外国株におけるドル建て配当の為替差益の取扱について
米国株式の配当金を米ドルで受け取り、その米ドルを円転せず数か月保有した後、その米ドルを使用して別の米国株式を購入した場合の税務上の取扱いについて質問です。
米国株式の配当金として米ドルを受け取った後、数か月間その米ドルを保有し、その後、円転せずに別の米国株式を米ドルで購入するケースです。
この場合、配当金を受け取った時点の為替レートよりも、米国株式を購入した時点の為替レートが円安になっていた場合、
1.配当金を受け取った時点から米国株式を購入した時点までに生じた為替差益について、米国株式の購入時に為替差益とし雑所得等を認識する必要があるのか。
2.上記の為替差益を認識する必要がある場合、その米国株式の取得価額は、配当金を受け取った時点の為替レートによる円換算額と、米国株約定時の為替レートにて算出するのか。
3.また、同一口座内に、配当金として受け取った米ドルのほか、過去に円からドルに交換した米ドルや、他の米国株式の売却によって得た米ドル等が混在している場合、米国株式の購入に使用した米ドルについて、その取得時期・取得時の為替レートをどのように特定して為替差益を計算すればよいのか。
4.なお、購入した米国株式を後日売却した場合、株式の取得時から売却時までの為替変動による損益については、外国株式の譲渡所得等に含めて計算するという理解でよいか。
以上について、ご教示ください。
税理士の回答
安島秀樹
1はそうだとおもいます
2はそうだとおもいます
3はドルの預け金か投資信託の取得原価の計算だとおもいますが、総平均法か移動平均法でやるのだとおもいます。4もそうだとおもいます。3と4は証券会社が円で計算してくれているか、すぐ計算できる情報を提供してくれているならそれを使っても問題ないとはおもいます。届がなければ総平均法とかたくなに言う税務署職員に出くわしたことはありますが、うまく計算できないようでした。
①為替差益の認識要否
認識する必要があります。
国税庁の見解では、外貨建預貯金をそのまま同一通貨で預け替える・引き出すだけであれば「外貨の保有状態に実質的な変化がない」として為替差損益は認識されませんが、その外貨を対価として新たな経済的価値を持つ資産(有価証券・不動産等)を取得した時点では、それまで単なる評価差額に過ぎなかったものが所得税法36条にいう「収入すべき金額」として実現したと扱われます(外貨建預金を払い出して外貨建MMFに投資した場合、投資金額の円換算額と、投資に充てた外国通貨を取得した時の為替レートによる円換算額との差額を為替差損益として所得認識する必要があるとされています)。
米国株式の購入も「外国通貨で支払が行われる資産の購入」(所得税法57条の3第1項)に該当するため、同じ考え方が及びます。したがって、配当受領時の円換算額と株式購入時の円換算額との差額(為替差益)を、株式購入のタイミングで雑所得として認識する必要があります。
②取得価額の算定方法
米国株式の取得価額は、購入時(約定時)の為替レートによる円換算額で計算します。
貸付用建物のケースについての国税庁の回答では、購入に充てた外国通貨を取得した時の為替レートによる円換算額との差額を為替差益として認識する必要があるとし、購入した資産の取得価額はその購入時の為替レートにより円換算した額とするとしています。これを米国株式に置き換えると、
為替差益=(株式購入時の円換算額)-(その原資となったドルを配当として受け取った時の円換算額)
株式の取得価額=(ドル建て購入代金)×(購入時=約定日の為替レート)
となります。配当受領時のレートを取得価額に使ってしまうと、後で株式を売却した際に為替差益が二重に(雑所得と譲渡所得の両方で)認識されてしまうため、購入時レートで取得価額を確定させる必要があります。
③混在するドルの特定方法(複数回取得している場合の計算)
同一口座内で配当金・円転したドル・他の米国株式売却代金など由来の異なるドルが混在している場合、個別のドルを紐付けて特定することは通常困難であるため、所得税法施行令118条1項(有価証券の取得費等)の規定に準じた「総平均法に準ずる方法」により計算するのが相当とされています(外国通貨の取得が複数回ある場合の為替差損益の計算は、所得税法施行令第118条第1項の有価証券の取得費に関する規定に準じて計算するのが相当)。
具体的には、国税庁の設例(建物購入の事例)に沿うと次のような計算になります。
保有する外貨1米ドル当たりの平均取得レート
=(各取得時点までのドルの円換算取得価額の合計)÷(保有ドルの合計数量)
為替差益=(使用時レート-上記平均取得レート)×使用したドル数量
つまり、①配当受領で得たドル、②円転で得たドル、③他の米国株式売却で得たドル、それぞれの取得時点・取得レート・数量を時系列で記録しておき、株式購入(=ドルの使用)時点までに累積した全ドルの加重平均レートを算出して、それを「取得時のレート」とみなして為替差益を計算する、という方法です。証券会社の外貨建て口座の入出金明細やレートを基に、この平均レートを自ら計算・管理しておく必要があります(特定口座であっても、通常この為替差損益部分までは自動計算・年間取引報告書に反映されないため、申告のためには別途管理が必要です)。
④売却時の譲渡所得への算入
ご理解のとおりです。株式購入時点でドルの取得価額(=円換算コスト)が確定していますので、その後の株式保有期間中の為替変動による損益は、株価自体の値動きと合算して外国株式の譲渡所得の中に取り込まれます。
具体的には、
譲渡収入金額=売却代金(ドル)×売却時(約定日)の為替レート
取得費=購入代金(ドル)×購入時(約定日)の為替レート(②で確定した金額)
譲渡所得=譲渡収入金額-取得費-譲渡費用
という形で、株価の変動分と保有期間中の為替変動分を分離せず一体として上場株式等の譲渡所得等(申告分離課税)に算入します。株式を保有している間の為替変動は、それ単独で雑所得として都度認識するものではなく、あくまで売却時に譲渡所得の計算要素として反映される、という整理です。
なお、①〜③はいずれも法的拘束力のない質疑応答事例(個別の照会に対する一般的回答)に基づく実務上確立した考え方であり、条文上明文の規定があるわけではない点はご留意ください。特に③の「総平均法に準ずる方法」は建物購入事例からの類推であり、株式購入について同一の考え方が国税庁から明示されているわけではありませんが、実務上はこの考え方に沿って計算するのが一般的です。
本投稿は、2026年09月10日 14時36分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。







