相続発生前の同居が条件となっている小規模宅地の特例は住民票登録地が違っていても適用できますか
高齢の母の介護のため実家に長期滞在している息子(私)です。私の住民票登録住所は東京都ですが母のいる住居は広島県です。実家にほとんで滞在し3~4か月ごとに東京に戻り2~3日で必要な用事を済ませてでとんぼ返りしている状況です。転居届を出すと役所、銀行等もろもろの変更手続が発生し煩雑なので転居届は出していません。母の相続が発生した場合、この状態で小規模宅地の特例が活用できますか?
それとも住所変更(転居届)は必須でしょうか?
税務署は実態を優先してみると聞いたことがあります。実態は同居なので同居の条件はクリアーしていると考えてよいでしょうか?
税理士の回答
小規模宅地の特例の適用可否の判断において住民票の変更は必須ではないと考えます。同居親族として特例を適用されるのであれば、相談者様が同居親族に該当するかどうかを判断する必要があります。同居親族を判断する上で重要なのは、相談者様の生活の拠点がご実家にあったのかどうかです。介護のため頻繁に帰省していることのみでは判断ができませんが、例えば東京に家をお持ちで家族は東京の家に居住したままである、現在も郵便物は東京の家に届く、実家に帰省しているのは介護という一時的な目的であるというような状況であれば、生活の拠点は東京だと判断されると思います。
金築先生、早速のご回答ありがとうございました。
生活拠点が実家にあったかどうかがポイントとのご指摘よく分かりました。それを実際に示す根拠をそろえなさい ということと理解しました。
以下の点についてどのように考えればよいでしょうか?
現在、家族(妻)は仕事のため東京の家に居住しております。妻も仕事をやめ実家で私とともに生活のサポートや介護にあたっているとなったほうが、相続人の生活拠点が実家にあったことをより強く主張できそうですが、妻は法定相続人ではないため妻の住居地はどこであっても適用可否に影響ないのではないでしょうか?
素人質問で申し訳ありませんが、よろしくご教示のほどお願いいたします。
仰る通り、特例の適用可否については相続人である相談者様が同居親族であるかどうかを判断することになりますので、奥様の住居地がどこかということは直接は関係ありません。しかしながら、その判断をするために勘案される生活の拠点についてはご家族の状況は重要な検討材料の一つとなります。一般的に考えますと、奥様がいらっしゃる東京の家が相談者様の生活の拠点であると判断される可能性が高いと思われます。ご返信頂いたとおり、相談者様と奥様がご実家に引越しをされ、住民票もご実家に移し、お母様と一緒に生活されている状況であれば、疑う余地はありません。なお、もし要件を満たすのであれば別居親族(家なき子特例)として特例の適用可否を判断されるのも一つと思いますが下記(1)から(6)の要件をすべて満たす必要がありますので難しいかもしれません。
(1)居住制限納税義務者または非居住制限納税義務者のうち日本国籍を有しない者ではないこと。
(2)被相続人に配偶者がいないこと。
(3)相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた被相続人の相続人がいないこと。
(4)相続開始前3年以内に日本国内にある取得者、取得者の配偶者、取得者の三親等内の親族または取得者と特別の関係がある一定の法人が所有する家屋に居住したことがないこと。
(5)相続開始時に取得者が居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないこと。
(6)その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること。
金築先生、大変詳しくお教えいただきありがとうございます。
先生のお話から、相続財産の大きな減額が得られる特例であるためだと(個人的には)思いますが、適用時の条件はかなりシビアに査定されるという印象を受けました。そのため素人の思い込みの判断は禁物とも思いました。
生活拠点についても家族の状況は重要な検討材料の1つになるというご指摘も大変納得感のあるもので環境要素も重要だということもわかりました。
家なき子特例についても詳しくお教えいただきありがとうございます。
東京に所有する家を売却し、実家の近くの賃貸に家族ごと転居し母の介護を行うなどの方法を想定しましたが、売却から相続開始まで3年以上経過していることなどの条件があり、それらの要件をすべてクリアーするのは容易ではないと思いました。
今回、先生に貴重なご意見をいただき大変勉強になりました。
ご意見を参考にさせていただき、今後の状況変化応じて検討していきたいと思います。
ありがとうございました。
本投稿は、2024年07月19日 12時46分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。