海外在住フリーランスの日本国内源泉収入の扱いについて
当方、海外在住歴10年を超える者です。
現在は在住地にてフリーランスの登録をし、納税をしております。
住民票は日本に残してあります(転出しておりません)が、日本に滞在するのは年に2か月程度です。
この度、日本国内源泉のお仕事をするつもりです。
何人かの方が同様のご質問をされていらっしゃるのを拝見しましたが、当方の疑問が解決されなかったため、下記にお伺いさせていただきます。
1.クラウドでの受注:
クライアントからのお支払いは、源泉徴収対象にあたるのでしょうか?
しかし、年180日を超えて滞在する国で世界収入に対する納税をすることが定められています。そうなると、日本国内の収入に関しては確定申告で返金をうけることで対応する形になるのでしょうか?
2.日本人顧客を対象としたネットショップ:
お客様からのお支払いは日本国内にある銀行口座に受けるようにしようと考えています。この収入も確定申告の対象になりますか?
3.その他注意点ありましたらご教授ください。
上記につきましてご回答のほど、何卒よろしくお願いいたします。
税理士の回答

居住者・非居住者の判断について
国内法では、日本国内に住所を有し又は現在まで引き続いて国内に1年以上、日本国に居所を有する個人を「居住者」といいます。
年180日という規定は「租税条約」上の規定となります。(どちらの国の「居住者」とするか、課税権があるかの判定です。)
先ずは、国内法で考えた際、貴方は年間2か月ほどしか日本に「居所」を有しませんので、「非居住者」として、また、日本国内に支店などの「恒久的施設」を有していないとの前提で説明します。
1 クライドの受注
内容によりますが、著作物の作成や図面などの作成などのように「著作権」や「工業使用権」、「ノウハウ」などの使用料や譲渡に該当する場合には、源泉分離課税でその報酬の20.42%が課税されます。 日本国内の申告は不要です。(恒久的施設がある場合は、源泉の上、総合課税・・申告)
2 ネットショップ
ネットショップは「物品売買」=「事業所得」となるため、課税の対象外となります。※不動産等は除かれます。
(恒久的施設がある場合、総合課税・・・申告が必要となります。)
3その他注意事項
貴方の居住地国と日本国との間に「租税条約」が提携されている場合、租税条約が国内法より優先させられます。
また、「1」の収入に関して源泉徴収の税率も軽減されているケースもあります。その場合は、報酬の支払前に支払者を通じて「租税条約の届出書」を提出することになります。
国税庁HPのタックスアンサーに「非居住者に対する課税」という項目があります。
NO2873「非居住者等に対する課税のしくみ」
No2875「居住者と非居住者の区分」
NO2778「国内源泉所得の範囲」
NO2888「租税条約に関する届出書の提出」
NO2012「居住者・非居住者の判定(複数の滞在地がある人の場合)」
これらが参考になると思います。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/gensen36.htm
早々にご回答くださり、誠にありがとうございました!
しかも、当方のケースで該当する規定の一覧も頂戴でき、大変助かります。
当方EU圏内在住ですので、租税条約の対象となります。
クラウドでは主としてライティング、翻訳のお仕事を受けられるようになればと考えています。上記にあげていただきましたタックスアンサー中「国内源泉所得の範囲」のページを拝見しまして、これらのお仕事は源泉徴収対象にはならないと理解しましたが、正しいでしょうか。しかし、これまでもさほど頻回ではないものの雑誌などの記事の執筆をお受けする機会もありまして、その際、源泉徴収がされていたように記憶しております。
もし上記に関しましてご回答いただけるお時間がありましたら、お返事頂戴できれば幸いです。

ライティングにつきましては不勉強で詳細がわからず回答ができません。
翻訳につきましては、翻訳の場合「二次的著作権」が発生します。
その二次的著作権の「譲渡」か「使用料」かによって課税の関係が異ななります。
また、雑誌の「記事」は著作物に該当しますので、同じように「譲渡」か「使用料」かにより課税関係が異なります。契約も含めその点は明確にする必要があります。
貴方の居住国は、EU圏内のとのご説明ですが、多くのEU加盟国との租税条約では、「譲渡」は居住地課税、「使用料」は源泉地課税(条約で支払者の国が使用地となります)となっています。
また、「使用料」に関しては、相手国によって5%又は10%の軽減、若しくは免税となっている場合があります。(日本国内の規定は20.42%)
軽減されるには、支払われる前に、支払者(クライアント)を通じて税務署に「租税条約の届出書」の提出が必要となります。
免税となる相手国は「イギリス・フランス・スイス・オランダ」ですが、免税となる場合(特典条項)には、租税条約の届出書のほかに、「特典条項に関する付表」及び相手国の課税庁が発行した「居住者証明書」の添付が必要となります。
また、契約内容のわかる契約書などの書類を添付します。外国語で作成されている場合は「翻訳」文も添付することになります。
貴方の居住国によって取扱いが異なりますので、ご注意ください。
大変丁寧なご回答をいただき、恐縮です。
なかなかややこしいようですね。
大きなお仕事ならばいざ知らず、小さいお仕事で毎回この手続きはちょっと事務負担が大きすぎます^;)
ちなみに当方の在住する国との租税条約の定めでは、文化的使用権については源泉徴収免除のようです(JETROのサイトでみました)。
いずれにしても、今回の件は不慣れな分野であることもあり、先生からのご助言が大変参考になりました。心よりお礼申し上げます!

貴方の居住国との条約が「文化的使用料の免除」ということですが、この場合の条約が「特典条項」を付していないことを前提として、一言訂正と説明をさせていただきます。
免除の場合であっても「租税条約の届出書」を提出する必要があります。先の説明で、5%、10%と記載しましたが免除(免税)も軽減の一種なので必要となります。
この届出書は、あなたの住所・氏名・サインにて簡単に届出書を作成し、提出することができます。(先の4か国以外は「居住者証明書等」」の添付も不要となります。)
もしも、クライアントが調査などで届出書が提出していないことを理由に「20.42%」の源泉所得税の納税をすることになった場合、その後「届出書」を提出し「還付請求」をすることになります。
この手続きは・・・・詳細を記載すると混乱されますので割愛します・・・とても、面倒なため、事前に「租税条約の届出書」を提出されることをお勧めします。
併せて、譲渡か使用料か、明確にされた方が今後のためにも良いかと思います。
なお、源泉徴収がされていた場合(先の質問で、雑誌の原稿に関して、源泉徴収があったとの話でしたので、蛇足です。)
① 条約で免税・軽減・・・・届出書と還付請求書を提出し、条約の規定との差額の還付を受ける。
② 納税額があった場合は、クライアントを経由して「納税証明書」を入手する。
③ 貴方の国で申告をする際「納税証明書」を添付して、「外国税額控除」を受ける。
ことになると思います。
様式を参考に貼付します。
http://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/joyaku/annai/pdf2/252.pdf
http://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/joyaku/annai/pdf2/260.pdf
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/pdf2/1648_31.pdf
また、詳しい「租税条約の届出書」について、国税庁のHPをご確認ください
http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2888.htm

追加となり申し訳ございません。
「特典条項の条約」に改正された国が拡大していましたので、重複しますが、お伝えします。貴方の居住国でなければ、関係ありません。
米国(EUということでしたので除きました)、
英国、フランス、オランダ、スイス
ニュージーランド、スウェーデン、ドイツ、ラトビア、
31・1~
リトアニア、エストニア、ロシア、オーストリア、
アイスランド、デンマーク
当方の質問にここまで詳細にお答えいただき、大変ありがとうございました!
心強い限りです。
私の在住国と日本の間の租税条約には、特典条項が附されていないようです。
著作権使用料としての支払いとなった場合に、租税条約の届出書をする、というところがポイントですね。
おかげ様で今後の事業展開の見通しが、少し広がったように思います。
心より御礼申し上げます!
本投稿は、2019年05月03日 18時12分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。