法人を設立し、事務所用の建物(約3,000万円)の購入を検討しております。
法人を設立し、自社で使用する事務所用の建物(約3,000万円)の購入を検討しております。
購入方法について、
個人として購入し、自社に賃貸して賃料収入を得る方法
法人として購入するが、役員借入金により資金を拠出
上記2つの方法のいずれが適切か迷っております。
それぞれの方法における メリット・デメリット についても教えていただけると大変助かります。
また税理士の先生方ならどちらで購入をするかも教えてください。
税理士の回答

後藤隆一
1. 結論
どちらの方法が絶対的に適切であるかは、貴社(法人)の将来的な利益計画、代表者(個人)の他の所得状況やライフプラン、将来の事業承継や相続に関する意向など、複合的な要因によって変わるため、一概に断定することはできません。
方法1:個人として購入し、法人に賃貸する
この方法は、個人が建物の所有者となり、自身が役員を務める法人との間で賃貸借契約を締結する形態です。
メリット
所得の分散による税負担の最適化可能性
法人から個人へ支払われる賃料は、法人の損金(経費)となり、個人の不動産所得となります。役員報酬と不動産所得のバランスを調整することで、所得税と法人税の異なる税率構造を利用し、法人・個人トータルでの税負担を軽減できる可能性があります。
個人の資産形成
建物は法人の経営状態から切り離された個人の純粋な資産となります。万が一法人が経営不振に陥った場合でも、個人の資産として保全されます。
社会保険料負担の軽減可能性
役員報酬の一部を賃料として受け取ることで、社会保険料の算定基礎となる標準報酬月額を低く抑えられる可能性があります。これにより、法人および個人の社会保険料負担が軽減される場合があります。
デメリット
適正賃料の設定義務と税務リスク
法人から個人へ支払う賃料は、客観的な相場(近隣の同種物件の賃料水準など)に基づいた「適正な金額」である必要があります。相場より著しく高額な賃料を設定した場合、その高額な部分が役員賞与と認定され、法人側で損金不算入となり、かつ個人側で給与所得として課税される二重課税のリスクがあります。
個人の所得税・住民税の発生
受け取った賃料から建物の減価償却費や固定資産税、修繕費などの必要経費を差し引いた不動産所得は、個人の他の所得(給与所得など)と合算して総合課税の対象となり、確定申告が必要です。
個人での資金調達
建物の購入資金(約3,000万円)は、個人として金融機関から融資を受けるなどして調達する必要があります。
方法2:法人として購入し、役員借入金により資金を拠出する
この方法は、法人が建物の所有者となり、購入資金を役員個人からの借入金で賄う形態です。
メリット
関連費用の全額損金算入
建物の減価償却費、不動産取得税、固定資産税、損害保険料、将来発生する修繕費など、建物維持管理に関するすべての費用を法人の損金として計上できます。これにより、法人の課税所得を圧縮する効果が期待できます。
金融機関等からの社会的信用の向上
法人が不動産という資産を保有することにより、財務体質の強化と見なされ、金融機関からの融資審査などで有利に働く可能性があります。
売却時の損益通算
将来、建物を売却して損失が出た場合、その損失を法人の他の事業年度の利益と相殺(損益通算)することが可能です。
デメリット
資金の固定化と返済原資の問題
個人が拠出した資金は、法人に貸し付けられている状態(役員借入金)であり、返済を受けるまで法人に固定化されます。この借入金の返済原資は、法人が事業活動で得た税引後の利益となります。そのため、法人が安定的に利益を計上できなければ、返済が滞る可能性があります。
法人破綻時の資産喪失リスク
建物は法人の資産です。万が一法人が倒産した場合、この建物は債権者への弁済に充てられ、差し押さえの対象となります。個人資産として守ることはできません。
本投稿は、2025年10月02日 15時58分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。