースはあります。
特に次のような支払いは要注意です。
法人に対する支払いであっても、その実態が「人的役務の提供に対する対価」である場合、源泉徴収は不要でも、支払調書は必要となるケースがあります。
2. 支払調書が必要になりやすい具体例
原則「提出が必要になる可能性が高いもの」
(※相手が法人でも)
原稿料・執筆料
講演料・セミナー講師料
デザイン料・イラスト料
翻訳料・通訳料
士業報酬(税理士・弁護士・社労士等)
芸能・モデル・ナレーション等の出演料
コンサル料のうち、個人の知見・ノウハウ提供が本質のもの
これらは「人がやること」自体に価値がある報酬と判断されやすいためです。
原則「提出不要になりやすいもの」
(法人宛・法人業務として完結)
システム開発費(成果物納品型)
保守・運用費
請負工事代金
物品購入代金
広告出稿費(媒体費)
一般的な業務委託費(作業請負型)
これらは「法人の事業としての成果物・役務」であり、人的属性が前面に出ないためです。
重要な判断軸として、次の2点で判断してください。
①「その仕事は“誰がやっても同じ”か?」
→ YES:提出不要寄り
→ NO(その人・その専門性が価値):提出必要寄り
②契約の相手が“法人”でも、実際に特定の個人が前面に出ていないか?
→ 個人色が強い:提出必要寄り
ありがとうございます。
個人で源泉徴収するような報酬であれば、法人に支払ったとしても支払調書の提出が必要ということでいいでしょうか。
もし、法人に対する支払調書の提出漏れがあった場合、罰則等あるのでしょうか。
結論
① 相談者様の理解で概ね正しいです。
「本来、個人に支払えば源泉徴収の対象になる性質の報酬」であれば、
支払先が法人であっても、支払調書の提出対象になるケースがあります。
② 提出漏れに対する直接的な“罰金”は通常ありませんが、是正指導・提出命令・調査リスクはあります。
悪質・反復的な場合は、過料や加算税が問題になる余地もあります。
・支払調書の提出漏れがあった場合の扱い
原則的な扱いは以下の通りです。
即ペナルティ(罰金)が科されることは少ない
多くは税務署からの指摘・是正指導
後日提出の要請
で済みます。
ただし注意点として次のような場合は、リスクが上がります。
提出漏れが 多数・毎年継続している
源泉徴収の有無と絡んで 所得捕捉に影響している
税務調査で 意図的と判断される
この場合、
提出命令(所得税法242条)
過料(形式犯)
他の申告内容まで波及調査
といった展開になる可能性があります。
本投稿は、2025年12月11日 21時05分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。






