法人設立に伴う親族間アパート売買・土地賃貸借・減価償却に関する税務相談
お世話になります。北海道にある親族所有のアパート(建物)を、自身が新設する資産管理法人(株式会社)で買い取り、賃貸運営を行う計画をしております。
つきましては、以下の税務上の論点・リスクについてご相談・ご指導いただけますでしょうか。
■ 税理士への相談・確認事項
1. 親族間売買におけるみなし贈与(低額譲渡)リスクの確認
叔父所有の建物を、令和6年度の「固定資産税評価額(4,438,907円)」で法人が一括買い取る予定です。この売買価格設定において、叔父・法人・株主(代表個人)それぞれに低額譲渡・みなし贈与等の課税リスクが生じる可能性はないかご確認をお願いします。
2. 土地の適正地代と「無償返還届出書」の取り扱い
敷地は実母の所有です。法人と母の間で土地賃貸借契約を結び、年額30万円(固定資産税28,000円の約10.7倍)の地代を支払う予定です。
税務署へ提出する「土地の無償返還に関する届出書」により、借地権の認定課税を安全に回避できるかの確認をお願いします。
地代受取に伴い、母側に生じる不動産所得(約27.2万円)に対する確定申告の要否や、親族の扶養判定への影響についてご教示ください。
3. 中古建物の減価償却(法定耐用年数超過)
昭和58年築(築43年/軽量鉄骨造・骨格材肉厚3mm超〜4mm以下想定)です。
法定耐用年数(27年)を経過しているため、簡便法により「耐用年数5年(定額法)」で年間約88.8万円の減価償却費を計上する計画ですが、この処理に問題ないかご確認ください。また、設立初年度の月割計算の留意点も伺いたいです。
4. 損害保険料の精算処理
叔父名義で2030年6月まで一括前払済みの火災・地震保険があります。名義変更して未経過分を法人が買い取って長期前払費用等で処理する形と、解約・新規加入のどちらが税務・経理上望ましいかご見解をいただけますでしょうか。
税理士の回答
荒川直宙
ご質問の4つの論点について、注意点を整理いたしました。
【1】親族間売買におけるみなし贈与(低額譲渡)リスク
固定資産税評価額(約444万円)での取引は実務上一般的ですが、事前に不動産会社から簡易査定書を取得しておくことが安全です。
◆ 課税リスクと評価額の確認
・叔父(個人):時価の50%未満の低額譲渡とみなされるとみなし譲渡所得課税(所得税法59条)のリスクがあります。ただし築43年の建物は評価額と実勢価格の乖離が小さいことが多いため、査定書で確認しておくと安心です。なお、現在の「令和8年度」課税明細書の価格が約444万円か念のためご確認ください。
・法人:時価より著しく安く買い取った場合、差額が受贈益(法人税)となります。
・代表個人(株主):法人の株式価値が増加することで叔父からの「みなし贈与」(相続税法9条)とみなされるリスクがあります。
※令和9年度の評価替え後の評価額は、令和9年4月以降に確認できるようになります。取引がそれ以降にずれ込む場合は、新しい評価額で売買価格を見直してください。
【2】土地の適正地代と「無償返還届出書」の取り扱い
土地賃貸借契約書に「将来土地を無償で返還する」旨を明記し、貸主(お母様)の住所地を所轄する税務署へ「土地の無償返還に関する届出書」を提出することで、法人の借地権認定課税を完全に回避できます。届出書は貸主・借主の連名で作成します。提出期限は規定上「遅滞なく」で、実務上は契約した事業年度の法人税の確定申告期限までが一般的です。
◆ お母様の税金と扶養判定(地代年30万円、固定資産税2.8万円の場合)
不動産所得は「30万円 − 2.8万円 = 27.2万円」となります。
・確定申告の要否:お母様に他の所得がない場合、令和8・9年分の基準では、基礎控除額(104万円)以下となるため、所得税の確定申告は不要です(住民税の申告は必要)。公的年金受給者の場合、税額計算後に納める所得税が発生しなければ確定申告は不要となります(65歳以上で他の控除がない場合、年金収入約186.8万円以下なら税額は出ません)。
・扶養判定への影響:扶養控除の所得要件は「合計所得62万円以下」です。不動産所得が27.2万円あるため、年金所得を34.8万円以下に抑えれば扶養に入れます。65歳以上なら年金収入約144.8万円以下、65歳未満なら年金収入約94.8万円以下が目安です。
【3】中古建物の減価償却(耐用年数5年)
軽量鉄骨造(骨格材肉厚3mm超〜4mm以下)の法定耐用年数は27年です。築43年で全額経過しているため、簡便法により「27年 × 20% = 5.4年 → 端数切捨て5年」となります。
定額法(償却率0.200)での年間減価償却費は「4,438,907円 × 0.200 = 887,781円」となり、この計算は税法上完全に適正です。初年度は「事業の用に供した月」からの月割計算となります。
【4】損害保険料の精算処理
「叔父様が解約し、法人で新規加入する」方法を強くお勧めします。
個人名義の保険は賃貸事業特有の賠償責任リスク(建物欠陥による事故等)への補償が不十分なことが多く、名義変更は経理処理も複雑になります。法人名義で施設所有者賠償特約付きの火災保険へ新規加入する方が安全で、経理処理(契約期間に応じた前払費用の処理等)も明確になります。
少しでもお役に立てましたら、ベストアンサーに選んでいただけますと幸いです。
本投稿は、2026年10月07日 09時12分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。







