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生前の相続放棄はできない!?遺留分の放棄との違いとは

著者: 棚田 健大郎 行政書士・ファイナンシャルプランナー・相続アドバイザー

夫婦は離婚することで法律上は他人と同じ扱いとなりますが、親子関係については、たとえ親が離婚したとしても残り続けます。そのため、離婚や再婚を繰り返していると、将来自分が死亡した際の『相続人』が増えていくことになります。

たとえば、離婚してから交流のない前妻との子供よりも、再婚後の後妻との間の子供に遺産を相続させたいといった場合に、前妻との子供にあらかじめ『相続放棄』をしてもらうことはできるのでしょうか。

目次

被相続人が死ぬ前に『相続放棄』はできるのか

もしも自分の死後に財産を相続して欲しくない人がいる場合、自分の生きているうちに『相続放棄』をしてもらうことはできるのでしょうか。

結論から言うと、被相続人が死亡する前に相続放棄をさせることはできません(ここでいう相続放棄とは、家庭裁判所に対して行う正式な法的手続きのことです)。

そもそも相続とは、被相続人の遺産を相続することで、家族のその後の生活を守るという重要な目的があります。相続放棄をすると、当初から相続人ではなかったことになり、一切の遺産が相続できなくなります。

そのような重要な権利を生前に放棄するということは、極めてリスクが高いと言えます。 よって、相続放棄については、実際に相続が発生して相続人になったときに、相続するか放棄するかを選ぶしかない のです。

冒頭の事例のように、前妻との間の子供に生前に相続放棄をして欲しくても、残念ながら法的にそれはかなわない、ということになります。

『相続放棄』は無理でも『遺留分の放棄』なら可能

生前の相続放棄はできませんが、同じような状態を作り出す方法として『遺留分の放棄』という手続きがあります。

まず『遺留分』とは、兄弟姉妹以外の相続人に認められている、法律上取得することが保障されている遺産の一定割合のことをいいます。

もしも、遺留分を侵害する内容の遺言書を作成した場合、遺留分の権利を持つ相続人(遺留分権利者と言います)が自分の遺留分を主張して返還を求めることができます。これを遺留分減殺請求と言い、遺留分を侵害する限度で取り戻すことができます。

生前に遺留分を放棄することで、将来的に相続が発生して遺留分を侵害されたとしても、遺留分減殺請求によって遺留分を取り戻すことができなくなります。

『相続放棄』と『遺留分の放棄』の違いは?

相続放棄をすると、その相続人は当初から相続人ではなかったことになるため、遺産を相続する一切の権利を失うことになります。

対して遺留分の放棄は、一定の相続人が有している『遺留分』という権利のみを放棄することを意味しています。従って、生前に遺留分の放棄をしたとしても、将来相続が発生した際には、相続人になります。

【具体例で考えよう】

前妻との間の子供Xと後妻との間の子供Yの2名が、父Aの相続人予定者だとします。この状態でXがAの生前に『遺留分の放棄』をしたとします。その後Aが死亡し相続が発生した場合、XとYの2名が相続人となります。

ただし、Aが遺言書で『すべての遺産をYに相続させる』との内容を残していた場合、すべての遺産はYが相続することになります。

通常、このような遺言書はXの遺留分を侵害しているため、Xが遺留分減殺請求をすると、最低でもXの遺留分である1/4の遺産はXのものになります。ところが、今回のように生前に『遺留分の放棄』をしていると、Xには遺留分の権利がないため、遺留分減殺請求はできず、すべての遺産はYのものになるのです。

このように、遺留分の放棄と遺言書を組み合わせることで、生前に相続放棄をするのと近しい状況を作り出すことができるのです。

『遺留分の放棄』は簡単には認められない

遺留分の放棄は、相続放棄と違って被相続人の生前に家庭裁判所に申し立てることですることができます。ただし、相続放棄と同じように、放棄をする人本人には基本的にメリットがないため、遺留分を放棄するには必ず家庭裁判所の許可が必要になります。

なお、家庭裁判所も遺留分の放棄が本人に与える影響に配慮して、許可をするかどうかは非常に慎重に判断します。許可が出るためには、以下の3つの条件を満たしていることが一つの目安となります。

  • 本人の自由な意思によって遺留分を放棄しようとしている
  • 遺留分を放棄することに合理性や必要性がある
  • 代償性がある(見返りがある)

要するに、「誰かから遺留分を放棄するよう圧力をかけられていないか」を慎重に判断するということです。

特に代償性はとても重要です。代償性とは、遺留分を放棄する見返りが本人にあるのかという点です。たとえば、遺留分を放棄する代わりに、現時点で一定の財産を贈与する、といったことが代償性として認められます。

これらの条件は必須ではありませんが、家庭裁判所の許可を得るにあたっては、とても重要な要素となります。

おわりに

相続放棄と遺留分の放棄は、言葉が似ているため混同しやすいのですが、意味や効果は異なるため間違えないよう注意が必要です。相続放棄は相続発生後、遺留分の放棄は相続発生前にしか行うことができません

遺留分の放棄をしてもらうためには、まずはしっかりと相手と話し合いを行い、遺留分を放棄することによる一定のメリットを、相手にも提示することがとても重要です。

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