賃貸用不動産の減価償却について
個人で契約し購入した賃貸用不動産について、所有権登記は個人名義となっておりますが、契約上の地位承継の合意書を締結し、物件の所有権を個人から法人(個人が代表の資産管理法人)に移し、法人所有の固定資産として法人にて減価償却を行うつもりです。
本物件は、個人にて購入後間もないため、個人での減価償却はしておりません。
本来、法人で契約し法人で所有権登記すればよかったのですが、法人設立が間に合わなかったため、このような対応となりました。特別問題はないでしょうか?
宜しくお願い致します。
税理士の回答

ご相談の状況について、賃貸用不動産の所有権移転および減価償却に関しては、いくつかの重要な点を確認し、適切な手続きを踏む必要があります。
主な検討事項
1. 契約上の地位承継合意書の有効性
- 個人から法人への物件の所有権移転を行う際、地位承継合意書の内容が適切であることが重要です。
- 地位承継により法人が不動産の所有権を引き継ぎ、法人名義で固定資産として計上すること自体は可能ですが、税務上は実際の経済的所有権の移転が重要です。
- 契約書に「売買価格」「引渡日」「支払い条件」などを明記し、法人が所有者としてのリスクと便益を負担することを明確化してください。
2. 移転価格と税務上の注意点
- 所有権を移転する際の売買価格を適切に設定する必要があります。
- 法人と個人が密接な関係にあるため、**時価での売買**が求められます。時価より低い価格での売買は、税務署に否認される可能性があります(法人税法上の寄附金課税や、個人の所得税への影響)。
- 個人が不動産を購入した際の取得費や初期費用も考慮してください。
3. 法人での減価償却
- 法人での減価償却は、移転後の固定資産として計上することで開始できます。ただし、耐用年数や取得価額の設定に以下の点を注意してください。
- 耐用年数は、通常、物件の種類や築年数に基づいて算定されます。
- 減価償却の基礎となる取得価額は、法人が個人から購入した際の売買価格となります。
4. 印紙税・登録免許税
- 所有権移転には、登録免許税や登記費用が発生します。また、地位承継合意書や売買契約書にかかる印紙税も確認が必要です。
5. 消費税の取り扱い
- 賃貸用不動産の売買では、建物部分に関して消費税が課税対象になる場合があります(個人が課税事業者であれば)。
留意点
- 個人での減価償却
質問にある通り、個人で減価償却を行っていない場合、法人で移転後に減価償却を開始することに特段問題はありません。ただし、税務調査に備え、個人での未償却履歴を明確にし、法人移転後の計算方法を整備してください。
- 法人税務の処理
法人で減価償却を行う際は、減価償却費の計算書を正確に作成し、適切に法人税申告書へ反映する必要があります。
問題が生じる可能性
- 税務調査での否認リスク
移転の価格が不自然であったり、法人設立のタイミングや契約内容に矛盾がある場合、税務署から「形式的な移転」と見なされるリスクがあります。
- 相続や贈与税のリスク
時価より大幅に低い価格で売買が行われた場合、贈与税が課される可能性があります。
アクションプラン
1. 地位承継合意書を適切に作成し、弁護士と確認する。
2. 移転時の価格を適切に設定し、時価評価証明書を用意する。
3. 登記や税務申告に関する手続きを法人設立後に迅速に行う。
4. 税務署への説明資料(購入経緯、法人設立の理由、時価評価書など)を準備しておく。
適切な手続きと記録を整えれば、特に問題なく法人にて減価償却を開始できる可能性が高いです。顧問税理士に相談の上、確実な対応を進めることをお勧めします。
情報の少ない質問にて失礼いたしました。
ご丁寧に分かりやすくご回答いただきまして、ありがとうございました。
本投稿は、2024年11月14日 16時51分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。