海外駐在時の外貨給与(約18万SGD)を日本へ戻す際の為替差益課税について
10年前のシンガポール駐在時(非居住者期間)に現地で得た給与(SGD預金:約180,000 SGD)があります。現在は日本に帰国し居住者となっていますが、この資金を日本国内の自分名義の口座へ戻すにあたり、税務上の判断についてご相談させてください。現在、現地銀行(DBS Treasures)の優遇レートを活用した以下の2つの送金パターンを検討しています。
【パターン①:SGDのまま送金】
シンガポールから日本の口座へ「SGD(外貨)のまま」電信送金し、帰国後の居住者となった現在、日本国内の銀行で円転(両替)する。
【パターン②:現地で円転して送金】
シンガポール現地の銀行(DBS Treasures)の優遇プレミアムレートを用いて「現地で日本円に両替」した上で、日本の口座へ円建てで送金する。
【質問事項】
1. パターン①(SGD送金)の場合、外貨のまま移動させるため送金時点では利益が確定せず、また日本国内で円転する際も「10年前の非居住者期間に発生した外貨資産」であるため、日本の所得税法上、為替差益(雑所得)としての課税関係は生じないという認識で合っていますでしょうか。
2. パターン②(現地円転)の場合、両替(決済)のタイミングが居住者となった現在であるため、税務署から「10年前の給与受領時」と「今回の両替時」のレート差を雑所得として課税されるリスクはあるでしょうか。「元々が非居住者時代の正当な給与である」という証明(当時の給与明細等)があれば、現地で円転しても日本での課税を免れることは可能でしょうか。
実務上、どちらのパターンが税務署への説明がスムーズで、課税リスクが低いかアドバイスをいただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。
税理士の回答
山本快夫
ご質問に対する回答)
↓
あくまでも私見となります。
パターン①もパターン②もどちらも、文理解釈による法解釈上は今回のケースも為替差損益を認識することになり得るものの、現実的な課税実務上は為替差損益を【認識していない】・・・と個人的に整理しています。
そのため、税務上認識しない為替差損益について、申告不要と考えます。
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補足)
海外赴任者が、外貨建給与等により獲得した外貨につき帰国後に円転した場合、為替差損益を認識するのか否か、つまり、円貨から外貨への交換という起点が無くても、当初から外貨で獲得したものであっても(往復でなくても)、初めて円転するときに為替差損益を税務上認識するのか否か、現状は不明瞭と考えます。
外貨から外貨に交換した別件では、最高裁判決(2026年6月16日)があった何年も前から、国税庁は為替差益となる旨を質疑応答事例として注意喚起してきたにもかかわらず、今回のケースについては、国税庁の質疑応答事例や注意喚起はありません。
実務家の間でも見解が分かれている状況(※)だと、個人的には認識しています。
※例)
税務専門雑誌のデータベース→認識しない
Big4ファームの一つのコラム→認識する(→総平均レート)
その他web上で見解の相違が散見されます。
また、個人的には、海外赴任者の課税洩れや日本移住外国人の課税洩れといったニュースも見聞きしたことがなく、租税法学者による議論・解説も見当たらず、裁判事例や裁決事例も見当たりません。
以上から、あくまでも私見とはなりますが、文理解釈による法解釈上は今回のケースも為替差損益を認識することになり得るものの、現実的な課税実務上は為替差損益を認識していない・・・と私はとりあえず整理しています。
もちろん、日本の居住者となる帰国前・入国前に円転すれば、この悩ましい問題は生じないですが、外貨保有のまま帰国される方は確実に存在します。たとえスプリット・ペイ方式(任地使い切り方式)で外貨支給が少なかったとしても、外貨のまま貯蓄・保有して帰国するケースはしばしば見受けられます。
他にも、
・外国人が初めて日本に入国し居住者となってから保有する外貨を円転するケース
・非居住者が保有する外貨を相続した居住者の相続人が初めて円転するケース
など、本ケースと類似する不明瞭な税務上の扱いもあるため、国税庁の公式な見解を示してほしいと考えます。
参考)
外貨預金から円貨預金への振替は、所得税法第57条の3第1項に規定する外貨建取引に該当するとした裁決事例(平成28年6月2日裁決)
https://www.kfs.go.jp/service/JP/103/07/index.html
ただし、この事例は円貨から外貨への交換という起点が「有る」ケースで、今回のようなケースの参考にはなりません。
他の方のアドバイスも参考になさってください。少しでもご参考になりましたら幸いです。
山本快夫
Big4ファームは多くの海外赴任者を抱える大企業に関与していますし、税務専門雑誌は課税庁への取材等の情報収集に長けています。
また、少なくとも私の周囲の海外赴任者について、帰国時に申告しているものは一人もおらず、個人的にも大変関心が強い問題のひとつとなります。(勤務先は従業員の税務には関知せず・注意喚起もしていないケースが多いと感じています)
宜しくお願い致します。
外貨給与の円転に関する課税関係については、自分なりに色々調べてみても、申告の要否の見解が分かれており、混乱していたのですが、先生方のご説明により、実務上の整理や現場での感覚を具体的に理解することができました。
特にパターン①・②いずれも「為替差損益を認識しない」という実務上の扱いが一般的であること、国税庁の質疑応答事例が存在しない背景や、実務家の間で見解が分かれている状況について、非常に腑に落ちる形で把握することができました。
今回のご回答は、自分が今後どのように手続きを進めるべきかを判断するうえで、大きな助けとなりました。ここまで丁寧にご説明いただき、本当にありがとうございました。
山本快夫
少しでもご参考になりましたら幸いです。
本投稿は、2026年09月02日 22時31分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。






