最低賃金(2016年10月最新版)のワーストは●●県!最低賃金制度のまとめ

雇用契約を結んでいる労働者の給料には、都道府県毎に最低賃金というものが定められています。「労働者」に対して定められているものなので、正社員・嘱託・アルバイト・パートなど雇用形態に関係なく適用されます。この最低賃金が2016年10月に改定されました。
そこで、最低賃金のトップとワーストのランキングから、最低賃金を下回っている場合にどのような対応をとるべきか等についてまとめました。
目次
最低賃金とは
雇用者が労働者に、最低限支払わなければならない賃金の時間給の下限額のことを最低賃金といい、賃金の最低額を保証する制度のことです。労働基準法の中の最低賃金法という労働者の権利に基づくもので、原則としてすべての労働者に対して適用されるものです。
基本的には、9月末頃に改訂内容が発表され、10月1日~10月中旬までに都道府県ごとに順次適用されます。
地域別最低賃金
「地域別最低賃金」とは、産業や職種にかかわりなく全国の都道府県で設定されており、各都道府県で審議会が開かれ金額が決定します。改定額の基準は、土地代や家賃などの労働者の生計費や企業の支払い能力など総合的に判断し、定められるもので、ここ10年では上昇傾向にあります。
特定(産業別)最低賃金
「特定(産業別)最低賃金」とは、2008年7月より施行され、地域別最低賃金より、水準の高い金額を定めることが必要と認められた、特定の地域内産業に対して、設定されている最低賃金のことです。鉄鋼業、業務用機械器具・電気機械器具製造、修理業などが当てはまります。業種や都道府県ごとに細かく内容が定められています。
最低賃金ランキング
47都道府県それぞれに最低賃金が決められていますが、以下が最低賃金額のトップ10とワースト10です。全国平均では約25円アップしており、例年よりも引き上げ額が大きくなっています。
トップ10の都道府県ランキング
順位 | 都道府県名 | 2016年 最低賃金時間額【円】 | 2015年 最低賃金時間額【円】 | 発効年月日 |
---|---|---|---|---|
1 | 東京 | 932 | 907 | 平成28年10月1日 |
2 | 神奈川 | 930 | 905 | 平成28年10月1日 |
3 | 大阪 | 883 | 858 | 平成28年10月1日 |
4 | 埼玉 | 845 | 820 | 平成28年10月1日 |
5 | 愛知 | 845 | 820 | 平成28年10月1日 |
6 | 千葉 | 842 | 817 | 平成28年10月1日 |
7 | 京都 | 831 | 807 | 平成28年10月2日 |
8 | 兵庫 | 819 | 794 | 平成28年10月1日 |
9 | 静岡 | 807 | 783 | 平成28年10月5日 |
10 | 三重 | 795 | 771 | 平成28年10月1日 |
ワースト10の都道府県ランキング
順位 | 都道府県名 | 2016年 最低賃金時間額【円】 | 2015年 最低賃金時間額【円】 | 発効年月日 |
---|---|---|---|---|
1 | 宮崎 | 714 | 693 | 平成28年10月1日 |
1 | 沖縄 | 714 | 693 | 平成28年10月1日 |
3 | 鳥取 | 715 | 693 | 平成28年10月12日 |
3 | 高知 | 715 | 693 | 平成28年10月16日 |
3 | 佐賀 | 715 | 694 | 平成28年10月2日 |
3 | 長崎 | 715 | 364 | 平成28年10月6日 |
3 | 熊本 | 715 | 694 | 平成28年10月1日 |
3 | 大分 | 715 | 694 | 平成28年10月1日 |
3 | 鹿児島 | 715 | 694 | 平成28年10月1日 |
10 | 青森 | 716 | 695 | 平成28年10月20日 |
雇用形態別の最低賃金の確認方法
対象はすべての労働者とされていいるため、「正社員・アルバイト」「月給・時間給」等関係なく適用されます。
自身の給料が最低賃金以上であるか調べるときは、基礎となる賃金を元に計算します。この基礎となる賃金には、以下のような一定名目の賃金は含まれないとされています。これらを除外した基礎の賃金(基本給)を元に算出していきます。
- 臨時に支払われる賃金
- 深夜手当・休日手当・時間外労働手当
- 家族手当・通勤手当・精通手当
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
正社員・アルバイト・嘱託の場合
時間・日給制
アルバイトやパートなど時間給で支払われているものに関しては、時間給を見ればわかりますが、日給制の場合は以下のように確認します。
日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額
月給制
正社員・嘱託社員・契約社員は月給等で支払われていることが大半かと思いますが、月給制の場合の最低賃金は、「基本給÷労働時間」で算出されます。
月給÷((年間総労働日数÷12)×1日の所定労働時間)≧最低賃金額
派遣労働者の場合
派遣労働者の場合、雇用されている会社と派遣先の所在地が異なることがあります。
例えば、X県に住んでいる人がY県の派遣会社に登録していて、そこからZ県にある会社に派遣されていた場合の最低賃金は、派遣先の所在地であるZ県の最低賃金が適用されます。派遣会社は労働者に対して派遣先の最低賃金以上を支払わなければなりません。
雇用契約関係にない場合
最低賃金をはじめとする労働基準法上の権利は、企業側(雇用者)が雇用契約を結んだ労働者を保護するためのものです。
例えば、請負契約や業務委託契約だった場合は、雇用契約ではないので労働基準法が適用されません。よって、最低賃金に限らず労働基準法上で定められた労働者の権利はすべて適用されないことになります。
しかし、委託や請負を装って契約していた場合、実際の雇用関係にあるとみなされるときは労働基準法の適用を受ける場合もあります。
最低賃金を下回る企業には罰則が課せられる
最低賃金以下で働いていた場合は、雇用者は労働者に対して最低賃金との差額を支払わなければいけません。雇用契約書が無効になり、再契約が必要となる可能性もあります。
なお、雇用契約締結後に最低賃金が変更になった場合は、再契約ではなく賃金について就業規則の変更をすれば大丈夫です。つまり、時給・給与を変更するということです。
また、企業は最低賃金以下で雇用し続けていると罰則が課せられます。地域別最低賃金を下回った場合は50万円以下、特定(産業別)最低賃金を下回った場合は30万円以下の罰金が課せられます。
最低賃金減額の特例許可制度とは?
原則としてすべての労働者に最低賃金が適用されますが、一般の労働者より著しく労働能力が低いとされている以下のような場合には、最低賃金の減額の特例許可制度というものが適用されます。
試用期間中の場合
試用期間とは、通常3ヶ月から6ヶ月の間、使用者(雇用者)が従業員としての適格性を判断するためや、教育訓練を行うために、設けられる期間のことです。
期間について法律上の制限はないですが、あまり長期にわたる場合(1年以上)は、雇用者が公序良俗(民法90条)違反になる場合もあるので注意が必要です。
精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方
著しく労働能力の低い方にも最低賃金を適用すると、労働者の雇用機会を奪ってしまう可能性があり、かえって労働者に不利になってしまうので、減額の特例が認められています。
基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている者のうち厚生労働省令で定める方
認定を受けている一定の職業訓練を受ける方のみに適用されます。必要な知識・技能などの訓練を受けている未熟練労働者で、作業も訓練の一部であると判断されるため減額の特例が認められています。厚生労働省の規定以外の職業訓練を受けている方には適用されません。
断続的労働に従事する方
精神的緊張や実労働時間が少ない業務に従事する方のことで、ビル警備員や守衛・学校の用務員などがあてはまります。
軽易な業務に従事する方
最低賃金の適用を受ける他の労働者より、軽易な業務に従事する労働者の業務と比較して更に軽易な労働に従事する方に限られます。
特例許可の申請手続き
減額の特例許可を受けたい場合は、雇用者が減額の特例許可申請書を2通作成し、労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に提出する必要があります。申請書は以下のページからDLすることができます。
また、特例許可について詳細を確認したい場合には、最寄りの労働局労働基準部賃金課室に問い合わせると良いでしょう。
おわりに
最低賃金についておわかりいただけたでしょうか?勤務先で自身の賃金が最低賃金より下回っている場合は、雇用者に変更するように問合せてみましょう。雇用者側は、罰則の対象となりますので、被雇用者に対して最低賃金以上で雇用契約を結ぶように気をつけましょう。