不動産の名義変更について
母の土地を売却する予定がありますが、その前に、私(長男)の名義に変更しようと思います。
目的は、将来発生するであろう母から私への相続や贈与の際の税金を節税するためです。
名義変更は正式な売買契約を締結する前に行う予定です。
このような場合、課税対象となる土地の評価額はどのようにして算出されるのでしょうか。
未だ売買契約を締結していないので、路線価での評価額となると思っているのですが、その点、問題はないでしょうか。
当然のことながら実際の売買価格は、路線価よりもかなり高い価額になります。
もし売買価格で評価されたのでは、節税のために名義変更する意味が無くなってしまいます。
税理士の回答
贈与するときに既に売却の予定がある場合、つまり、贈与と売却が一連の行為はとみなされた場合には、贈与税の課税価額は相続税評価額ではなく売買価額とみなされる可能性があります。
贈与した直後に売却となった場合には、税務調査の対象となる確率が高くなりますのでご留意ください。
贈与した目的は何だったのか、贈与後の利用状況はどうだったのか、売却した理由は何だったのか、といった点がポイントになります。
宜しくお願いします。
ご回答をいただきましてありがとうございました。
ところで「贈与と売却が一連の行為とみなされる場合」とはどのようなケースを言うのでしょうか?
たとえば、売買契約が締結された後に贈与された場合や贈与と同じ日に売買契約が締結された場合には、それは一連の行為とみなされるのも納得できますが、贈与の数日後に売買契約が締結された場合はいかがでしょうか?
ちゃんとした法的な定義はあるのでしょうか?
贈与する人も贈与される人も、近い将来売却することが分かっている状況で贈与するような場合が該当すると思います。
そのような場合には、形式上では土地の贈与であっても、経済的価値に着目して売却価額を贈与の対象とみなすことがあります。
ご回答をいただきまして、ありがとうございました。
税法上で課税時期という規定があると聞き及んでおります。
それによれば、贈与の時点で売買契約が締結されていなければ、路線価で課税されるべきと考えます。
しかしながら、贈与の時点で売買契約が締結されていなくても、その後で、売買契約が締結された場合には、売却価額で課税するとしたら、課税時期の観点で、税法上の整合性が無くなると思いますが、いかがなものでしょうか。
すなわち「売買契約が締結されていない」という状態は、言い換えれば「買主はいつでも話を白紙に戻せる(キャンセルできる)」と言う状態です。
この場合、贈与後に買主がキャンセルして話が白紙に戻ったら路線価で課税するが、上手く売買契約が成立したら売却価額で課税するということになります。
このような課税方法があるとすれば、それはご都合主義というべきものではないでしょうか。
そんなご都合主義がまかり通るとしたら先進国として恥ずかしいことですね。
これを株式に置き換えて考えると、午前中に株価が100円のときに譲渡したが、午後に株価が1000円に急騰したので、譲渡税は1000円に対して課税するというのと同じことです。
そんなことはあり得ませんよね。
しかし不動産の贈与では、このようなご都合主義の課税がまかり通るという理解でよろしいでしょうか。
ご連絡ありがとうございます。
ご相談の文面の「母の土地を売却する予定がありますが、その前に、私(長男)の名義に変更しようと思います。 ・・ 名義変更は正式な売買契約を締結する前に行う予定です。」とありますが、具体的にはどこまで売却の話は進んでいるのでしょうか。
売買契約の締結はしていないが相手も金額も決まった前提でのお話しと私には読めましたので、前述のような回答をいたしました。その前提で再度ご説明いたしますのでご了承ください。
贈与税の課税価格に算入する受贈財産の価額は「時価」が原則とされています(相続税法第22条)。時価が明らかでないものについては実務の運用上、財産評価基本通達に定める方法(路線価方式等)によりその価額を評価することになります。ご相談のケースでは、贈与があった後に直ちに譲渡されることから、その土地の時価が実現していると考えられますので、改めて路線価等で時価を評価する必要はないものと思われます。仮に売買契約前であっても買主との間で合意に至っているような場合には、時価が実現していると認定されるのではないかと思われます。
したがって、売却を前提として贈与が行われ、予定通りに売却が実現した場合には、贈与時の価額(時価)は売却価額とみなされる可能性は否定できないと思われます。
もちろん、売却は希望的なものであって贈与時において全く具体的な話しがないものや、売買契約が白紙になったような場合には、時価は実現しておりませんので、通常の土地としての評価額(路線価等)が贈与税の課税価格になるものと考えます。
なお、財産評価基本通達には、第6項において、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」と定められていますので、この規定もご留意頂ければと思います。
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/01/01.htm
宜しくお願いします。
丁寧なご回答をいただきまして、ありがとうございます。
ご好意に甘えてもうひとつ質問をさせてください。
「相続税法第22条に定める時価の意義」は正常価格であり、それは「不特定多数の当事者間で成立する価格」と解釈しています。
この時価と売却価額とは必ずしも一致しない場合があります。
このような場合はどうなるのでしょうか。
たとえば、不動産業のA社が所有する土地に隣接する土地の売買において、A社は他社に隣接地を絶対に買われたくないので、正常価格の2倍の価額で隣接地を買い取りました。
その隣接地の権利者が売買契約締結に先立って、子供に土地の贈与を行った場合、その破格の売却価額がそのまま評価額になってしまうのでしょうか。
それとも正常価格(売却価額の半値)が評価額になるのでしょうか。
ご連絡ありがとうございます。
仰る通り、時価は一つとは限りません。ただし、第三者間での売買を前提とした場合には、売る立場で考えれば一番高く売れる価額が時価といえるのではないでしょうか。
例えば、不特定多数の人に土地を売り出したとします。Aさんは1000万円、Bさんは1100万円、Cさんは1200万円で買いたいとなった場合、売主は当然、Cさんに売ると思います。このケースでは1200万円(当事者で合意した価額)が時価となるものと思います。
両者が合意して売買した価額を、「それは時価ではない」と税務署が否定することはありません。
仮に隣接地を隣人(第三者)に高値で売買した場合に、それが相場よりも高い価額であったとしても、当事者が合意した価額であればそれが両者にとっての時価となりますので、このような場合でも税務署がケチをつける余地はないと思います。これはあくまでも買いたい人が存在するときの話です。
しかし、購入希望者もなく、売買の話しが存在しない状況であれば、相続税法上は財産評価基本通達で計算した価額を時価としています。
話しを最初(ご質問)に戻しますと、贈与した時に売買の話しがどこまで進んでいたのか、事実認定の問題になるものと考えます。
売るつもりはない土地、あるいは売れるかどうか分からない土地を贈与し、その後、偶然にも購入希望者が現れて売却したような場合は、路線価等で評価した価額が贈与税の課税価額になると考えます。
しかし、水面下で売買の話しがまとまっていて、売買契約直前に贈与を行った場合には、もはやその土地の価値は路線価でなく売買価額とみなされるのではないかと思います。
これはあくまでも私個人の意見ですので御含みおきください。
宜しくお願いします。
いろいろとご親切に対応していただき感謝いたします。
お蔭様で、ひとつの結論に達することができました。
贈与は解消して相続に変更します。
移転登記を元の状態(母の名義)に戻し、売却した代金は全て母の名義の口座に入金いたします。
その上で、税金対策を練りたいと思います。
ありがとうございました。
本投稿は、2017年03月09日 14時26分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。