FXでの法人化は節税になる?起業するメリットやタイミング、注意点を解説

FXで大きな収入を得たことで、高額の取引や節税対策に関心が生じ、その一環として起業を検討する人もいるでしょう。
法人化による節税効果は見込めますが、取引現場での判断と同様に、リスクや手間を認識することが何より重要になります。そこで、FXを行っている人がどのようなときに会社設立を考えた方がよいのか、手続きの流れや運営のポイントなどを解説します。
目次
FXで法人化(会社設立)する5つのメリット
まず、個人でFXをしている人が会社を設立するとどんなメリットがあるのでしょうか。
高レバレッジでの取引が可能になる
個人でのFXの場合、国内のFX会社では最大で25倍のレバレッジが限界となります。
海外のFX会社を使えばそれ以上の取引ができる場合もありますが、金融庁に登録されていないような信頼性の低い会社も多いため、あまりおすすめできません。
一方で、FXの法人口座を開設すると、国内のFX会社でも25倍以上のレバレッジをかけることが可能になります。レバレッジの上限は2020年4月現在、金融庁告示の公布によって変動制になっており、通貨ペアごとの設定で毎週レバレッジが見直しされています。
赤字を10年繰り越せる
FXで赤字がでた場合、その損失は最大3年間繰り越す「純損失の繰越控除」が使えます。わかりやすく説明すると「赤字が生じた場合に、その赤字が発生した翌年以降3年間の黒字と相殺できる」という内容です。
法人の場合は「欠損金の繰越控除」といって、赤字を繰り越せる期間が10年間になります。
FXは一定の周期で取引高が急増するので、場合によって損失を受けることもありますが、欠損金を10年間繰り越しできれば長期的に損失分を取り返せる可能性があります。
なお、個人も法人も青色申告者であることが繰越控除の条件となります。
他の投資と損益通算できる
個人のFXによる所得は雑所得扱いとなり、また「損益通算」もできません。
損益通算とは、損失が生じた場合に事業所得や不動産所得といった異なる所得区分でこれらを合計できる制度です。赤字がでたときに、他の金融商品などとマイナス分を相殺することができます。
対して、法人が得た所得は、FXによる損益も他の事業で得た損益と合わせて計算して申告するので、FXで大きな損失が出た際に他の事業の利益を圧縮して節税することが可能になります。
節税対策しやすくなる
上記の繰越控除や損益通算に加えて、経費の範囲が広がったり、課税される最大税率が下がることなどで節税対策がしやすくなるメリットもあります。
個人の場合、FXによる収益から控除できる経費は、原則としてFXのために直接的に支出した経費、具体的にいえばパソコンなどの機器代、通信費や交際費が該当します。
そのため、自分への給与や生命保険料などを経費にすることができませんが、法人では役員報酬や役員退職金、出張旅費規程を定めれば出張手当を経費として支給することが可能になります。生命保険は、法人名義で加入すれば経費として認められます。
また税率に関していうと、所得税が超過累進課税で最大税率が45%なのに対し、法人税は比例税率で最大23.2%なので、所得が増えれば増えるほど、かかる税金が抑えられるということになります。
※超過累進課税:所得額が増えれば増えるほど税額が高くなる
※比例税率:課税標準の大小に関わりなく同じ税率で課税
相続税対策にもなる
FXの法人化は、相続税対策にもなります。個人でFXをしている方が亡くなると、保有している資産すべてが相続税の課税対象となります。
対して法人化していれば、法人が保有している資産については相続税の課税対象外なので、次の世代に引き継ぐ際の税負担が大幅に軽減できるのです。
ただし、法人の株式は相続財産の対象となるので、事前に事業承継対策を講じて、株式評価額が低い時期を見極めたうえで次の世代へ移転させるなどの対策を別途講じる必要はあるでしょう。
FXで会社設立に向いている投資家
このように、法人化すると複数のメリットがありますが、必ずしもプラスになるとは限りません。次の条件に当てはまる方は、会社設立がプラスになると考えられるため、検討してみるとよいでしょう。
取引で安定した利益が出せる
まず、会社を設立するためには、定款認証手数料や収入印紙代、登録免許税などがかかります。株式会社の場合は、最低でも24万円程度のコストが必要になります。
また設立後についても、役員報酬や社会保険料などのランニングコストもかかります。大前提としてFX取引で安定的に利益が出ていなければ、法人化したときのメリットよりも、ランニングコストが上回ってしまうのです。
安定した利益をだしていて、個人のままだと税金が高いという場合は法人化を検討してもよいでしょう。
元手の資金を十分に用意できる
会社設立自体は、資本金1円でも可能ですが、当面の運転資金などを考えると、現実問題として1円での設立は厳しいといえます。
不動産投資であれば物件を担保にして大きな借入をすることも可能ですが、FXとなると投資資金全額を借入で賄うことはできないので、元手となる資金を用意することが重要です。
また、FX業者のほとんどは、口座に一定の資金が入金されていないと取引を許可しません。個人でFXをする場合、投資資金が枯渇したら間をあけてその間に資金調達するといった対応ができます。
ところが法人の場合は、法人の維持にコストがかかり続けるため、十分な元手を準備してから始めないと、結果として個人の方がよかったという結果になってしまう可能性があるのです。
会社設立の流れとポイント
会社設立のおおまかな流れは以下のとおりで、FXの場合は設立するのに特に資格などは不要です。
- 定款を作成・認証する
- 資本金の払込をする
- 登記申請をする
- 役所や税務署に届出を行う
- 会計処理や口座開設などの事務手続き
自分で手続きするのがめんどう、時間がないということであれば、税理士に設立後の顧問契約と一緒に設立の手続きを依頼するのもよいでしょう。
会社形態はなにがよい?
法人化といっても「株式会社、合同会社、合資会社」などの選択肢があります。
設立費用だけで考えれば、株式会社は約24万円かかるのに対し、合同会社や合資会社については10万円程度と非常に安く設立できます。
ただし、合同会社、合資会社の場合はFXをするにあたって必須となる口座開設ができないこともあるので注意が必要です。
すべての銀行で口座開設ができないというわけではありませんが、都市銀行系の場合本店所在地の近くに支店がないと受けてもらえないこともあるようです。
どうしても株式会社以外で設立したい場合は、比較的審査基準が緩めで支店の有無を問わないネット銀行系がおすすめです。
事業目的はどう決める?
定款に定める「事業目的」は、今後あらゆる手続きで使用することになる会社謄本にも印字されます。たとえば、銀行に融資を申し込む場合に謄本を提出して、事業内容にFXしか記載していなかったら銀行に与える印象はどうでしょうか。
いくらあなたがFXのプロだとしても、世間的には不安定、ハイリスク、といったイメージが強いので、融資が受けにくくなる可能性があるのです。
できれば今後やっていこうと計画している事業についても、予め設立時に一緒に記載しておくことでこの問題を回避することができます。事業内容には、現にやっている事業しか書けないというわけではありません。
また、保険の代理店など一部の業種については、事業内容に書かれていないと扱えないものもあるので、将来的に計画している事業があれば、実際にやるかどうかは別として10個程度を目安に書いておくことをおすすめします。
本店所在地はどこにする?
収入がFXや給与のみという方であれば、別途事務所を構えず自宅で作業することが多いのではないでしょうか。自宅の場合は、そのまま自宅の住所を本店所在地にすれば問題ありませんが、自宅が賃貸という方は注意が必要です。
賃貸物件にお住いの場合は、居住用で借りている部屋に会社登記を入れることになるので、のちにトラブルにならないよう、大家の承諾をとっておくことをおすすめします。
また、自宅の住所を表にだしたくないということであれば、レンタルオフィスやバーチャルオフィスを借りて、そこで登記できるか確認してみるのもよいでしょう。
おわりに
FXの節税を目的とした会社設立は有利な選択肢となりますが、設立費用やランニングコストなども考えると、ある程度収益が安定していることを前提に考える必要があります。
また、法人化することで社会的責任も大きくなります。節税にあたっては、いくつか基本的なパターンがあるとはいえ、素人判断だけで進めるには難しい部分もあるでしょう。
会社を設立すべきか迷っている方は、一度税理士に相談して、税金も含めたシミュレーションをしてみることをおすすめします。
もっと記事を読みたい方はこちら
無料会員登録でメルマガをお届け!