相続税申告及び相続対策について相談したいです
母(91歳)が現在入院中で、余命が長くないです。
現在把握している財産は、
・A証券 約4,100万円
・B證券 約9,000万円
・C証券 約2,200万円
・銀行・ゆうちょ等 約3,500万円
・団地2件 約2,800万円
合計約2億1,600万円ぐらいです。
相続人は、
・私(長男)
・兄(次男)
・妻(最近養子縁組実施)
・息子(最近養子縁組実施)
です。
母は2025年に私へ全財産を相続させる内容の自筆証書遺言を作成しています。弁護士に見てもらっても有効でした。
質問は以下です。
① 相続税申告費用の相場はいくらでしょうか。
② 遺産総額約2億1,600万円の場合、税理士報酬は一般的に何%程度になりますか。
③ 団地2件の相続登記費用(司法書士費用含む)はどの程度でしょうか。
④ 現在保有している証券について、例えばB証券で
・国内株 約1,280万円(含み益約550万円)
・通貨選択型ファンド(メキシコペソ)約5,880万円(含み益約5,370万円)
・ラップ口座 約1,680万円(含み益約320万円)
があります。私が代理人になっています。母の生前に売却した場合と、相続後に売却した場合では税金面でどのような違いがありますか?例えば、通貨選択型ファンドを売却すると利益が5,370万円なので、税金20%は1074万円となり、これだけ相続税を減らすことができます。また、相続全てが上手くいった場合のことを考えると兄への遺留分の支払いが2700万円ぐらいなるため、今のうちに母の口座に現金化することはよいことですか?
⑤ 相続発生後に、現時点で把握できていない預金・証券・保険等を誰に調査を依頼できますか?めぼしいところはある程度わかっています。
⑥ この規模の相続で、他に有効な節税策があれば教えてください。
以上、よろしくお願いします。
税理士の回答
① 相続税申告費用の相場 と ② 報酬率の目安
業界の一般的な目安は遺産総額の0.5〜1.0%です。遺産2億1,600万円であれば基本報酬110〜220万円程度がレンジで、これに加算項目(土地1利用区分あたり5〜6万円、相続人1名加算ごとに基本報酬の10%程度、非上場株式評価、申告期限まで期間が短い場合の割増等)が乗ります。本件は土地2件・相続人4名・金融資産中心という比較的シンプルな構成なので、総額で概ね130〜250万円程度が市場相場かと思います。大手税理士法人はこれより高め、書面添付(税理士法33条の2)対応を含めるとやや上振れします。
③ 団地2件の相続登記費用
費用は「登録免許税」と「司法書士報酬」に分かれます。
登録免許税は固定資産税評価額×0.4%(相続による所有権移転)。仮に2件の固定資産税評価額合計が2,000〜2,800万円程度なら8〜11万円程度です(相続税評価額2,800万円とのことなので、固定資産税評価額はこれと近いか少し下と思われます)。
司法書士報酬は1件あたり7〜12万円程度が相場で、戸籍収集・法定相続情報一覧図の作成・遺言書の取扱いを含めるかで変動します。2物件・同一管轄であれば報酬15〜25万円、登録免許税込みで総額25〜35万円程度が目安です。なお自筆証書遺言は、法務局の保管制度を利用していない場合、登記の前提として家庭裁判所の検認が必要です(検認の実費は数千円ですが、弁護士・司法書士に申立てを依頼すると別途5〜10万円程度)。相続登記は2024年4月から義務化されており、取得を知った日から3年以内の申請が必要です。
④ 生前売却 vs 相続後売却
まず、計算の誤解の訂正
「譲渡税1,074万円を払えば、相続税がそれだけ減る」は誤りです。生前に売却して譲渡所得税(20.315%、約1,091万円)を納付すると、減るのは相続税の課税価格が約1,091万円であり、相続税の減少額はその限界税率分、すなわち約1,091万円×30%≒330万円にとどまります。一方で1,091万円の譲渡税は現実に出ていくので、「節税」とは言えません。
次に、日本には相続時のステップアップがありません
相続により取得した資産は「その者が引き続き所有していたものとみなす」、つまり被相続人の取得費・取得時期をそのまま引き継ぎます(所得税法60条1項)。含み益5,370万円は相続後も消えず、相続人が売却した時点で同様に課税されます。生前に売っても相続後に売っても、譲渡所得税自体はいずれ発生する点は同じです。
それでも「相続後売却」が有利になる2つの仕組み
(1) 投資信託の相続税評価(財産評価基本通達199):上場していない証券投資信託(通貨選択型ファンドは通常これに該当)の相続税評価額は、課税時期の基準価額から「解約した場合に源泉徴収されるべき所得税額に相当する金額」と信託財産留保額・解約手数料を控除した金額です。つまり、生前に売却しなくても、評価上は譲渡税相当額(約1,091万円)がすでに差し引かれるのです。生前売却して現金化すると、現金は額面100%評価になるため、この評価減を自ら放棄することになり、相続税の面では生前売却のメリットはほぼ消滅します(ラップ口座内の投信も同様の評価。上場株式には この控除はありません)。
(2) 取得費加算の特例(租税特別措置法39条):相続税を納付した相続人が、相続開始日の翌日から相続税申告期限の翌日以後3年以内(実質、死亡から3年10か月以内)に相続財産を譲渡した場合、その資産に対応する相続税額を取得費に加算できます。本件規模なら、相続後に売却した方が譲渡所得税が数十万〜百万円単位で軽くなる計算です。
結論として、純粋に税負担だけで比較すれば、通貨選択型ファンドとラップ口座は「相続後、申告期限後3年以内に売却」が有利です。上場株式(含み益550万円)も差は小さいものの同様の傾向です。
⑤ 相続発生後の財産調査の依頼先
調査自体は相続人ご本人でも可能で、専門家に依頼する場合は税理士・弁護士・司法書士・行政書士のいずれも受任できます(相続税申告とセットなら税理士、お兄様との紛争性が顕在化しているなら弁護士会照会〔弁護士法23条の2〕が使える弁護士が適しています)。
実務上の調査手段は次のとおりです。証券口座は証券保管振替機構(ほふり)の「登録済加入者情報の開示請求」で、被相続人名義の口座がどの証券会社・信託銀行にあるかを一括で把握できます(1件数千円)。生命保険は生命保険協会の「生命保険契約照会制度」(2021年開始)で、加盟全社への契約有無を一括照会できます。預貯金は心当たりの各金融機関に残高証明書と過去5〜10年分の取引履歴を請求し(生前贈与・名義預金の確認も兼ねます)、ゆうちょ銀行は「現存調査」で全国の貯金を名寄せできます。不動産は市区町村の名寄帳、債務はKSC・CIC・JICCの信用情報開示で確認します。郵便物、通帳、カレンダー・タオル等の粗品、確定申告書の配当・利子の記載も手掛かりになります。
⑥ その他の対策(残された時間を踏まえて)
最も影響が大きいのは小規模宅地等の特例(租税特別措置法69条の4)です。団地2件のうちお母様の居住用だった物件があれば、入院中でも(老人ホーム入所と異なり)入院は一時的なものとして生活の本拠は自宅に維持されていると扱われるのが通例です。同居親族、または持ち家のない別居親族(いわゆる家なき子)が取得すれば330㎡まで80%減額、賃貸中の物件なら貸付事業用として200㎡まで50%減額(相続開始前3年以内の貸付開始は原則対象外)の余地があります。誰が取得するかで適用可否が変わるため、遺言どおり貴殿が取得した場合の要件充足を必ず確認してください。
生命保険の非課税枠(500万円×3人=1,500万円、相続税法12条)は理論上有効ですが、91歳・入院中では一時払終身保険でも告知・年齢要件で加入は事実上困難と思われます。
生前贈与は、暦年贈与の相続開始前加算(2024年改正で3年→順次7年へ延長)が「相続・遺贈により財産を取得した者」にのみ適用される点がポイントです。遺言どおりであれば財産を取得しないお兄様・奥様・ご子息への贈与は加算対象外ですが、遺留分侵害額の支払いを受けたり代償取得したりすると加算対象になり得ます。また、これもお母様の意思能力と真意に基づく贈与であることが絶対条件で、入院中の駆け込み贈与は税務調査・遺留分紛争の双方で争点化しやすい点にご留意ください。確実な小技としては、墓地・仏壇等の祭祀財産の生前購入(非課税財産)、入院費用等の未払債務・葬式費用の債務控除の漏れ防止があります。
後藤先生
この度は大変詳細かつ丁寧なご回答をいただき、誠にありがとうございました。
相続税申告費用の相場、相続登記費用、生前売却と相続後売却の税務上の違い、財産調査の具体的方法、小規模宅地等の特例まで非常に分かりやすくご説明いただき、大変参考になりました。
特に、
・投資信託の相続税評価
・取得費加算の特例
・証券保管振替機構(ほふり)による口座調査
については初めて知る内容も多く、大変勉強になりました。
ご丁寧なご回答に心より感謝申し上げます。
すいません、追加質問が2つあります。
追加質問①
ご説明いただいた取得費加算の特例についてですが、私のケースでは母の遺言により私がほぼ全財産を相続する見込みです。そのことを知れば、兄との紛争性が顕在化すると思っています。また、兄には内緒に養子縁組を実施しています。
この場合、
・通貨選択型ファンド(約5,880万円、含み益約5,370万円)
・ラップ口座(約1,680万円、含み益約320万円)
については、生前売却せず相続後に売却した方が有利とのことでしたが、どの程度の税額差になるのか概算でも結構ですのでご教示いただけますでしょうか。証券を売りたい理由は、兄への遺留分を支払う時に私が利用できる母親の口座に兄の遺留分2700万円分を入れておいたほうが後々支払いやすいのではないかと助言がありました。しかしながら現在、銀行・ゆうちょの残高をまとめる約3,500万円があるので、検認や裁判でどうなるかわかりませんが、私が執行人となりこれが使えるなら証券の売却は全く意味がなくなってきます。これについてどう思われますか?
追加質問②
母は現在91歳で、約1年10か月前から東京のサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)へ入所しており、現在は入院中です。福岡には亡くなった父名義の団地(売却平均額約1550万円、名義変更を母にしてない)があり、入所まではそこを生活の本拠としておりました。このような状況でも、小規模宅地等の特例の適用可能性は残るのでしょうか?母の住民票は東京に移しています。
また、私が相続した場合と、養子縁組後の妻や息子が取得した場合とで適用条件に違いが生じるのでしょうか。妻は私の名義の家で一緒に暮らしています。息子は寮に暮らしています。
墓地は誰の物なのか?ですが、東京への引っ越しを考えていました。ですので東京などで墓地の購入も考えていましたが、兄の許可無しで勝手にやることは裁判で心証が悪くなる可能性?があるのでやめています。どうなのでしょうか?
以上、よろしくお願いします。
国税OB税理士です。
証券等の売却は、母が、意思表示できる状況であれば、母の時に売却なさった方が、有利ですね。
なぜかというと、儲け(所得)に対して所得税がかかります。
係った所得税は、相続財産から差し引ける若しくは、特定口座であれば、その分が差し引かれて、相続財産が所得税や住民税分少なくなるからです。
相続税の取得費加算は、本の少ししか影響がありませんので、生前に売却が有利になります。
途中からお邪魔して申し訳ありません。
当事務所は、相続税に特化した事務所で、相続税対策も行っております。
ありがとうございます。
私のケースでは、例えば
メキシコペソ商品
評価額 5,880万円
利益 5,370万円 だったとします。
生前売却すると、
利益5,370万円×20.315%=約1,091万円
譲渡所得税は約1090万円になる見込みです。
相続税率30%だった場合、
財産が1,091万円減っても
相続税が減るのは
1,091万円×30%=327万円の程度の節税です。
一方、相続後売却の場合、
取得費加算の特例及び投資信託評価減を考慮した場合、
生前売却との差額はいくらになるとお考えでしょうか。
概算でも構いませんので、最終的な税負担額の比較を数字で教えてください。
はじめの目的は、兄の遺留分の金額2700万円程度を確保したかったのですが。
高額の証券を勝手に現金化にすると裁判で心証が悪いと助言を受けています。
裁判で不利にならないように、遺産があまりにも高額なので、やり方一つで100、200万円簡単に変わるのでなんとかうまく節税ができたらと思っています。
母が、意思表示できればという前提です。あくまでも本人がどうしたいかということになります。
対策によって、数百万以上の税額の差は生まれてきます。
それと、節税対策をこの無料相談では無理があると思います。個別に有料で、相続対策に強い税理士に依頼すべきです。
本投稿は、2026年06月10日 17時40分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。







