事業上以外の貸付金の債権放棄の可否について
当方は資本金300万の非上場企業です。
継続して取引のあった個人事業主(外人)の方へ、税金の支払いが間に合わないからと相談があり、納税資金を貸しました。
しかし、返済額が残っている段階で、相手が一度国外へ里帰りしてから連絡が一切取れなく行方不明となり、5ヶ月が経ってしまっております。
国内にあった自宅は残っているのですが帰っている形跡がなく、電話やLINEも全く連絡がつかなく、残った貸付金の処理に困っております。
そこで相談事項として
①ここからでも貸倒損失として損金にする方法はあるのでしょうか?
(もし損金にできる方法があれば、これからどのように処理を進め、いつ頃の時点でなら落とせるかもご教示いただけますと幸いです)
②仮に債権放棄した場合は全額寄付金となり一部損金にしかならないのでしょうか?
以上2点について、皆様のご意見を伺えればと思い投稿させていただきました。
何卒よろしくお願いいたします。
税理士の回答

菅原和望
こんにちは。
法人税法において貸倒損失は法人税法22条3項3号の損失の額に該当する場合に限って損金として計上することができます。
ここにいう「損失」とは、その貸付金債権の回収の可能性の一切がなく、客観的にみて債権が存在しないも同然とも判断できることを要します。
個人に対する貸付金について考えてみますと、その個人は逃亡し電話を通じず、生きているのかもわからないような状態であるのでしょう。
しかしながら、数日後、数年後にひょっこり顔を出して債務を履行してくれる可能性がまったくないと言い切ることはできません。
率直に申し上げれば、債権放棄に基づく損金計上は現実的には非常に困難で、貸倒損失として損金に計上したところで税務調査で指摘されること間違いありません。
また、一部の債権放棄は、債権の一部についてのみ絶対に返済が起きないことを証明して初めて損失として計上されることとなります。また、逆に考えれば、一部が回収できるのであれば、残りの部分も回収できる可能性があるのだから、債権全体として回収の可能性があると判断されることになります。
したがって、現実に一部を債権放棄して貸倒損失を計上するには、裁判所の判断等に基づいて法的に債権が切り捨てられてしまう場合に限られます。
一般的な感覚からは遠く離れてはいるのですが、税法上においては原則として、貸倒損失は相手の死亡や消滅(法人の場合)があってはじめて計上が検討されるほど厳格なものとして取り扱われています。
会計帳簿に記載しておくことに違和感があるようであれば、会計帳簿上では貸倒損失として計上し、法人税の申告書上で貸倒損失を自己否認する形で処理するようにしてください。
もしくは、ご指摘の通り、寄附金の損金算入限度額を超える部分の金額の全額を寄附金の損金不算入額として取り扱うこととなります。
本投稿は、2024年11月15日 11時10分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。