相続か贈与か、遺産分割協議書の解釈について
困っています。どなたか回答をお願いします。
事案の内容:
被相続人(母)の相続において、法定相続人は父・兄・私の3名です。
遺産分割協議書には法定相続人全員が署名押印しています。
しかし協議書では、私は何も取得せず、兄が預金1000万円、私の子(被相続人の孫)が預金1000万円を取得する内容になっています(遺産の総額は2000万円程度)。
被相続人の預金解約手続上、兄が代表相続人として資金を受領後に孫へ送金しています。
私は相続を受けていませんし、今回の私の子が取得した1000万円は、私の認識としては贈与ではなく、遺産分割協議に基づく直接取得です。
一方で将来の税務上のリスクも気になっております。
私の子が1000万円を取得した行為に対する、
①贈与認定リスク
②贈与認定される場合の贈与者の考え方
③自主的に贈与税申告すべきか(誰を贈与者として?)
についてご意見を伺いたいです。よろしくお願いします。
税理士の回答
荒川直宙
結論から申し上げますと、ご質問者様の「遺産分割協議に基づく直接取得(相続)である」というご認識とは異なり、税務上は「お兄様からお孫様への贈与」と認定されるリスクが極めて高い状況です。
ご質問の①〜③について、理論的な可能性(死因贈与)も含めて専門的な観点から回答いたします。
① 贈与認定リスクについて
【結論:贈与と認定されるリスクは極めて高い(ほぼ確実)です】
遺産分割協議は、あくまで「法定相続人」の間で遺産の分け方を決める手続きです。お孫様は法定相続人ではないため、遺産分割協議という手続きだけで、被相続人(お母様)から直接財産を相続することは法的にできません。
◆ 例外:お母様と孫の間で「死因贈与契約」があった場合
唯一、お孫様が直接財産を取得(相続税の対象)できる理論として、「死因贈与(お母様が『私が死んだら孫に1000万円あげる』と生前に約束していた)」という法的構成があります。
死因贈与は法律上、口頭の約束だけでも成立し得る契約ですが、それを税務署に対して事実として立証するには「生前の契約書」などの客観的な証拠が事実上不可欠です。本件ではそのような証拠がなく、事後的に遺産分割協議書に孫の名前を入れただけであるため、税務署は死因贈与の主張を認めない可能性が極めて高いです。
結果として、税務署はこれを「本来の法定相続人の誰かが一旦1000万円を相続し、その自分の財産の中から孫へ贈与した」という2段階の取引(=単なる贈与)とみなします。
② 贈与認定される場合の「贈与者」の考え方
【結論:「実際の資金の流れ」という客観的証拠から判断されます】
「誰から孫への贈与になるか」は、ご家族の頭の中の認識(例えば「私の相続分を子に譲ったつもりだった」等)ではなく、最終的に客観的な証拠(銀行口座の動きなど)に基づいて税務署が判断します。
今回の事案で最も重要な客観的証拠は、預金解約手続上「お兄様が代表して資金を受領し、そこから孫へ送金している」という通帳の記録です。
死因贈与の生前の契約書がない現状において、この資金移動の記録こそが「お兄様が相続したお金の中から、甥・姪(あなたのお子様)へ1000万円を贈与した」と疑われる最も強力な証拠となります。
③ 自主的に贈与税申告すべきか(誰を贈与者として?)
【結論:お孫様を申告義務者として、お兄様からの贈与として申告すべきです】
1000万円は贈与税の基礎控除(年間110万円)を大きく超えているため、お子様(お孫様)に贈与税の申告義務が発生します。
銀行の多額の送金履歴は税務署に把握されやすいため、無申告を指摘されると「無申告加算税」などの重いペナルティが課されます。
◆誰を「贈与者」として申告すべきか?
上記②の通り、外形的な資金の流れと最も整合するのは「お兄様を贈与者とする」形です。
もし「私(親)からの贈与」として申告しようとしても、資金がお兄様の口座から直接動いているため、税務署から事実関係の矛盾を指摘されるリスクがあります。
【今後の対応のお勧め】
今回のケースは、法律上の遺産分割のルール、「死因贈与」の立証の難しさ、実際の資金の動かし方(お兄様経由の送金)が複雑に絡み合っており、ご自身だけで申告すると後から税務署に疑義を持たれるリスクが高い状態です。
早急に遺産分割協議書のコピーと通帳を持って税理士に相談し、専門家の判断のもとで安全な申告を行うことを強くお勧めいたします。
ご丁寧な解説誠にありがとうございました。
荒川直宙
とんでもございません。機会がありましたら、またご利用ください。
本投稿は、2026年10月02日 20時32分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。







