2カ国の居住者のフリーランス業務(日本企業)の納税について
日本とイギリス両国で滞在している者です(日本の籍は抜いていません)。この度は日本企業と契約を結び、フリーランスで働くことを検討しています。
日本とイギリス両国の居住者である場合、フリーランスで働いた所得税はどのように納税するのでしょうか。
基本的には日本とイギリスを行き来するつもりです(現在新型ウィルスの影響で行き来は一時的に自粛していますが)。その際、日本企業のためのフリーランスの所得税はどの国で収めることになるのでしょうか?
イギリスと日本との間では租税条約が結ばれていることは知っていますが、イマイチどのように納税すればいいのか把握できていない状態です。
お手数をおかけいたしますが、アドバイスをいただけたらとても助かります。
よろしくお願いします。
税理士の回答

回答します
「2か国居住者」というお話ですが、いずれかの居住者になるか判定しないといけません。
そのうえで、非居住者となった国ではその所得の「源泉」が、その国にあった部分のみ課税対象(源泉国課税)となり、居住者となった国ではどこの国で得た所得にかかわらず、全てを課税対象とする(全世界課税)となります。
【非居住者課税】
貴方が我が国の非居住者に該当した場合の課税について説明いたします。
「フリーランス」の仕事がどのような所得であるか不明ですが、貴方のお仕事が「人的役務の提供(給与や弁護士などの報酬)」の場合、日本で働かれた部分が課税の対象となります。
また、日英租税条約第14条~16条が該当となり、原則、我が国で役務の提供をした部分(勤務部分)の報酬が課税対象となります。
日本では報酬の支払者が20.42%の源泉徴収をすることになります。
英国での課税方法は、英国の課税当局にご確認ください。
【居住者課税】
貴方が我が国の居住者に該当した場合は、全世界課税となります。
ただし、英国に源泉のある所得で英国で課税された場合には「外国税額控除」の対象となります。(二重課税防止)
※外国の税額を満額控除できるものではなく、また、その部分の還付はありません。

少し長かったため分割して回答します。
【居住者・非居住者の区分】
我が国の居住者・非居住者の判定において、国内に「住所(居所)」がある場合は居住者と判定されます。より具体的には「通常居住が必要とされる職業」を国内に有する場合は日本国に居所、住所があるとされます。
※国外の会社などに就職した場合は、その国が「居住地」となりその国の居住者=日本の非居住者となります。
しかし、貴方のお仕事は両国を行き来するとのお話でしたので、その場合は①住居、②職業、③家族・親族の居住状況、④国籍などの客観的事実により判断することになります。(国内法)
また、日英租税条約第4条第1項においても、住所、居所、本店所在地のある国が「居住地」とされ、その国の「居住者」とされます。
更に、「双方の締約国の居住者」にあたる場合には、第4条2項に取り決めがあり、いずれかの居住者として判定します。そのポイントとして
①恒久的住居がある場合・・・その恒久的住居のある国の居住者
②「①」がない場合で、常用の住居が所在する場合・・・その住居のある国の居住者
③「①、②」にも該当しない場合・・・その国民である国の居住者
④「①~③」にも該当しない場合・・・権限有る当局の合意により決める。
とされています。
それぞれの国は租税条約より先に、自国の「居住者」となるか否かの法律があります。英国の「居住者」の定義は残念ながら英国の課税当局に確認しないとわかりません。
また、日本の法律上(租税条約含む)においての判定が難しい場合には、所轄の税務署に相談されることをお勧めいたします。
国税庁HPを参考にお知らせします。
No2875 「居住者・非居住者の区分」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2875.htm
No2012「居住者・非居住者の判定(複数の滞在地がある人の場合)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2012.htm
No2873「非居住者の課税のしくみ」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2873.htm
日英租税条約(外務省のHPより)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/shomei_17a.pdf
丁寧に、しかも速やかに必要なポイントを解説していただき、とても助かりました。
いただいた情報を参考に判断しますと、日本の居住者になるかと思います。
この場合、確定申告の際にフリーランスの収入を納税すればいい、との理解で正しいでしょうか?
先生からアドバイスしていただいた通り、イギリスでの課税法や居住者の定義についてはイギリスの税務署の方に問い合わせてみようと思います。
ありがとうございました。

回答します
貴方が日本の居住者に該当するということであれば、ご理解のとおり日本国に対して申告・納税義務が生じます。
確定申告は翌年の2月16日~3月15日に行うことになりますが、フリーランスのお仕事以外に別途所得が生じた場合は併せて申告することになります。
よろしくお願いいたします。
アドバイスしていただけてとても助かりました。
ありがとうございました。
本投稿は、2020年08月11日 22時25分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。