米国株式の配当に対する外国税額控除と国内株式の損益通算について
米国株式の配当に対し、外国税額控除の適用を受けた上で、更に、国内株式の譲渡損と損益通算することは可能でしょうか?
税理士の回答

中島吉央
配当と譲渡損の通算が先です。その結果、国外配当所得が残っていれば、その年分の国外所得総額があるということになり、外国税額控除が適用できるということになります。
有難うございます。為念確認ですが、先に行う配当と譲渡損の通算ですが、ここで言う「配当」とは源泉徴収前の配当額で良いでしょうか?これにより(損益通算により)、米国と日本国内で源泉徴収された分が還付されると言うことでしょうか?その上で、まだ通算しきれない配当があれば、その分については、外国勢控除により米国での源泉徴収分(10%)のみ還付されると言うことで良いでしょうか?

中島吉央
上場外国株式の配当について、すでに外国税が源泉徴収されている場合には、その徴収後の金額に対して、日本で20.315%の税率で源泉徴収されます。具体的には、配当を100、国外源泉徴収税額を10とすると、100から10を差し引いた90の20.315%に相当する税額18が、日本において源泉徴収されることになります。
この場合、100の配当と考えて譲渡損と通算します。この結果、国内の源泉徴収された分が戻ります。もし譲渡損と相殺しきれない海外配当が残っていれば、「その年分の調整国外所得金額」として外国税額控除を計算します。
なお、国内、国外の源泉された金額の全額が戻ってくるとはかぎりません。
外部リンク先 国税庁HP「外国税額控除を受けられる方へ(居住者用)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2018/pdf/040.pdf
有難うございます。最後に、もう1点だけ教えて下さい。損益通算により、「国内の源泉徴収された分(米国で源泉徴収後の20.315%)が戻る」とありますが、この時、米国で源泉徴収された10%は取り戻せない(両方取り戻すのは無理)と言うことでしょうか?

中島吉央
無理ですね。上記国税庁HP資料の7頁を利子ではなく配当と変えて読んでもらえればわかると思います。
外国証券投資に係る利子・配当等は、まず外国で課税(源泉徴収)されます。そして、この利子・配当等に対して日本国内でも課税されます。このように外国と日本とで二重に課税されるケースでは、二重課税を調整するため「外国税額控除」の規定が設けられており、国外源泉徴収税額について、外国税額控除を適用する場合には、確定申告が必要です。
つまり、特定口座(源泉あり)で配当と譲渡損が相殺され、国内の源泉徴収が戻ってきても、国外源泉徴収税額について、外国税額控除を適用する場合には、確定申告が必要だということです。
口座は一般口座のため、確定申告する前提です。
その前提で、国内株式の譲渡損との損益通算により、米国株式の配当に掛かる国外・国内の両方の源泉徴収額を取り戻すことは出来るのか?と言う点が知りたいポイントです。
それとも、国内株式との譲渡損と損益通算する米国株式の配当については、国内での源泉徴収額しか還付を受けることが出来ず、米国での源泉徴収額は取り戻せない(=損益通算と外国税額控除のダブル活用はできない)と言うことでしょうか?

中島吉央
上記で書いていますが、通算しきれない部分の外国株式の配当については、国外所得金額として、外国税額控除の計算に入ります
通算しきれない分の配当については、外国税額控除によって、米国での源泉徴収額を取り戻せるのは理解しましたが、そうではなく、米国株式の配当額が国内株式の譲渡損内の場合(つまり、通算しきれない分はないと言う前提)はどうでしょうか?その場合、国内源泉徴収分のみならず、米国での源泉徴収分も取り戻せるのでしょうか?

中島吉央
質問者さんの仰る点について、私自身も以前、疑問がありました。
ようは、上記国税資料の「調整国外所得金額」が通算する前の金額なのか通算した後の金額なのかで違ってくるということです。
例えば、国外配当100で国外源泉徴収額10、国内源泉徴収額18で、譲渡損が200の場合、損益通算の結果、国内源泉徴収額は戻ってきます。
そして、国外源泉徴収額については外国税額控除による調整となりますが、「調整国外所得金額」が通算する前の金額であれば、100の所得が有るので、外国税額控除ができるということになりますが、通算した後の金額ならば所得0なので、外国税額控除ができないということになります。
この点について、以前、複数の申告をするということでいろいろな税務署で事前相談をしたのですが、見解がわかれましたw 条文上、どっちとも読めるという感じだからしょうがないかなと思います。
ただ、論理的に考えると通算した後の金額で考えるべき、よって、外国税額控除は受けられないという結論に達しました。
この点について、国税庁のHPでは詳しく踏み込んでいないのですが、民間の税理士HPではいくつか書かれています。民間の税理士HPをリンクするのは規約違反となってしまいますので、「上場株式等に係る譲渡損失と特定公社債(外国国債)利子の損益通算をした場合の外国税額控除」や「外国税額控除と配当所得の関係。【特定口座の年間取引報告書の配当など】」等で検索していただき、お暇な時に読んでいただければと思います。
ようやく疑問点がクリアになりました。本当に有難うございました!
本投稿は、2019年09月25日 11時59分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。