節税のための海外起業
節税(社保も含む)のために海外に会社を設立したいのですが、所得に対しての税金と社保が少なく、かつ、日本にいる日本人が会社設立をしやすいのはどの国でしょうか?
順序として、日本人の場合、日本に会社がないのに、いきなり海外で会社(必ずしも法人でなくてよいですが)を設立するのはそもそも無理なのでしょうか?
税理士の回答

石割由紀人
海外での会社設立を通じて節税を検討する際、所得税や社会保険料が低い、もしくは免除される国を選ぶことが重要です。一般的に、タックスヘイブンと呼ばれる国々は法人税やキャピタルゲイン税が低い、または存在しないため、節税目的で利用されることがあります。例えば、ケイマン諸島やバミューダなどが該当します。
しかし、これらの国で会社を設立する場合、日本の税法である「タックスヘイブン対策税制」の適用を受ける可能性があり、結果として日本での課税が行われることがあります。そのため、単純に海外に会社を設立するだけで節税が実現するわけではありません。
また、社会保険料に関しては、日本と社会保障協定を結んでいる国であれば、二重加入を防ぐ措置が取られています。例えば、アメリカやドイツなどが該当します。これらの国で会社を設立し、現地で社会保険に加入することで、日本での社会保険料負担を軽減できる可能性があります。
日本人が海外で会社を設立すること自体は可能です。しかし、設立手続きや必要な書類は国によって異なり、現地の法律や規制を遵守する必要があります。また、日本国内に拠点がない場合でも、海外で会社を設立することは可能ですが、設立後の運営や管理において、日本国内での活動が多い場合は、日本の税法や社会保険の適用を受ける可能性があるため、注意が必要です。
石割先生、ありがとうございます。
ということは、日本にいて、「会社は外国にあるからそこで納税しています」は通用しないということですか? それが通用する国を見つけ出したいです。
それが無理ならば、日本の会社はマイクロ法人にしておいて、ビザを取得して本当に外国へ行って、大きな売上は外国で売り上げるとすると、設立しやすいのはどの国ですか(高層建築だらけのところより、観光地のような国が望ましいです)? 税金と実行に伴う費用が日本のそれより高くなっても、社保を払わずに済むならばよいです。
こう考えるのは、日本で多少稼げて納税しても、その使い道が高齢者に隔たっているとすると、日本の社保は詐欺なので、負け組だと考えるからです。人にインチキを仕掛けようとしても、すり抜けられるという国家との知恵比べです。
もちろん、業種は属地的なものではなく、ワールドワイドな業種です。

石割由紀人
「日本に住みながら外国に会社を設立し、その国で納税している」と主張する場合、日本の税制、特に居住者課税に基づき、以下の点を考慮する必要があります:
日本の居住者課税
1. 居住者の定義:
- 日本に住所がある、または1年以上住む予定がある場合、税法上「居住者」とみなされ、日本国内外で得たすべての所得に対して課税されます。
- 日本に「住所」がなくても、過去10年間のうち5年以上日本に住んでいた場合、非居住者でも一定の所得に課税される可能性があります。
2. タックスヘイブン対策税制:
- 日本の居住者が海外に設立した会社の利益を、事業実態が薄い場合、日本国内の所得としてみなされ課税されます。
これらを避けるには、物理的に日本を離れ、税法上の「非居住者」となる必要があります。これには、日本の住所を完全に削除し、住民票を抜くことが含まれます。
ビザを取得して実際に外国に移住する場合
おすすめの国(観光地で設立しやすく、税負担が低い国):
以下は、観光地で会社設立が容易で、税制面でのメリットがある国々です。
1. ドバイ(UAE):
- 特徴:法人税・所得税がゼロ、社会保険加入義務なし。
- 設立の容易さ:フリーゾーンを活用すれば、現地パートナーなしで外国人が100%会社を所有可能。
- 生活環境:観光名所も多く、治安が良い。
- 注意点:物価が高い。
2. マレーシア(ラブアン島):
- 特徴:法人税が3%(一定条件下)、社会保険料が非常に低い。
- 設立の容易さ:ラブアン会社として設立可能。
- 生活環境:熱帯観光地であり、英語も通じやすい。
- 注意点:海外所得には課税されないが、国内所得に課税される場合がある。
3. タイ(バンコクやプーケット):
- 特徴:法人税が20%、外国人でも法人設立が可能。
- 設立の容易さ:BOI(投資奨励委員会)支援を活用すれば特典が多い。
- 生活環境:観光地として非常に魅力的。
- 注意点:一定の現地資本が必要になる場合がある。
4. モーリシャス:
- 特徴:法人税15%、一定の条件で非課税。
- 設立の容易さ:外国人の法人設立が可能。
- 生活環境:観光地であり、気候が温暖。
- 注意点:地理的に日本から遠い。
5. パナマ:
- 特徴:海外所得は非課税。
- 設立の容易さ:外国人でも会社設立可能。
- 生活環境:観光地でありながら、ビジネス環境も整っている。
- 注意点:税務申告の制度が複雑な場合がある。
社保を回避するためのポイント
- 移住後に現地の社会保険制度に加入すれば、日本の社会保険料を回避できます。
- 日本の住民票を抜くことで、国民健康保険や厚生年金からも外れることができます。
- ただし、日本との社会保障協定がある国に移住する場合、一定条件で日本の社会保険料が引き続き適用されることがあります。
「詐欺」と「知恵比べ」の境界線
質問者様の目的が、合法的に税負担を最小化することであれば、それは正当なタックスプランニングとして認識されます。ただし、意図的に日本の税法を回避しようとする行為が明らかになると、「脱税」とみなされるリスクがあります。
石割先生、重ね重ねありがとうございます。
最後に1つ質問があります。
日本で会社を設立して、それに政治団体を併設して、売上は寄付金・入門料・協賛費・支援金などの名目で後者で上げると政治団体には課税されないのですか?(会社と政治団体があって、恣意的に売上を分けていたら問題になりますか?)

石割由紀人
日本では、政治団体に関連する収入は通常、課税対象外とされています。ただし、その仕組みを使って会社の収益を政治団体に「意図的に移転」させる行為は、税法上・法律上問題視される可能性があります。以下に詳しく説明します。
政治団体の収入と課税
1. 政治資金規正法によれば、政治団体が受け取る以下の収入は非課税です:
- 寄付金:個人や法人からの寄付。
- 入会金や会費:支持者からの会費。
- 協賛費や支援金:イベントや活動への協賛。
2. 非課税の理由:
- 政治団体の活動は「公益目的」とみなされるため、税制上優遇されています。
- ただし、政治団体が営利活動を行い、その収益を政治活動に充てる場合、その営利部分には課税される可能性があります。
問題となるケース
1. 売上の恣意的な分割:
- 会社の売上や利益を政治団体に移し、「寄付金」「協賛費」などの名目で非課税化する行為は、税務署や監督当局に「脱税」または「利益操作」と判断される可能性があります。
2. 寄付の妥当性:
- 会社が政治団体に寄付をすること自体は合法ですが、金額や目的が不自然である場合、寄付として認められない可能性があります。
3. 寄付金の還流:
- 政治団体が受け取った寄付金を何らかの形で会社に還流させる(例:政治団体から会社への高額支払い)行為は、脱税や不正行為とみなされます。
4. 利益相反や透明性の欠如:
- 会社と政治団体の役員が同一の場合や、運営が密接に連携している場合、不適切な利益操作が疑われやすくなります。
実務上の注意点
1. 収益源の明確化:
- 政治団体の収入は、政治活動に直接関連するものに限られ、営利活動の収益を分配する形は避けるべきです。
2. 税務調査のリスク:
- 税務署は会社と政治団体の資金移動や取引内容を詳細に調査する権限を持っています。
- 不自然な資金の流れは即座に疑われ、修正申告や追徴課税が行われる可能性があります。
3. 分離独立性の確保:
- 会社と政治団体の運営、資金管理、収益源を完全に分離することが重要です。
- 政治団体の活動記録や収支報告書を適切に作成し、公開する必要があります。
違法性の判断基準
- 意図的な脱税行為:会社が収益を政治団体に移転し、その税負担を意図的に回避している場合は、違法と判断されます。
- 適正な会計処理:会社の売上や寄付金の処理が透明かつ妥当であり、政治資金規正法や税法に違反していない場合は問題ありません。
結論
政治団体を併設することで税制上の優遇を受けることは形式的には可能だとしても、「会社の利益を不自然に移転する」ことはリスクが高く、厳格な監視下に置かれる可能性があります。
非常に詳しく教えて頂き、非常に勉強になりました。ありがとうございました。
今後とも宜しくお願い致します。
本投稿は、2024年12月03日 20時57分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。