法人成りした場合の個人事業の在庫品の扱いについて

　ご相談内容についての選択肢としては、①個人事業で売り切ってしまうか②個人事業での在庫を法人に移すことが考えられます。
前者①の場合は売り切ってしまうまでは法人で事業を開始すること、つまり個人と法人で同じ事業を並行して行う状況は避けるべきと思われます（商法上もしくは税務上は好ましくありません）。時間的な余裕のない現状では少し無理があるでしょう。
後者②の、法人で事業を開始するまでに個人事業での在庫を法人に売却する場合には、 法人への売値は「仕入値」もしくは「通常の販売価額の７０％相当額」のいずれか大きい金額で法人へ売却することとされています（これより低い価額で法人へ売却した場合、会社では受贈益が生じるなどの問題が生じますので注意が必要です）。この場合には売却益は殆どでない（もしくは利益なし）ので、申告に加味する必要はありますが在庫の売却による所得税増加等の懸念は無いことになります。

今ある在庫品は法人に売却は理解できましたが予約品はどうすればいいでしょうか？
8月発売の物があります。
予約なのでまだ売り上げとしても仕入れも行っていない状態です。
法人設立しても予約分が確定する8月まで事業を行えないのでしょうか？

商取引についての判断は事業主の任意ですが、通常は予約されたお客様に対して販売者の組織改変（個人から法人成）への説明を行い、同一価格、同一条件等での取引の旨の理解を頂いたうえで法人格での商品販売を行っていただくことが一般的と考えます。お客様が安心いただける対応を行って頂ければ特に問題はないと思います。

同一価格、同一条件等での取引の旨の理解を頂いたうえで法人格での商品販売を行っていただくことが一般的と考えます。

組織改編の説明をした上で予約を取り消して、法人として再度予約販売をするという事でしょうか？

予約販売に係る契約内容が不明ですが、必ずしも「予約を取り消して、法人として再度予約販売をする」必要はないと考えます。お客様は商品の購入が目的ですので販売先の事業承継及び取引移管等については拘らないものと考えます。あくまでも当該予約品売買の帰属は個人ではなく法人であると双方が認識できる説明及び証憑の体裁などの手続きをお願いします。

証憑の体裁などの手続きをお願いします。

お客様の合意が得られたメールのやりとりが証憑の体裁手続きになるのですか？
それとも事業継承や取引移管を証明する役所への手続きなどがあるのでしょうか？

取引の主体が法人であるという意味での証憑ですので、お客様へに対する交付書類、つまり個人から法人成への連絡通知、納品書や請求書、領収証等を法人で行うことと解釈してください。
最初に申し上げた通り取引内容の詳細は分かりかねますが、非常に重要な契約に基づく商品の売買であり「お客様の合意が得られたメールのやりとり」が必要でしたら個別に対応してください。法人成りについて「事業継承や取引移管を証明する役所への手続き」は特にないものと思われます。世間一般的には取引先への挨拶や契約の変更（名義等）などがありますから、それに準じた取扱いで問題ないと考えます。
もしどうしても本件予約売買について、法人の業務と併行した個人としての取引をなさりたいならば、競業忌避等に抵触しないように、また税務上の所得の帰属を明確にして租税回避等の疑念がないようにして頂くことをお勧めします。