夫婦で営む小規模法人における交際や会議等の飲食代金の税法上の扱い
混乱の原因: 経理ソフトなどで使う会計上の勘定科目と、税法上の科目名の定義が異なる。同様に、会計で作成するPL/BSと法人概況説明書の仕様書が異なる。
前提条件: 代表とアルバイト1名のみが所属している。アルバイトは代表の妻。
上記前提の下で、下記のようなケースでは、税法上どのような扱いになり、損金算入なのか不算入なのか、お教えく頂けますと幸いです。
ケース1
社内で運営している広告収入目的のウェブサイトに掲載しアクセス数を稼ぐため、ある飲食店に行き、駐車場・外観・内観・メニュー表・飲食物・厨房などを撮影し、それらの情報をまとめて記事を執筆し、WEBサイトに掲載した。
この場合の飲食費、そこまでの交通費は、税法上、どのような科目で損金参入されるのか
ケース2
年末の忘年会として慰安旅行を企画している。
この時の参加者は、社員全員だが、実質、代表とアルバイト(妻)だけである。
この場合、福利厚生費に該当し、損金算入されるか
ケース3
社外の人間と打ち合わせや情報交換のために飲食店で会話した。
この時の飲食代は、5000円以下なら会議費、超えると交際費(ただし年額合計800万円以内)になり、損金算入されるか
また、5000円以内でも飲酒があった場合は交際費になり、損金算入されるか
ケース4
社内の人間だけで、社外の飲食店で食事をしながら打ち合わせを行った。
(別件のMTGや取材のための移動中等背景は様々)
この場合、会議費になるのか、交際費になるのか、または損金不算入か。
(会計上は会議費で処理するが、税法上はどうなるのかという質問)
ケース5
ある時期まで、「コワーキングスペース」で作業していたが、
途中からその近隣のカフェをコワーキングスペース替わりに使うことにした。
この場合、場所が変わっただけで用途自体は同じなので、勘定科目は雑費(摘要:ワークスペース利用料)のままで良いか。そして、損金算入されるか。
この時、コーヒーや軽食以外に、通常の食事として注文したものに関しては自分の財布から出した。
上記5ケースにおいて、領収証は基本的に会社名かつ会社用の法人カードで決済するが、店舗が混雑している場合や、店舗側の都合で、法人名の入っていない領収証(レシート)だけを保存している場合がある。
そのような場合でも、5ケースに対する回答に変更は一切ないか。
税理士の回答

まず、ケースごとの回答をする前に、接待交際費、会議費、福利厚生費の各科目についてご説明させていただきます。各科目についてご理解頂ければ、飲食代については今回以外のケースでも判断を迷わなくなるのではないかと思います。
接待交際費…接待交際費は取引先や事業に関係する人のために接待、慰安、贈答等のために支出する費用を言います。
会議費…会議費は社内での会議や取引先との会議を行うに際し使用した費用のことをいい、具体的には会議を行う上で必要な飲食代、会場利用料、会議資料代、喫茶店利用料、社内外の会議や打ち合わせに利用した飲食代等となります。会議費として認められるためには、業務を行う上で必要な相手と必要な会議を行っていることが要件となります。
福利厚生費…福利厚生費は従業員の慰安のための費用であり、その性質上範囲が広く内容は多岐にわたりますが、社員全員が利用できる機会が平等に保障さていること、金額の妥当性といった要件を満たす必要があります。
(接待交際費と会議費については、同じ飲食代であっても会議をしたかどうかで区別することになります。ですが会議をしたかどうかを税務署などの外部の人間が判断することは難しいので、1人5000円以下であれば会議費とみなすことができます。そのためには領収書に参加者の名前、人数を追記しておく必要があります。)
ケース1
WEBサイトに記事を掲載することが会社の業務といえるのであれば、 そこでの飲食代は取材費や研究費等の科目で損金に算入できると考えます。また、バスや電車などの乗り物を利用していれば旅費交通費として、車のガソリン代は車両費となります。
ただ、例えばスープカレーのお店に行ったとしてそれが経費とみなされるには、そのお店に関する記事に限らずスープカレーのお店に関する複数の記事を掲載し、事業として取り組んでいる様子が外からも理解できる必要があるでしょう。
ケース2
上記の通り、福利厚生費は従業員のための費用であって、役員だけの旅行は社員旅行とは認められません。
確かに奥さんは登記上の役員ではありませんが、税務上はみなし役員(代表者の親族等で経営に参加しているとみなされる者)に該当する可能性が高く、福利厚生費として認められるのは難しいと言えます。
福利厚生目的ではなくビジネス目的でその土地を訪れた等であれば経費になる可能性はあります。(例えば不動産業で購入予定の不動産を事前に見に行ったとか)

ケース3
社外の人間との飲食代は、原則的に上記の区分通りで飲酒をしていようが会議をしていれば会議費になります。
ただ、実際に会議をしていたかどうかは外からの判断が難しいため、一人あたり5000円以上であれば交際費に区分するのが無難だと思います。
また金額だけでなく、お店の種類によっても社会通念上常識的な判断をすべきでしょう。(仮に5000円以下でもキャバクラで会議をしたとは考えにくい)
ケース4
社内の人間との飲食代は、原則的に会議をしていれば会議費になりますが、社長と奥さんだけの会社の場合はプライベートでの飲食と区分が難しく、経費にするのはかなり難しいと考えられます。
会議費とするためには会議の実態を明確にするために、議事録等の備えが必要かと。
ケース5
場所が変わっても、作業場所として利用しているのであれば、雑費等として損金に算入できます。摘要もそのままで大丈夫です。
ただ、一人で普通に食事をしただけでは経費になりませんので、認められる内容はコーヒー代程度になると思います。
領収書についてはレシートで構いません。というか逆にレシートの方が内容が細かく書いてあって、望ましいと思います。
上記記載の○○費になる、経費になるといった表現は、法人税法上の損金になるという意味で結構です。
大変丁寧なご回答、誠にありがとうございます。
ケース1に関して
事業性があれば良いということで理解しました。
例えば、観光情報ポータルサイトに、楽天トラベルやGoogleアドセンスなどの広告収入源を組み込んだサイトを作成・運営するためであれば、損金として正しいと感じました。
ケース2に関して
社員全員(2人)が対象でも、福利厚生費にならない場合があるのですね。
逆に、ケース1のような事業目的(例えば、Reluxや一休のような旅館紹介サイトの作成目的)であれば、取材費になるということですね。
ケース4に関して
議題と結論、場所、参加者をちゃんと毎回記録していても、家族経営の法人だと損金計上できないことがあるのですね。
会議費にするためにわざわざ外部の人間を読んだり、人を雇ったりするのもおかしい話なので、難しい問題ですね・・・
ケース5に関して
税務署で質問した時と全く同じ回答で安心しました。

会議費についてはきちんと記録を残しておけば大丈夫だとは思います。家族経営会社で家族だけで何かする場合は、基本的に税務署の調査官は経費性を疑ってかかります。記録・頻度・金額・店の種類等より一層注意しておいた方がいいのは間違いないです。
非常に丁寧な解説、誠にありがとうございました!
高度な知識を持ちながらも、私のような素人にも分かり易い説明をして頂き、感謝感激です。
本投稿は、2019年04月01日 18時54分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。