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任意組合契約を利用して措置法26条を適応させる

お世話になります。

医院を開業し、確定申告を行う準備をしていると措置法26条の偉大さが身に染みて感じました。

問題は売り上げが5000万円以下でないと適応されないというポイントです。

以前に医師と歯科医の兄弟が任意組合契約を結んで売り上げが8000万程度あるにもかかわらず折半して4000万として措置法26条を適応させたと聞いた事があります。一方で裁判になり否認されたという話も聞いたことがあります。

任意組合契約や匿名組合契約を利用してこの様な形で収入を流してパススルー課税の制度を利用して措置法26条を適応させる事は可能なのでしょうか。

実際の判例や問題点、可能性に関して教えて頂きたいです。
可能性が少しでもあるのでしたら実際にお礼をお支払いしてご相談させて頂きたいです。

よろしくお願いいたします。

税理士の回答

① 結論
任意組合・匿名組合を使って売上を分散させ、措置法26条(医療機関の特例)を“意図的に適用させる”スキームは、実務上ほぼ100%否認されます。過去の判例・裁判例でも、形式だけのパススルー分散はすべて否認されております。
「8000万円を4000万円に割って適用する」ような方法は、実現性ゼロ、リスク100%と考えてください。

② 理由
措置法26条の適用判定(売上5,000万円以下)は、“医師ごとの独立した医業収入”を基準にします。
任意組合は「民法上は共有事業」ですが、税務上は実質課税(所得税法基本通達)で、
→「誰の医業か」「誰の責任とリスクか」で判定します。
医業は極めて“個人性の強い事業”のため、
→ 形式的に組合を組んでも、医師個人が実質的に稼得した所得として課税されます。
→ 売上按分は原則認められません。

③ 否認された典型例(裁判例)
医師・歯科医師が行った以下のスキームは、すべて否認されています。
名目上の任意組合を作り、組合名義で売上計上
実際の診療行為は各医師個人
組合は実体がない、リスク・責任も個人
組合清算時に所得分配
→ 税務署は「形式のみ」であるとして個人課税(売上一本化)
→ 追徴・加算税の事例多数
特に医業については、“労務提供者=医師個人”のため、任意組合の実体がないと100%否認という扱いが確立しています。

④ なぜ医業は任意組合が認められないのか
医療行為は医師個人に専属する
賠償責任・リスクも個人
「他人と共同で診療する」という概念が税務的に成立しにくい
組合員が誰でもできる業務ではない(人的役務専属性)
→ 所得の帰属は医師個人に直結し、分散できない。

⑤ “合法的に分散できる余地”について
結論:ありません。
以下の行為はすべて否認対象です:
収入の付け替え(形式上の組合経由)
売上だけ流して、実務は医師本人
売上を家族・兄弟間で案分
名義だけの共同経営
→ 医業で措置法26条を目的とした組織スキームは、税務署が最も敏感に否認する典型です。

⑥ 逆に、認められうるケース(参考)
唯一の例外は実体のある共同経営のみです。
つまり、
診療体制
設備
スタッフ
リスク
経営決裁
を両名で実質的に行っている場合。
しかしこの場合でも、
→ 売上5,000万円以下に抑えるための分散は、節税目的と判断され否認されやすいですね
→ 医業の特例を“意図的に使う”形は非常に危険です。
現実的には、共同経営が完全に成り立つ医院は少なく、医師個人の売上と認定されることがほとんどです。

⑦ 実務的な安全策(正攻法)
措置法26条を使いたいのであれば、
売上5,000万円以下に収まる収支構造へ調整
法人化の検討(特に所得1,500万円超なら)
資産管理会社と役務会社の分離
医療法人化のタイミング最適化
など、“合法的な方法”での節税設計が現実的です。

良波先生
非常に分かりやすい解説をありがとうございます。
どれだけ頑張っても最終、租税回避目的とされたら終わりだというところで心が折れました笑
利益が増えてきたら先生のアドバイス通りに法人化やMS法人を利用して節税を設計していこうと思います。またご相談させていただく事もあるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。

本投稿は、2025年11月26日 18時45分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。

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