売上の計上時期の誤りを自主修正する場合、65万円の青色申告特別控除は否認されますか
個人事業主です。青色申告で65万円控除を受けており、会計ソフトで複式簿記により記帳し、毎年e-Taxで期限内に申告しています。
売上は月末締め・翌月25日払いですが、これまで入金日に売上を計上しており、年末に売掛金を計上していませんでした。そのため毎年12月分が翌年の売上になっていました。入金はすべて帳簿に記録していて、売上を抜くなどの不正は行っていません。各年の所得への影響は数万円程度です。
現金主義の特例(所得税法67条)の届出はしておらず、所得も300万円を超えているため対象外です。
過去分を自主的に修正申告する予定です。この場合、過去の年分について「正規の簿記の原則に従った記帳ではない」として、65万円控除が10万円に引き下げられるおそれはあるでしょうか。税務調査で同じ誤りを指摘された場合の扱いも、あわせて教えてください。
税理士の回答
結論から申し上げますと、自主的に修正申告する場合でも、税務調査で指摘された場合でも、65万円の青色申告特別控除が10万円に引き下げられる可能性は低いかと存じます。
今回のケースは、意図的な売上除外(仮装・隠蔽)ではなく、計上時期の誤認による単なる「期ズレ」です。会計ソフトを用いて複式簿記で記帳し、取引自体はすべて網羅されていることから、帳簿の信頼性が根底から覆る「正規の簿記の原則に従っていない」状態とは通常見なされないかと存じます。
【自主的に修正申告する場合】
自ら誤りに気づき、正しい発生主義(年末の売掛金計上)に基づいて帳簿を修正する行為は、適正な申告への是正として扱われます。これにより65万円控除が否認される事は通常ないかと存じます。
【税務調査で指摘された場合】
調査において期ズレを指摘された場合でも、単なる計上基準のミスと判断されれば65万円控除は維持され、指摘に従って各年分の売上を正しく付け替える修正申告に応じることになるかと存じます。
回答は以上となります。
ご参考になりましたら幸いです。
◆65万円控除について
ご記載の状況を踏まえると、売上の計上時期を間違えていたことだけを理由に、65万円の青色申告特別控除が直ちに10万円へ引き下げられるとは考えにくいと思います。
ただし、今回、本来は12月に計上すべき売上を翌年の入金時に計上し、年末の売掛金も計上していなかったとのことですので、この点は正しい処理に直す必要があります。
国税庁の資料でも、税務調査で申告漏れが見つかった場合であっても、期限内申告に添付した貸借対照表が日々の継続的な記帳などに基づいて作成されていれば、それだけを理由に65万円または55万円控除を直ちに取り消すことはない、とされています。
そのため、
「売上の計上時期を間違えた」
=
「正規の簿記ではないので65万円控除は使えない」
と単純に判断されるものではありません。
ただし、毎年同じ方法で売上を計上していたとのことですので、最終的には今回の売上だけでなく、帳簿全体がどのように作成されていたか、貸借対照表や損益計算書が日々の記帳に基づいて作成されていたかなどを確認して判断することになります。
◆過去分の修正について
売上は原則として、実際に入金された日ではなく、その年の売上として確定した時点で計上します。
そのため、各年について単純に12月分の売上を追加するのではなく、
・その年の12月分の売上を追加する
・その年に計上していた前年12月分の売上を除く
という形で、正しい年分へ組み替えて計算する必要があります。
その結果、税額が増える年は修正申告、税額が減る年は更正の請求を検討することになります。
なお、更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です。
◆税務調査で指摘された場合
「自分から修正すれば65万円控除を使えるが、税務調査で指摘されたら10万円になる」というルールではありません。
税務調査で同じ誤りを指摘された場合も、65万円控除を使えるかどうかは、帳簿や貸借対照表が継続的な記帳に基づいて作成されていたかなどによって判断されます。
一方で、加算税については違いがあります。
税務調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告した場合は、原則として過少申告加算税はかかりません。
ただし、追加で所得税を納める場合は、延滞税がかかることがあります。
今回のように誤りに気づいているのであれば、まず各年の売上を正しい年分に直し、帳簿や決算書への影響も確認したうえで、必要な修正申告や更正の請求を進めるのがよいと考えます。
竹中公剛
65万円控除が10万円に引き下げられるおそれはあるでしょうか。
ないです。
税務調査で同じ誤りを指摘された場合の扱いも、あわせて教えてください。
今期から売掛金を計上してください。
調査では、過年度は計上しなかったといってください。
よろしくお願いいたします。
先生方、ご回答ありがとうございます。
65万円控除の考え方について理解できました。
重ねての質問となり恐縮ですが、不安がございまして、実際の訂正方法について、追加で確認させてください。
この処理は2019年から続けていました。先の質問の「各年の所得への影響は数万円程度」というのは初年度以外のことで、初年度は12月分の報酬1か月分が翌年にずれています。
初年度には前年12月分の入金がないため、当年12月分が丸ごと抜けていました。一方、翌年以降は「前年12月分を当年に計上し、当年12月分を翌年に計上する」形なので、売上の計上時期だけを訂正した場合の年間の増減額は、前年と当年の12月分報酬の差額になっています。
初年度は12月分の報酬1か月分(60万程度)が翌年にずれています。
売上の計上時期だけを訂正して試算したところ、2022・2023・2025年分は税額が増え、2021・2024年分は税額が変わりません。また現在、税務署からの問い合わせや調査の通知は来ていません。
① 修正する年分について
2026年10月現在、2019・2020年分の期間制限も含め、どの年分について訂正手続きが必要でしょうか。今年から売掛金を正しく計上するとともに、税額が増える2022・2023・2025年分は自主的に修正申告する、という理解でよいでしょうか。
② 税額が変わらない年の決算書について
2021・2024年分も、訂正した青色申告決算書を提出する必要がありますか。提出しない場合、提出済みの前年期末と、訂正後の翌年期首で売掛金・元入金が一致しなくなる点は、どのように説明・処理すればよいでしょうか。
③ 過年度の帳簿の訂正・保存について
会計ソフトでは2022・2023年分を編集できません。元の仕訳帳・総勘定元帳を保存し、別途、修正仕訳と修正後の残高が分かる資料を作成して、一緒に保管する方法でよいでしょうか。ほかに必要な帳簿や記録があれば教えてください。
よろしくお願いいたします。
追加のご質問について、まず全体の考え方から整理します。
今回のように複数年にわたって売上の計上時期を誤っていた場合は、
① 2019年分から過年度の経理を正しい状態に直す
② 各年の正しい所得・税額を計算する
③ その結果に応じて、修正申告や更正の請求が必要かを判断する
という順番で考えるのがよいです。
「修正申告が必要な年だけ帳簿を直す」のではなく、まず各年の売上・売掛金などを正しい状態に整理し、その後に申告手続を判断する、という考え方です。
◆1 修正する年分について
まず、2019年分から各年の売上を正しい計上時期で計算し直し、所得や税額への影響を確認します。
その結果、
・納付税額が増える年 → 修正申告
・納付税額が減る、または還付税額が増える年 → 更正の請求を検討
・納付税額・還付税額・純損失等の金額が変わらない年 → 原則として所得税の修正申告・更正の請求の対象にはならない
というように分けて考えます。
ご質問の試算で、2022年分・2023年分・2025年分について所得税額が増えるのであれば、この3年分については自主的に修正申告する、という考え方でよいと思います。
一方、2019年分・2020年分についても、経理上は正しい売上に直しておく必要があります。
ただし、2019年分・2020年分については、2026年10月現在、通常のケースでは国税の徴収権の5年の消滅時効をすでに経過しています。
そのため、これらの年分について税額が増える場合でも、原則として修正申告を行うことはできないと考えられます。
また、更正の請求ができる期間も原則として法定申告期限から5年以内ですので、2019年分・2020年分について税額が減る場合には、通常の更正の請求期間もすでに経過しています。
つまり、2019年分・2020年分については申告手続を行わない場合でも、後の年を正しく計算するため、帳簿上は正しい売上・売掛金を計算しておくことになります。
2021年分・2024年分については、所得金額を訂正しても納付税額・還付税額・純損失等の金額が変わらないのであれば、原則として所得税の修正申告や更正の請求の対象にはなりません。
2026年分については、過年度を正しく整理した後の2025年末の売掛金残高を引き継ぎ、今年から正しい方法で売上・売掛金を計上します。
◆2 税額が変わらない年の決算書について
2021年分・2024年分について所得税の修正申告や更正の請求の対象にならない場合でも、帳簿上の売上・売掛金などは正しい金額に整理しておく必要があります。
この場合、訂正した青色申告決算書だけを再提出して過去の申告を直す、というよりも、
・本来計上すべきだった12月分の売上・売掛金
・訂正前と訂正後の金額
・翌年へのつながり
が分かる資料を作成して保存しておくのがよいと考えます。
たとえば2021年末の売掛金を訂正したのであれば、その訂正後の金額を2022年の正しい期首残高として、2022年分の修正内容につなげます。
そのため、提出済みの2021年分青色申告決算書の期末売掛金と、訂正後の2022年期首売掛金が一致しなくても、その差額が「過年度の売上計上時期を訂正したことによるもの」と分かる資料を残しておけば、訂正内容を説明できます。
元入金については、前年の所得金額や事業主貸・事業主借なども反映して翌年の金額が決まりますので、訂正後の所得などを反映した計算根拠が分かるようにしておくとよいでしょう。
なお、所得税額が変わらなくても所得金額自体が変わる場合には、住民税などに影響する可能性がありますので、その点は別途確認が必要です。
◆3 過年度の帳簿の訂正・保存について
会計ソフト上で2022年分・2023年分などを編集できないのであれば、当初の仕訳帳や総勘定元帳はそのまま保存し、別途、訂正内容が分かる資料を作成して一緒に保管する方法がよいと考えます。
たとえば、
・年度ごとの修正仕訳
・当初の年間売上と修正後の年間売上
・前年12月分のうち当年に計上していた金額
・当年12月分のうち翌年に計上していた金額
・訂正前と訂正後の売掛金残高
・訂正後の貸借対照表・損益計算書
・各年の期末から翌年へのつながり
・12月分の請求額と翌年の入金額が分かる資料
などを整理しておくと分かりやすいでしょう。
元の帳簿を消したり上書きしたりするよりも、
「当初どのように記帳していたか」
「どこをどのように訂正したか」
「訂正後の各年の数字がどのようにつながるか」
を後から確認できる状態にしておくことが大切です。
また、修正申告をする年分については、修正後の売上・売掛金・所得金額などを反映した青色申告決算書を作成し、修正申告書の内容と整合するようにしておくのがよいでしょう。
今回のように複数年にわたる場合は、2019年分から2025年分までを一覧にして、
・当初の年間売上
・前年12月分のうち当年に計上していた金額
・当年12月分のうち翌年に計上していた金額
・修正後の年間売上
・所得への影響
・税額への影響
・必要な申告手続
を整理してから進めると、年度間のつながりを確認しやすいと思います。
本投稿は、2026年10月04日 03時53分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。







