ミニマムタックス改定に向けた節税策
お世話になっております。
2027年以降のミニマムタックス改定を見据え、未上場株式の譲渡タイミングについて、検討対象になり得るスキームか一次的なご見解を伺いたく存じます。
【前提】
未上場株式の含み益:約10億円
他所得:なし
最終的な株価は未確定(2026年度の成長・業績により変動)
最終売却予定:2027年
2027年ミニマムタックス改定案:控除1.65億円/税率30%(譲渡益3億円超で適用)
【検討案】
2026年に資産管理会社を設立
個人から同社へ未上場株式の一部を譲渡
2026年時点での合理的評価(2025年のA社への売却株価など)に基づき、一定額の譲渡益を2026年に確定
2027年の個人での譲渡益を圧縮し、ミニマムタックスの影響を軽減
2027年個人ならびに資産管理会社からA社に全株式を売却
【確認したい点】
・上記スキームは、税務上検討に値するか
・租税回避・実質支配(利益付け替え)として否認されるリスクの水準
・採る場合に必要な条件や、明確に避けるべき設計
税理士の回答
良波嘉男
結論(一次見解)
相談者様の案(2026年に資産管理会社へ一部譲渡して、2027年の個人譲渡益を圧縮)は、「検討に値しない」とまでは言いませんが、税務上はかなり危ない部類です。
理由はシンプルで、①“導管(名義を挟んだだけ)”と見られやすいことと、②仮に通ってもトータル税負担が下がる保証が弱いためです。
加えて、相談者様の前提(2027年に控除1.65億/税率30%)は、少なくとも私が確認できる一次情報ベースでは現行制度(2025年分からの「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化」=控除3.3億・22.5%の追加課税)と整合しません。まずは「現行法と確定している改正」でシミュレーションを組むのが安全です。
理由
1) “導管スキーム”認定リスクが高い
2026年:個人→資産管理会社へ移す
2027年:個人+資産管理会社からA社へ一括売却(予定)
この形は、税務署目線では「実質は個人が2027年に全部売ったのに、課税を分散するために会社を挟んだ」と疑われやすいです。
特に、設立直後/株を入れた直後/すぐ第三者へ売却は、否認の火種になりやすいです。
2) 適正時価での譲渡を“勝ち切る”難度が高い(未上場株)
未上場株の「合理的評価」は、第三者売買価格があっても、
取引条件(拘束・希薄化・優先条項・ロックアップ等)
少数株か支配株か
会社のフェーズ
で評価レンジがブレます。ここで安く入れると、寄附(利益移転)・実質課税の論点が立ちやすいです。
3) “ミニマムタックス回避”になっても、総額で得とは限らない
個人の譲渡益を法人に寄せると、法人側で売却益に法人税等、配当で個人に戻すと二段課税、になりやすく、ミニマムタックスだけを見て動くと逆に重くなることが普通にあります。
(相談者様の含み益10億規模だと、ここは特に顕著になりがちです。)
否認リスク水準
税務上の否認リスク:中〜高
調査で説明コストが重い(評価・目的・意思決定プロセスの立証が必要)
“節税目的が主”と見られた瞬間に、一気に厳しくなります
もしやるなら最低限必要な条件(やるなら“これでも足りない”くらい)
資産管理会社の設立目的が税以外で説明できる(ガバナンス、投資方針、資金調達、リスク隔離など)
取締役会議事録、投資方針、資金計画、デューデリ資料など意思決定の証跡を残す
未上場株の譲渡価格は、第三者評価(複数手法)+取引条件調整まで含めて“防御可能なレンジ”に置く
2026→2027の売却が最初から一体で予定されていると見られない運用(ただし、今回の前提だと実態上かなり難しい)
明確に避けるべき設計
設立直後に株を入れて、すぐ同じ買い手に売る(導管扱いされやすい)
「A社の売買価格を根拠に、2026年だけ都合よく評価を置く」
譲渡対価の資金手当が曖昧(会社に資金がないのに買った形)
議事録・契約・評価書が薄い(調査で一発で崩れます)
代替案(“検討に値する”順)
売却の年次分散が本当に可能か(契約スキームとして分割譲渡・段階取得・アーンアウト等)
組織再編(ホールディング化)を税繰り延べで組めるか(事業上の合理性が立つなら)
(相続・承継も絡むなら)承継設計とセットで最適化
※ここは事実関係次第で結論が大きく変わります。
本投稿は、2025年12月15日 13時50分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。







