個人事業主が知っておくべき、7つの資金調達方法とポイント

個人事業を始めて、徐々に事業が動き出すと直面するのが「資金調達」の問題です。
事業を拡大していくためには、ある程度まとまった資金が必要ですが、個人事業主の場合は一般企業に比べると融資が受けにくいことから、資金調達に頭を悩ませている方も多いことと思います。
そこでこの記事では個人事業主向けの資金調達方法について紹介します。
目次
日本政策金融公庫の融資
日本政策金融公庫とは、国が100%出資している政府系金融機関で、2008年に国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫の合併によりできました。
民間の金融機関が積極的に融資を行えない零細企業や個人事業主に対しての融資に力を入れているため、ほかの金融機関から融資を受けることが難しい方でも、比較的低金利で借り入れできる点が大きなメリットです。
また、日本政策金融公庫から融資を受けられると信用度が高いと評価され、ほかの金融機関などから追加融資を受けられる可能性が高まります。そこでまず資金調達を考えるときは、日本政策金融公庫からの融資を検討するとよいでしょう。
新創業融資制度
日本政策金融公庫が設けている融資制度の中で、創業まもない個人事業主の資金調達として利用できるのが「新創業融資制度」です。
新創業融資制度とは、日本政策金融公庫が設けているほかの融資制度と組み合わせて申し込むことで、無担保、無保証で一定の融資を受けられる制度です。通常は「新規開業資金」や「中小企業経営力強化資金」など、使途の目的が近い制度と組み合わせて利用するケースが一般的です。
次のいずれかに該当すれば個人事業主、法人どちらでも利用が可能です。
【新創業融資制度の対象】
- 新規に事業を始める方
- 創業後2期を終えていない方
融資限度額は資金使途ごとに定められており、運転資金1,500万円、設備資金1,500万円の合計3,000万円を限度として融資を受けることができます。
認定支援機関について
日本政策金融公庫では、「認定支援機関(経営革新等支援機関)」の指導と助言を受けることを融資条件のひとつとしている場合があります。
認定支援機関(経営革新等支援機関)とは、個人事業主や中小企業の経営などについて一定の専門知識や実務経験を有することを国から認定された専門機関のことで、税理士・税理士事務所などが認定を受けています。
税理士などに一定の報酬を支払う必要はありますが、それによって経営のプロの意見を事業計画に取り入れられるという点が大きなメリットです。
- 日本政策金融公庫の「新創業融資制度」とは?必要書類や金利、条件を解説
- 「中小企業経営力強化資金」とは?「新創業融資制度」との違いや必要書類を解説
- 【2019年版】日本政策金融公庫の融資制度21選と利用条件・金利まとめ
信用保証協会の保証付き融資
信用保証協会とは、一定の保証料を支払うことで、事業者が借入金を返済できなくなった際、代わりに返済を行なう保証機関です。
信用保証協会の保証があることで融資審査のハードルを下げられるので、通常であれば借り入れが難しい個人事業者でも、融資が受けやすくなります。
信用保証協会の保証付き融資を利用すれば、通常よりも低金利で融資が受けられるほか、担保や連帯保証人は不要になるというメリットがあります。
申し込みは、融資を受ける金融機関を窓口とするのが一般的となっています。
プロパー融資との違い
信用保証協会を使わずに、金融機関から直接融資を受けることを「プロパー融資」といいます。
プロパー融資については、融資後の貸し倒れリスクを金融機関側が直接負うこととなるため、審査のハードルが高いという特徴があります。
個人事業主の場合は、プロパー融資による資金調達は難しいといわれているので、基本的には保証協会の保証付き融資を利用したほうがよいでしょう。
信用金庫・信用組合の融資

民間の金融機関の中でも、個人事業主のような小さな事業体へのサポートに力を入れているのが信用金庫・信用組合です。
営利第一主義である銀行とは違い、信用金庫・信用組合は地域の会員と相互扶助の精神で運営している非営利法人であり、営利よりも地域の発展を目的としています。両者の違いは、信用金庫が「信用金庫法」が根拠法になっているのに対して、信用組合は「中小企業等協同組合法協同組合による金融事業に関する法律」を根拠法にしている点です。
ただし、金利は若干高めに設定されているという点と、創業してから一定期間経過しないと借りられないというデメリットもあります。
また、融資を受けられるのは事業を行う地域の信用金庫・信用組合のみなので、注意しましょう。
補助金・助成金
融資以外の資金調達方法としては、国や自治体から給付される補助金や助成金を活用するという方法もあります。
融資と異なり、補助金・助成金は返済が不要ですが、基本的に収入として扱われるため、税金が課されることに注意しましょう。
個人事業主が利用できる補助金や助成金は地域によってさまざまあります。
創業補助金(地域創造的起業補助金)
創業補助金(地域創造的起業補助金)とは、創業時の経費の一部を補助することで新たな需要や雇用を生み出して国の経済を活性化させることを目的とした制度です。
補助金の申請には、次の要件を満たしている必要があります。
- 日本に在住し、日本で創業する
- 新たに1人以上雇用する
- 認定市区町村で創業する
- 認定特定創業支援事業を受ける
補助の対象となるのは創業時に支出した経費の1/2で、補助金額の範囲は外部資金調達の有無によって次のように異なります。
- 外部資金調達ありの場合:50万円以上200万円以内
- 外部資金調達なしの場合:50万円以上100万円以内
利用できるのはあくまで認定市区町村内で創業する場合に限られますので、あらかじめ事業所が所在する自治体が該当するか確認しましょう。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金とは、個人事業主などの小規模な事業者の販路開拓などの取り組み支援を目的とした補助金です。商工会議所が窓口となっており、50万円を上限として対象となる経費の2/3以内の補助が受けられます。
たとえば、チラシ作成、DM送付、ホームページ作成、宣伝費用、展示会への出店費用など、販路開拓を目的とする出費や、管理ソフトの導入など業務効率化のための出費などが補助の対象です。
上記2つの補助金以外にも、個人事業主が利用できる助成金・補助金には以下のようなものがあります。
- 人材開発支援助成金
- トライアル雇用奨励金
- 地方再生中小企業創業助成金
このほか各自治体が独自に行っているものもありますので、一度確認してみましょう。
クラウドファンディング

クラウドファンディングとは、インターネット上で不特定多数の人から出資を受けることで資金を調達する方法です。
資金調達の目的となるプロジェクトを計画し、それに賛同する人からインターネットを通じて資金を募ります。資金を提供してくれた方々には、お礼として製品を送ったり、サービスを受けられる権利を付与したりするのが一般的です。
クラウドファンディングで集めた資金は場合により課税対象となったり、サービスサイトへ支払う手数料が発生することもありますが、そのような支出を補填する補助金・助成金も設けられています。
ただし申し込みから実際に資金を得るまで数か月かかることもあるため、急いで資金調達したい場合には不向きです。
- 「クラウドファンディング」ってどんな投資?メリットは?
- クラウドファンディングで集めたお金にも税金がかかる?課税ルールと会計処理の方法を解説
- クラウドファンディングの活用で受け取れる補助金・助成金と利用時の注意点
ビジネスローン
ビジネスローンとは民間の金融機関のほか、専門業者や信販会社など、ノンバンク系といわれる企業でも取り扱っている事業性ローンです。
借り入れできる金額は500万円前後と、通常の融資に比べると上限額は低いのですが、無担保・無保証人で利用できることと、限度額の範囲内であれば何度でも利用可能なところが大きなメリットです。
金利は5〜18%程度が相場で、公的な融資制度に比べると若干高めとなっています。比較的容易に借り入れができる点は魅力的ではありますが、事業の継続性を考えると利用の際は十分に検討した方がよいでしょう。
ファクタリング
売掛債権などを専門業者に買い取ってもらうことで資金調達することを「ファクタリング」といいます。要するに入金の前倒しにあたるため、借入とは異なり返済は不要です。
借入に対する金利の代わりに、ファクタリング業者へ支払う手数料が発生し、入金額に対して最高30%前後となります。
早ければ即日現金化することも可能なので、急に資金繰りが悪化した際に便利です。
個人事業主が資金調達をするときのポイント
このように、個人事業主の方でも利用できる資金調達方法は複数あります。
法人に比べて個人事業主の場合は一度に高額な資金を集めることが難しいため、まずは目標とする資金調達の金額の内訳を明確にし、優先順位の高い項目から順に調達できた資金を充てていくとよいでしょう。
そうして付き合いのある金融機関が増えることで、事業を拡大した際に、追加融資の選択肢の幅も広がることになります。
おわりに
個人事業主の中には資金調達がうまくいかず、家族や友人からの借り入れを検討してるケースもあるかもしれません。しかし家族や友人を頼りにした資金調達は、関係性が悪化したり、贈与税が課税されたりするリスクもあります。
資金調達には紹介したようにさまざまな方法があるため、すべて自力で解決しようとはせず、税理士などの専門家の力を借りるという選択肢を検討してみるのもよいでしょう。
専門家のサポートを受けることで、金融機関に対して説得力のある創業計画書を作成したり、面談に同席したりしてもらえますので、融資を受けられる可能性が大きく上がります。
資金調達方法に悩んで事業拡大を諦めてしまう前に、まずは税理士などの専門家に相談してみましょう。
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