暗号資産の損失確定
暗号資産を保管しているウォレットにガス代としてのETHを送金しても入金されないため、暗号資産を移動できず困っており、このことをウォレットの管理者に問い合わせても返答はありません。
また、暗号資産の運用者も行方不明の状態です。
こうした状況ですが、暗号資産の損失を全損とし、確定申告において、雑所得内での損益通算で所得の縮減を図ることは可能でしょうか。
税理士の回答

(仮に詐欺事件と考えた場合ですが)暗号資産の詐欺による損失に関して、雑損控除の規定のみを根拠として、所得税の計算上、所得から控除することはできないと考えられています。所得税法第37条において、通常の必要経費が定義されていますが、詐欺による損失は、この通常の経費としては認められないとされています。これは所得税法では「居住者が、災害又は盗難若しくは横領により、生活に通常必要でない資産として政令で定めるものについて受けた損失の金額は、その者のその損失を受けた日の属する年分又はその翌年分の譲渡所得の金額の計算上控除すべき金額とみなす」つまり、あくまでも「災害、盗難、横領」を対象としており、詐欺は、「災害、盗難、横領」のどれにも該当しないため、暗号資産の詐欺による損失に関しての適用はないとされるためです。
一方で所得税法第51条(資産損失の必要経費算入)において、雑所得に関連する損失の取り扱いについて、資産の損失は原則として必要経費に算入する、という内容になっています。暗号資産が、「雑所得を生ずべき業務の用に供される資産」または「雑所得の基因となる資産」に該当するかどうかについては検討の余地がありますが、通常利益を得るために暗号資産の売買を行っている場合には該当すると思われます。
また国税庁の資料でも、暗号資産交換業者から暗号資産に代えて金銭の補償を受けた場合についてですが、暗号資産の不正送金等によって生じた損失に関して、「雑所得の金額の計算上、損失が生じる」と記述していることからしても、「雑損控除」ではなく、「雑所得の経費」であると定義しています。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1525.htm
できれば一度税務署でお尋ねいただくことをお勧めします。
なお詐欺かどうかに関わらず、確定した損失であることを証明する取引資料は必要になります。
小川先生、よくわかりました。
ありがとうございました。
本投稿は、2024年12月06日 11時23分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。