相続不動産の換価分割(相続〜登記〜売却)について教えてください
◆概要
土地家屋を小規模宅地等特例(一部分)で兄弟①②③の3人で相続します。評価額は仮に5000万円とします。被相続人と①は別居、②③は同居しており不動産の予想売却益は仮に9000万円とし、三分の一ずつ換価分割するとします。
そこでご質問です
◆質問A
換価分割の便宜上とすれば①単独での相続・登記・売却でも、相続税の申告は②③の相続額は小規模宅地等特例適応となりますか?
◆質問B
①はマイホームでなかったため、住宅売却3000万円控除は適応さず、売却益総額9000万円に対して約20%の所得税がかかるのでしょうか?
それとも換価分割のため便宜上で単独売却とすれば、①が受け取る三分の一の金額に対しての課税となるのでしょうか?
質問C
他に良い方策はあるのでしょうか?
以上よろしくお願い致します。
税理士の回答
質問A:①単独登記・単独売却でも②③に小規模宅地等の特例は使えるか
結論:使えます。ただし「保有継続要件」がボトルネックになります。
便宜上①名義で登記しても、遺産分割協議書に「換価分割目的である旨」と「分配割合(各1/3)」が明記されていれば、贈与税の問題は生じず、相続税の申告(第11表)でも各相続人が分配割合に応じて不動産を取得したものとして記載するのが正しい扱いです。したがって②③についても、実質的な取得割合(1/3ずつ)に基づいて小規模宅地等の特例の適用要件(同居・保有継続等)を判定できます。単独登記であること自体は適用の妨げにはなりません。
ただし重要な注意点が2つあります。
・保有継続要件(措法69の4)
同居親族が特定居住用宅地等の特例を受けるには、「相続税の申告期限まで引き続き所有」していることが要件です。換価分割は売却前提のため、相続税の申告期限(原則10ヶ月)前に引渡しが完了してしまうと、②③ともこの要件を満たせず特例が使えなくなります。
実務上の対応としては、「契約は申告期限前に締結してよいが、引渡し(決済)を申告期限後にする」ことで保有継続要件は満たせます(保有の判定は引渡し基準)。買主との交渉次第にはなりますが、スケジュール管理が肝になります。
・①の別居親族分について
①は同居親族ではないため、原則としてそのままでは小規模宅地の特例の対象になりません。②③という同居親族が現に存在する以上、①が「家なき子特例」(措法69の4③二ロ)を使う余地もありません(家なき子特例は同居親族がいない場合の救済規定のため)。したがって①の取得分(1/3)については特例適用なしという前提で相続税計算をする必要があります。
以上を踏まえると、②③分については保有継続要件をクリアできれば特例適用可、①分は適用なし、という整理になります。
質問B:譲渡所得税は9000万円全体に課税されるか、①の1/3のみか
結論:どちらの想定も正確ではありません。「①②③それぞれが、自己の取得割合(1/3)に応じた譲渡所得を、各自の確定申告で申告・納税する」というのが正しい扱いです。
換価分割の効果として「各相続人が、譲渡した相続財産を取決めた代金配分の割合で取得したことになる」ため、未分割であった財産を代金配分の割合により分割・譲渡したものとして、各相続人が個別に譲渡所得の申告を行うことになります(上場株式の換価分割の事例でも同様の取扱いが確認されています)。単独名義で契約・決済したとしても、税法上は「各相続人が自分の持分相当額を売却した」と扱われ、①だけが全額について申告義務を負うわけではありません。
その上で、特別控除の適用可否は各相続人ごとに個別判定になります。
①(別居・非居住):ご認識の通り、マイホーム特例(居住用財産の3,000万円特別控除)の対象にはなりません。①の取得割合(1/3、売却益ベースで概ね3,000万円)に対して、長期譲渡所得なら約20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)の税率が課税されます。全体9,000万円に対してではなく、あくまで①の1/3持分の譲渡所得に対する課税です。
②③(同居):仮に相続後も引き続きご自身の居住用として住み続け、要件(居住の実態、譲渡期限等)を満たせば、各自がそれぞれ自分の1/3持分について居住用財産の3,000万円特別控除を適用できる可能性があります(3人とも同一家屋に住んでいた場合、令和6年以降は住宅所有者が3人以上の場合1人あたり上限2,000万円に改正されている点にもご留意ください)。ただし、この特例は「空き家特例」(被相続人の居住用財産を売った場合の3,000万円特別控除)とは別物で、②③が同居していたため空き家特例(同特例は相続開始直前に被相続人が独居していたことが要件)は使えません。
取得費加算の特例:相続税を実際に納付している場合、相続開始日から3年10ヶ月以内の譲渡であれば、各相続人が負担した相続税額のうち譲渡資産対応部分を取得費に加算できる特例(措法39)も併用検討の余地があります。これは①②③共通で使える可能性があるので、全体の税負担軽減として検討する価値があります。
詳しく回答くださいまして感謝いたします。とても参考になりました、ありがとうございました。
ベストアンサーに選んで頂きありがとうございます。
本投稿は、2026年09月08日 09時44分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。







