収入印紙について
5万円以上の領収書に収入印紙は必要ですが、もしもお客様が領収書を受け取らない場合は収入印紙は貼らなくても良いものなのでしょうか?
税理士の回答

小川真文
領収書とは、代金支払い時に発行される支払いの証明となる書類で、二重に請求されるのを防ぐ役割があります。また、領収書については、民法486条で「弁済したものは、弁済を受領した者に対して受取証書の発行を請求できる」と定められています。ここでいう弁済とは、代金の支払いを指し、受取証書は領収書にあたります。代金の支払い時には、支払人が受取人に対して領収書の発行を請求することが可能です。前述の支払人より領収書の発行を請求された場合に代金の受取人は領収書を発行する義務が発生します。また、判例により同時履行の原則があるため、領収書の発行は金銭の受け渡しと同時に行われ、代金の支払いの際に、受取人が領収書を発行しない場合は、代金の支払いを拒否することができます。
さて「お客様が領収書を受け取らない場合」についての考え方ですが、お客様が受け取らなかった、もしくは領収書は必要ないといった場合には、収入印紙を貼らなくてもよいと考えます。
この根拠は、国税庁ホームページの「印紙税の手引き」にあります。ここでは収入印紙は課税文書(領収書)を作成したときに貼らなければならないということを規定しています。 さらに課税文書(領収書)の作成については、「単なる課税文書の調製行為をいうのではなく~その文書の目的に従って行使することをいいます」と示しています。
これによると「領収書の記載」だけでは作成にはならなくて、お客様に「手渡して受け取っていただく」ことによって、はじめて作成になるという法律行為が成立します。この解釈ではお客様が受け取らなかった領収書には「収入印紙を貼る必要はない」と判断されます。

小川真文
なお、お客様が受け取らない場合ですが、お客様が「いらない」と領収書不要を意思表示した場合と、失念などで受け取らずに帰った場合の2つのケースがあると思います。前者の場合では、お客様に渡す領収書を保管する義務は、法的にも道義的にもありませんので、破棄しても問題ありません。後者の場合は、いらないのか、それとも受け取るのを忘れたのか判断がつかず、後日受け取りに来ることも考えられますので、保管しておくのが道義的には安心です。また社内の会計処理としては、領収書の控えや複写が必要であることは指摘するまでもありませんので、可能な限り保管していただきたいと考えます。
私共の事務所のアドバイスとして、法的には領収書の保管義務はありませんが、道義的には「いらない」と言われても保管するようにしておくのが丁寧な対応になります。 社内保管用の控えや複写にホッチキス止めにして、「領収不要」や「受け取り不要」と記載しておくことをお勧めします。
丁寧なご回答いただきありがとうございます。
きちんと領収書の控えは保管しておきます。
とても勉強になりました。
ありがとうございました。
本投稿は、2024年06月18日 23時06分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。